去る24日、静岡市長田地区の農業生産者約百人が、静岡市役所に大型バスなどで集結。「市街化区域内農地の固定資産税・都市計画税の宅地並み課税」への反対陳情を行ったという報道があった。本年10月の静岡市の政令市移行に伴い、平成18年度から旧静岡市、旧清水市両市内にある市街化区域内の農地に対する固定資産税と都市計画税は原則として宅地並み課税となることを受けての行動である。
通常、農地は一般農地と市街化区域内農地の二つに分類され、市街化区域内農地はさらに一般市街化区域農地と特定市街化区域農地に分けられる。市街化区域は都市計画法によって、おおむね10年以内に市街化が図られる区域であるという定義に基づいて、市街化区域内の農地所有者は農用地除外申請という半年もかかる面倒な手続きは不用で、届出だけで農地転用ができる仕組みになっている。
地方税法附則第19条の3は、市街化区域農地を宅地並み課税することを原則とし、三大都市圏及び中部圏内の政令指定都市以外の区域の一般市街化区域農地には、宅地並み課税をの原則を適用しないこととしている。
これに対し、同法第19条の2の第1項は、「市街化区域農地に対して課する昭和47年度以降の各年度分の固定資産税の特例」を定めている。つまり、「昭和47年度以降の各年度に係る賦課期日に所在する市街化区域農地に対して課する固定資産税の課税標準となるべき価格については、当該市街化区域農地とその状況が類似する宅地(以下「類似農地」という。)の固定資産税の課税標準とされる価格に比準する価格によって定められるべきものとする。」と規定されているのである。
静岡市によれば、政令市移行に伴って新たに課税される対象農地は、田326ヘクタ−ル、畑482ヘクタ−ルの合計808ヘクタ−ル。対象農家は、旧静岡市内で2,134戸、旧清水市内で1,363戸の計3,497戸とされている。
合併話の初期の段階で、あるいは進行中に、こうした税制度について一度も聞かされなかった農業生産者にとっては寝耳に水。驚愕の度合いも分からないではないが、法で明文化されているだけに、これをひっくり返すことは難しい。
ただ一つの方法としては、農地5百平方メ−トル以上をまとめ、「生産緑地」の指定を受ければ宅地並課税を免れることができる。しかし、いったんこの指定を受けると、以後30年間にわたって農地の転用が規制されることになる。
近年、海外から安い農産物が流入し、国内農業は一部の分野、あるいは一部の先端農業を除けば四苦八苦である。農業生産者自身の高齢化と後継者不足の中で30年もの間農業を続けられる保証は皆無だ。IT社会が進展し、分進秒歩の世の中にあって、30年もの間、土地の転用を認めないなどとする法律がまかり通っていることが不思議なのである。
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政令市の市街化区域内農地