テクノス−パ−ライナ−(TSL)は、世界的に経済成長が進み、製品の交付加価値化や生産拠点の拡大化が進められたバブル期に、当時の運輸省主導の国家プロジェクトによって生み出された高速貨客船のこと。
三井造船の先端技術を駆使して計画されたテクノス−パ−ライナ−は、貨物積載重量1千トン、従来の船舶の2倍という速力50ノット(時速約93KM)、5百海里(約930KM)の航続距離が売りで、首都圏から北は北海道、南の九州まで半日程度、アジア諸国とを1日乃至2日で結ぶ「海の新幹線構想」と称され、「鳴り物入りのプロジェクト」でもあった。
発展途上中の東南アジア各国が、競うようにハブ港を建設し、国際貨物の中継基地としての地位を確立しようとしていた時代でもあり、21世紀の我が国の高速海上輸送を担う救世主としての期待も込められていた。
平成6年に実証実験船の建造が開始され、そのうちの1隻で、ホバ−クラフト型実寸二分の一実験船を、当時の斉藤知事が買おうと言い出した。
時価100億円超ともいわれたが、購入費は船体3億9百万円、設計監督費3千万円、カ−フェリ−への改造費に18億5千9百万円、実験船に計約22億円の金をつぎ込んだことになる。
県では逼迫する東海地震に備えて、防災船としての機能を求めてきたものの、ホバ−クラフトゆえの特殊な岸壁を必要としながら、500キロもの海岸線を擁する本県内に接岸可能な港は数港しかない。またフェリ−として活用するには、他の船の1マイル当り50リットルの4倍にも達する1マイル当り200リットルもかかる燃費がネックで、便数増や新航路の開設は殆ど不可能でもある。
現在、本県をカバ−する海の防災機能は、海上保安庁の災害対応型巡視船2隻と、海上自衛隊の輸送船3隻が配備済みで、想定される大津波の前に無力の防災船TSLには、被災後当分の間は役割がない。
平成9年度から平成16年度までの8年間のフェリ−の平均乗船率は29,4%、平成8年度以降16年度までの9年間のト−タル経費は約77億円。
来年度以降もTSLを保有し続けるとすると毎年約9億円の経費が必要となる。 今日、全国いや全世界の海上のネットワ−クは、ジェットフォイル船が主流である。TSLが担っていたフェリ−機能の代替はジェットフォイル船に代え、民間に任せればいいのではないか。TSLはもはやその使命を終えたというのが、今定例会で取り上げた私の質問である。
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使命を終えた防災船TSL