去る5月9日、私は青森県六ヶ所村にある日本原燃株式会社を訪ねた。4月19日、足踏み状態にあった国のプルサ−マル計画推進の前提となるMOX燃料再処理の操業に、日本原燃が青森県並びに六ヶ所村との協定を締結、5年後の稼働を目指すとの報道を受けての視察である。
 六ヶ所村は「総合的産業基盤を整備、陸奥湾、小川原湖周辺一体の巨大コンビナ−ト建設」を目指し、1969年5月に閣議決定された「むつ小河原開発」全区域を抱え、国の原子力エネルギ−政策の支え手だ。
 当初計画区域は2万8千ヘクタ−ル。完成時、世界最大のプロジェクトとなるはずだったが、漁協の強い反発や、二度のオイルショックを経て計画は縮小に縮小を重ね、最終的に六ヶ所村を中心とする5千5百ヘクタ−ルに落ち着いた。それでも、ここに立地する企業などはなく、夢を乗せて設立された第三セクタ−はとうの昔に破綻、国策の失敗例でもある。
 最初に国家石油備蓄基地1千150ヘクタ−ルを誘致、その後ウラン濃縮工場や低レベル放射性廃棄物埋設施設などの核燃料サイクル施設用地として、日本原燃が761ヘクタ−ルを保有する。売れ残った1千450ヘクタ−ルは、政府と県が国際熱核融合実験炉(ITER)の誘致に望みをかける。しかし、EUを後ろ盾にしたフランスの攻勢の前に敗色濃厚のようにも見える。
 青森県と六ヶ所村が、多くの曲折を経て最終的にMOX燃料再処理工場の立地に同意したのは、こうした背景もあるように思える。
石油などの化石燃料は、燃焼は一回限りで終わってしまうが、ウラン燃料は再処理すれば繰り返し燃料として利用できるが、発電側には魅力と映る。
 MOX(Mixed Oxide Fuel)燃料を使用する我が国のプルサ−マル計画は、使用済み燃料棒から、ウラン235と、燃焼の過程で発生したプルトニウムの同量を、粉末の形で取り出して新たな燃料棒を製造して再利用しようとするもの。これにより、軽水炉でのウラン利用効率は約2倍、高速増殖炉でプルトニウムを利用すれば、効率は約60倍になるという。
 ところがこの計画、1999年に英国での原子燃料デ−タや東京電力の核燃料輸送容器のデ−タ改ざんなどにより、延期に延期を重ねてきた曰く付きのもの。この決定に電力会社は一様に安堵したようだ。
太陽光発電などのクリ−ンエネルギ−は、コストが問題になっておる。そうしたエネルギ−の低コスト化の実現まで、原発に代わる安価なエネルギ−は今のところ見つかりそうもない。当面は、原子力環境の安全性確保に最大限のエネルギ−をつぎ込むしかないと感じたものだ。

MOX燃料とプルサ−マル計画