去る18日、19日の2日間、全市域で一斉に敬老会行事が開催された。今年,いくつかの会場で気がついたことは、主催者が作成した参加者名簿から、昨年まで登載されていた個々人の生年月日と電話番号が消えていたことである。
聞けば、この4月の個人情報保護法の施行を受けた検討の結果、これらは個人情報に該当するおそれがあり、公表しないほうがいいと判断したからだという。
老人福祉法が制定された1963年以来、国においてずっと高齢者の上位百人の名簿が作成されてきたが、一昨年から、当該名簿に登載される可能性のあるお年寄りに対する「氏名公表の可否確認」が各市町村の義務に変わっていた。
そして、個人情報保護法が完全施行された今年、個人情報の登載を拒否した百歳以上のお年寄りは実に13人にのぼり、「百人名簿」が歯抜けになっていた。
法施行の余波についてマスコミでは、先の総選挙の際の電話作戦で「なぜうちの電話番号を知っているのかなどと詰問された」とか、「全国中学校体育大会のチ−ム紹介の公式プログラムの中で、氏名公表を拒否した選手を空欄とした」などという事例が紹介されている。
個人情報保護法は、個人情報を直接保護するための特別な権限や権利を個人に与えるというものではない。規制の対象は過去6ヶ月の間に5千件以上の個人情報を扱ったことのある、あるいはこれから扱おうとする事業者である。規制されるのはあくまでも「事業者が事業の用に供する個人情報」なのである。
但し、新聞社などが報道用に供する情報の場合をはじめ、大学や世論調査機関などの学術研究用の情報、また宗教団体や政治団体のそれぞれの活動の用に供する情報として取り扱う場合は規制対象外とされている。
しかし、多くの国民・県民は、「個人情報」イコ−ル「プライバシ−の保護」と同義に捉えてしまっているようだ。
さて、この保護法が事業者に厳格な情報管理を求めている一方、現在一定の条件下で原則公開されている住民基本台帳制度は、全くの他人でも閲覧が可能であり、「ダイレクトメ−ル業者」や「振り込め詐欺師」たちの格好の情報源となっていた。
今、国は住民基本台帳原則非公開の方向で法改正を検討中だが、学術研究や各種の世論調査機関などにも非公開とするのかなどの問題も多く、ことは簡単ではない。
他人は勿論、肉親すら信じられないような今日の世相の中で、様々な犯罪から個人を守るための情報管理は必要である。しかし、地震や火災などの自然災害や不測の事態に遭遇した時などには、「優先的に守るべき弱者の個人情報」が必要であることはいうまでもない。過保護は「過ぎたるは及ばざるが如し」なのである。
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個人情報保護法の余波