造船界が不況の時代、 旧運輸省が、造船関係7社と協力して時速約93キロの高速性と約930キロの長い航続距離を確保し、4メ−トルの耐波性を備えた実験船「疾風」と「飛翔」を開発したのは平成6年のこと。当時、ミレニアムプロジェクトとして、21世紀の高速海上輸送を担う「海の新幹線構想」として世間の耳目を集めたものだった。
「飛翔」は、高速性や耐波性の確認と荷役の実験のため、全国33の港を回った。本県の清水港と御前崎港に来港した時は、知事や県議、首長など延べ300人が体験乗船をした。その後県議会では、運行コスト等に対する強い懸念もあったが、国の将来構想における本県の基地港化に夢を馳せる一方、阪神淡路大震災の残像が強烈に残る中で、県が購入の目的に掲げる「防災船」としての機能と役割を重視し、購入にゴ−サインを出したという経緯がある。
昨年2月議会で、燃費効率がジェットフォイル船の約4倍を要すること。あわせて近海に、海上保安庁が災害対応型巡視船2隻、海上自衛隊が輸送船3隻の配備を終えていることを踏まえ、「テクノス−パ−ライナ−TSL”希望”」は、今やその使命を終えたと質問し、このコラムでも書いた。
昨年11月の定例記者会見で、石川知事は、「原油高で経費が嵩んだうえ、海上自衛隊などの代替船が整備されてきた。」として、TSLは今年度いっぱいで店じまいしたい。」と宣言し、現在審議中の新年度予算に、廃船のための費用8億8千7百万円が計上された。
購入して今年で10年を経過し、防災船とカ−フェリ−としての維持管理費は、これまで約100億円を費消した。今後も使い続けていくとすれば、なお毎年約10億円を必要とすることを考えての知事の英断である。
ところで、TSLの本体とは別にそのエンジンについては、原契約では平成9年4月から15年間の拘束賃貸借契約となっている。今回、契約期限まで6年を残してこの契約を破棄することになるわけであるが、その補償金として5億1千450万円もの支払い義務が生ずることになっている。
私は、ある意味で、TSLに引導を渡すきっかけを作ったものの1人として、様々な角度からこの船のことを考えてきた。その中で、主要構造部がアルミと鉄で造られたこの船を解体し、資源として転売できないかという提言を所管の委員会で行っている。エンジンの取り外しは所有者の指定する場所でという条項があり、取り外しが可能な大きさのドックは県内にはないこと。解体する場合は係留先のドッグでしかできないこと。船体の図面を第三者に見せる場合には、エンジン所有者の了解が必要なことなど、問題がアルコとが分かった。
エンジンの転売や発電などの他用途への転用など、再利用の新たな受け手を探しだして、補償金の相殺を図ることを考えたい。静岡空港のタ−ミナルビル外壁への転用も考えたが、解体、搬送し、再建築に莫大な費用がかかルことも分かった。いずれにしても”希望”を捨てずに、名案を探し続けていきたいものだ。 |
|
2月 再びテクノス−パ−ライナ−