警察庁の統計で、昨年の自殺者は32,552人に達し、8年連続で3万人を超えた。自殺者の約3分の1を、40代から50代の働き盛りの男性が占め、残される遺族のことなどを考えると、自殺は単に個人の問題ではなく、「社会的な問題」となっていた。
実際、これまで自殺の社会的な要因にまで目を向けなかった国の取り組みは遅々として進んでこなかった。政府は昨年、自殺防止総合対策を策定しているが、省庁間の縦割りの弊害が、その実効性を阻害していた。
厚生労働省は、やっとこの3月に、各党道府県・政令市に対し「自殺対策連絡協議会」を2年以内に設置するよう求めたが、即応したのは13道県のみだった。本県は、現時点でこの協議会は未設置で、本県の自殺者数は、全国的に低い位置にあるというのがその理由だである。確かに調べれば全国順位は38番目あたりにあるが、それでも自殺者は年間約800人に達している。
 交通事故による死者が年間1万人を超えて、「交通戦争」とまでいわれたことがあった。しかし、全国の交通事故死者は平成8年度の9,942人をピ−クに、平成17年度は6,871人にまで減少している。これは、交通事故死者の減少を目指し、官民挙げて取り組んだ結果でもある。
 さて、超党派の議員提案による「自殺対策基本法」が先の通常国会において成立した。基本法では、その目的を「自殺の防止」と「自殺者親族のケア−」とし、自殺対策を「国と地方自治体の責務」とし、具体的には、自殺防止の調査研究、自殺予防の啓発や人材育成、医療体制の整備、そして自殺未遂者や遺族などに対する支援などが盛り込まれた。
 自殺の原因は、最も多い「健康問題」と、次に続く「経済・生活問題」で全体の約70パ−セントを占める。自殺者の大半は「うつ病」だといわれていることからも、「健康問題」対策としては、「心の健康」を保つことが課題になる。
厚生労働省は来年から、定期的に実施している「国民生活基礎調査」の中に、世界保険機構などでも使われている不安障害などの簡易測定に使われる「K6」という指標を組み入れ、全国約27万世帯の12歳以上を対象に「心の健康状態」詳細な調査を実施する。
調査に盛り込まれる「K6」の設問は次の通りで、過去1ヶ月の間に…
『神経過敏に感じましたか』、『絶望的だと感じたか』『そわそわ、落ち着かなく感じたか』『気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じたか』『何をするのも骨折りだと感じたか』『自分は価値のない人間だと感じたか』に対し、「いつも」「たいてい」「時々」「少し」「全くない」の5つから選択する。
国民の精神保健について、これほど大規模に調査が行われるのは初めてのこと。格差社会の増大で、国民のメンタルヘルスの向上は大事だ。調査結果を着実に、各種の施策につなげることが次の課題である。


自殺と心の健康調査