「障害者の雇用の促進等に関する法律」は、常用雇用労働者数が56人以上の一般事業主は、その1,8%以上の障害者を雇用しなければならないとしている。同法による法定雇用率は特殊法人において2.1%、国、地方公共団体においては2.1% 、都道府県等の教育委員会の場合は2.0%と規定されている。
 本県の法定雇用率の一番新しい値は平成15年度のもので、これによると県内に本社を置く従業員56人以上の民間企業数は1,930事業所あり、その法定雇用率は1,53%、達成企業の割合は同じく42.5%である。全国ではそれぞれ1.48%と45.9%であるから、全国平均を上回っているとはいえ、法定雇用率には届いていないのが現状だ。
 本年施行の「障害者自立支援法」の最重要課題は「障害者の自立」「障害者の就労」にあることを考えると、企業主と地方自治体の双方に一層の雇用努力が求められてくる。
 今月、盲学校の卒業生で視覚障害と視野障害を合わせ持つ女性が、浜松市の非常勤職員採用試験を受けた。事前の彼女の受験時間延長の要望は、「他の受験生に対して特別扱いはできない」ことを理由に却下されていた。結局、彼女は質問文章の読解と回答記入に、多くの時間を要し、あえなく不採用となった。
 来月、その彼女は県の障害者枠の試験に挑戦する。県の視覚障害者に対するマニュアルは、平成11年に国の基準に準じた要綱がつくられ、以降は変更がない。
 その基準によると、日常生活で点字を使用している者及びそれ以外の強度の弱視者で、両眼の良い方の矯正視力が0,15未満の者について条件緩和されており、それぞれ1,3倍から1,5倍という受験時間の延長が認められている。このままでは、県においても浜松市と同じ扱いにを取らざるを得ないということであった。
 そこで、現在の障害者福祉法は、視覚障害認定の基準を視力と視野の二つの機能障害の度合いで判定しているという事実を人事委員会に示した。そしてその視野障害にも、軽い順に視野の一部が見えなくなる「視野欠損」、視野の中心が見えなくなる「中心暗転」、視野の中心だけが見える「周辺視野狭窄」の三種に分別されているという資料も合わせて提供した。
 彼女の場合は視野欠損率が96%という診断が下されていた。彼女はその残りのたった4%の部分で問題文章を読み取ることができるのだが、その4%の部分の視力判定は0,6である。
これでは試験場において、試験問題が書かれた用紙を全体的に見ることは不可能に近く、当然のこととして質問の文章を理解する時間と、回答欄に回答を記入する時間は、健常者とは比較にならない。
 国のマニュアルは、この0,6という矯正視力だけを障害認定の基準としたまま今日に至っている。別の法律に定義されている「視野障害2級」という新たな障害分野についての救済方法が国の視野に入っていなかったことが私には全く意外だった。
 そうした私の問題提起に対して、本県の人事委員会の局長と課長並びに担当職員は、真剣になって「視野障害者に対する試験時間の緩和事例」について調査を行ってくれた。
 その結果、大学入試センタ−試験実施要綱の中に視野障害者に対する条件緩和措置があることを見つけ出してくれた。そこには「両眼による視野の視能率による損失率90%以上の者について1,3倍の時間延長を認める」してある。
 本県が掲げる「富国有徳」の行政は、まさしくこうした時代の要請に添って制定される法の精条文解釈を、国民・県民の側にとって有利に読み取りながら進めてことが必要である。

視覚障害者の就職試験