広く海外に目を向け、欧米先進諸国の先進事例を視察したり研修したりすることは必要なことだと私は思っている。
日本国憲法前文は、「国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を自覚し、平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼する」と謳っている。「四海同胞」の思想である。
 専制や隷従の長い歴史の末に市民が勝ち取った自由民権思想と国家、そして宗教と深く関わり合いをもった文化や生活様式の違い理解しようとするだけでも勉強になる。「博古通今」への道でもある
 しかし、地方議会議員の海外視察に異を唱える人々は今日、特に多くなったように感じられる。行財政改革の延長線上ののそうした意見は充分理解できる。 過去において、視察行程表から一見しただけで物見遊山と想像できるもの、実際に計画した現地に赴かず別の所で遊興していたもの、また飛行機代などを誤魔化して土産物代に充てていたものなどの過去の実例が、その時々において糾弾されてきたということも事実である。
 静岡県議会の海外視察研修は、企画委員会を編成して、視察研修の目的やその内容などについて綿密な計画をたてて実行に移す。それぞれ目的別の担当者を決めるとともに、帰国後は全員に報告書の提出が義務づけられる。
 こうした実績の積み重ねによって、4年ほど前になるが、オンブズマンによる「地方議会の海外視察研修」で本県議会は、全国第2位の評価を受けている。
先に行われた平成19年度当初予算に関連する自由民主党政務調査会で、平成17年度における県の行政職員の海外研修の現況が話題になった。
 それによると、当該年度における知事部局からの海外研修者は延べ297人、この中には県立大学、病院関係者150人が含まれている。また、教育委員会からは、養護教育関係者5人、義務教育関係者74人、高等学校関係者79人、事務関係者24人、合わせて182人が海外へ飛んだ。
 一方、当該年度における本県警察職員の海外派遣は、研修6人、調査3人、会議2人の計11人でしかない。しかも、国費による警察庁主催の警察官海外研修制度は平成16年度をもって廃止され、平成17年度以降の派遣はゼロとなっている。
 国際化が進展し、外国人が日本社会の中に混在を始めており、ブラジル人犯罪者の引き渡しを巡る署名活動が連日のように話題にのぼり、国も巻き込んで外交上も問題提起がなされたばかりである。世界の空の大交流時代が到来した今、警察の任務も一部は国際化が進展している。警察職員の海外研修が11人という数字が、多いか少ないか引き続き議論しようということになっている。

海外視察研修