30歳代から上の女性と、40歳代から上の男性の日本人の死亡原因の第一位は「がん」である。他方で、今日のがん医療は、外科的、薬物、放射線などの療法において著しい発展を見せており、国民に対するがん対策が療法の進歩に合わせて進めば、医療費の抑制につながる。
 これまで地域の各医療機関と連携を図りながら、がん医療の水準を高めることを目的とした「地域がん診療連携拠点病院」制度があり、本県ではすでに静岡がんセンタ−、県立総合病院、聖隷三方原病院と聖隷浜松病院が指定されている。
 昨年9月、厚生労働省はそうした病院の更に専門的な研修や診療支援を行う「都道府県がん診療連携拠点病院」制度を創設し、各都道府県に1箇所指定されるその拠点病院に県立がんセンタ−が指定された。
 県立がんセンタ−は陽子線治療施設により、県内外にその評価が高い病院である。そして基本的には担当医師の紹介状を持ってセカンド・オピニオンを求めて県内の多くの患者さんたちがここを訪れる。入院、通院とも増加の一途にあり、いきおい待ち時間が長くなっている。
 最終整備病床数は615床だが、現在の病床数は557床である。これに必要な看護師の数は計画では約500人である。現在看護師の配置基準を充足できないため、19年度の増床計画は白紙撤回の憂き目にあっている。
 看護婦不足は10年余にも及ぶ課題とされてきているが、本県の看護師は新卒者と再就職者を合わせ毎年700人づつ増えている。数字上からはそれほど足らないというわけではない。
 過般、県看護師協会の会長さんたちと意見交換した時、この問題に対する私の今までの疑問が解けた。新卒の看護師には「五月病」と呼ばれる現象があり、配属された病院の厳しい勤務やめまぐるしく変わる医療制度、高度化などについていけず、5月にはリタイア−していく看護師がいること。また夜勤が不可避のため、家庭両立できずにリタイア−していく中堅の看護師が多いということなど、内側からの話を聞かされたことからだ。
 さて、県の調査では、そうした潜在看護師は県内に約10,000人いるということである。こうした看護師に再び職場復帰していただければ、看護師不足対策は大きく前進する。そこで、本県では、潜在看護師が現場に戻れるような準備のための講習や医療研修を進めているところだ。院内保育設備の充実や職場の人間関係の維持のための啓発活動も同様に実施している。
 今日、介護・福祉・医療の制度は大きく変わろうとしているが、人間の「生」に必要な人材の確保は、制度の変化に拘わらず必要なことである。

1月 看護師不足