6年前の6月、大阪教大付属池田小に男が乱入し、無抵抗の子ども8人を殺害、ほかの子ども13人と教師2人に重軽傷を負わせるという事件は世間を驚愕させた。
 この男は一度、強制的に措置入院させられた経歴があり、その後任意入院もし、犯行時は通院治療中の精神障害者だった。
 取調べに対し男は、当初の供述「犯行時は精神錯乱状態にあり、周囲の状況を把握していなかった」を一転させ、精神障害を装った詐病だったことを認めたが、それでも精神障害者であったことは紛れもない事実である。
 精神障害者に関わる法律は、明治33年に制定された治安の色合いの強い「私宅監護」中心の「精神障害者監護法」に始まる
 。昭和25年の「精神衛生法」は、都道府県に精神病院の設置義務を課し、措置入院や同意入院などの施策を進めた。ライシャワ−大使刺傷事件もこの背景にあった。
 その後も精神医療の進歩や人権思想の高まりを受け、逐次改正を続けながら今日「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」として、精神障害者の人権に対する配慮が強く求められるようになった。
 最近、浜松にも、時折下半身を露出して徘徊する精神障害の青年がいて、近隣から強制入院をさせて欲しいという強い要請があるのだが、これがなかなか実行できないでいる。
 現行法では、都道府県の精神保健指定医二人以上による「自傷他害の恐れあり」との診断が必要なのだ。「下半身露出」が「自傷他害の恐れ」には、直接結びつかないとする見解が多数意見である。
 強制入院ではなく任意入院となると、過大な医療費の負担が族に過大にのしかかる。共働き世帯では荷が重いこともわかる。
 今、どのように法令や制度を検討しても、最終的な責務は家族に行きつくのである。問題のこの家族も精神的に追いつめられている要に感じる。
 精神障害者の「共同住宅」や「グル−プホ−ム」などを整備し、孤独からの解放や心安らぐ環境作りの施策が必要だ。 誰もが「心の病」、「うつ病」になる可能性を持つ現代競争社会において、精神障害者の福祉施策は重要な行政の課題の一つであることを、実感している昨今である。

5月   精神障害者福祉施策