県議会における質問
  平成10年6月議会 
 1 災害対策について
      1)救護所の指定の見直し
      2)高速道路の油災害対策
      
3)海岸の油災害対策
 2 雇用対策について
      1)離転職者の職業訓練

 
     2)県有施設への情報端末パソコン配備
      3)インタ−ネット求人情報サ−ビス
 3 心の教育について
      1)小学校教科担任制の導入
      2)小、中学校間の教員交流
 4 静岡県地域農業情報センタ−  
                        
○浜井
  初めに、パプアニュ−ギニアの地震災害に対してお見舞いを申し上げ、一刻も早い復興を願いながら、質問に入ります。

 まず、災害対策についてであります。救護所の指定の見直しについて伺います。
去る15日、文部大臣の諮問機関である測地学審議会は、新計画の中間報告を出しました。その中で本県は、高密度に観測網を配置する特定地域活動モニタリングシステムの導入対象地域とされたことで、さらに予測精度があがることが期待されます。しかしこの指定が、地震発生の切迫性に基づくものだとしたら、これまで行ってきた対策を総点検しておく必要があると思います。
かって「生命は地球より重い。」といった総理大臣がいましたが、この言葉を発した背景はともかくこの言葉そのものに間違いはありません。
 先の大震災では、治療が遅れた人ほど死亡率が高かったといわれています。 被災後、対策本部としてまず行わなければならないことは、被災者の生命の確保であることを考えると、「救護所」は大変重要な位置づけになってきます。
 計画に基づく県下の救護所を眺めてみますと、診療所だけを救護所に指定しているのは7市町村、学校等の避難所に救護所を設置しているのは54市町村、併用は13市町村になっています。
 救護所の医療体制は、原則として医師1名、看護婦3名、補助者2名の医療チ―ムを編成して行うこととされています。 専門家の意見では、医師1人が1日に対応できる患者数は、入院が必要な重症患者で5人程度、中等傷病者を加えてもせいぜい40人が限度だろうということであります。
 被災後は直ちに、重症患者も中等傷病者も最寄りの救護所に搬送されてきます。救護所の医療チ―ムは、トリア―ジを行い、重症患者と中等傷病者への緊急処置、死体の検案、救護病院への移送手配などの仕事に加えて、日常的医療を要する救急患者などに対応しなければなりません。責任者である医師には、過酷な任務であると思います。
下田市を例にとってみると、ここで想定される死者、重傷者、中等傷病者の総数は1669人、救護所6カ所で240人程度、残りの1400人余は、救護病院と仮設救護病院の2ケ所で対応することになり、ここには計算上35人の医師が必要になります。
 この対象患者数は、観光入り込み客やその他の日常的医療を必要とする救急患者は別ですから、果たして本当に大丈夫なのでしょうか。私は他のいくつかの市町村においても同様の懸念をもつのであります。
 人命第一を考えた時、救護所は医療環境としては劣る学校などの公共施設だけでいいのかと思います。救護所としての診療所を増やすべきだと考えますが、市町村の実情と意向を再確認しながら、指定の見直しをすることについて、どのようにお考えなのか ご所見を伺います。

○浜井
 
 次に、高速道路上の油災害対策ついて伺います。 去る6月11日午前0時30分頃、東名高速道路下り線浜松市241番ポスト付近で、大型トラックが普通トラックに追突、横転して追い越し車線で停止し、燃料タンクから漏れた軽油約200リットルが県の管理河川である花川に流出するという事故が発生いたしました。
通報を受けた公団と警察によって即刻現場検証が行われ、約2時間後の午前2時30分に公団から浜松市消防署に連絡が入りました。
 消防から市の守衛室を経て担当課に通報、両者が現場を確認したのは午前3時30分。軽油に対する防御策として花川河口200メ―トル上流の弁天橋地点にネットフェンスを張り、吸着マットを設置したのが午前4時でした。 ネットフェンスは浜松市消防本部にあったわけですが、一時は、現場の担当者もフェンスがどこに保管されているのかという所在を巡って混乱があったとも聞きました。
浜松土木事務所に連絡が入ったのは午前8時30分のこと。本庁の生活環境課に、そして防災局に報告が入ったのは午前9時35分でした。
 県の関係者が現場に立ったのは事故発生から8時間後のこと。県の出動は遅いのではないかと、一部の地元住民から不安な声があがりました。
 幸いにして流出したのが軽油であったため浜名湖の汚染と魚介類の被害には結びつきませんでしたが、資機材の種類、在庫及びその所在並びに緊急連絡体制などにおいて、末端の職員までの周知・徹底を欠いていたように思われます。
 東名菊川の事故の教訓を基に有害有毒化学物質の漏洩に対するマニュアルが策定されましたが、今回はそのマニュアル通りに機能しなかったことは事実であります。
 おそらく東名高速上もっとも大量に行き交い、しかも煩雑に運搬されていると思われる油類の漏洩、汚濁対策について、別枠のマニュアルでもって対応すべきであると考えますが、ご所見を伺います。



○浜井
  次に、海岸の油災害対策についてであります。 昨年1月に発生したナホトカ号重油流出事故は、関係機関相互の連携、役割分担についてのマニュアルがなく、初動において混乱状態にあったことを私たちはマスコミを通じて見聞いたしました。
直後に、国の防災計画に「海上災害対策編」が追加策定され、排出油の防除資材、機材に関わる情報を一元化するため、海上保安庁だけでなく地方公共団体にも必要な資材の整備が求められることになりました。
海洋上においてタンカ―の事故が発生した場合、法に基づいて、まず船主に防除義務が課されますが、ほとんどの事故の場合、現実的には海上保安庁の防除措置を必要とし、更に流出した重油・原油などが海岸に漂着した場合は、海岸を管理する都道府県や市町村などが対応することとされています。
本県に関わる油流出事故対応計画は、平成8年8月に海上保安庁が策定した「関東・東海東部沿岸海域排出油防除計画」に組み込まれていますが、本県独自の計画としては、静岡県地域防災計画一般対策編の中の第1章第3節「防災上必要な機関の処理すべき事務又は業務の大綱」中の第三管区海上保安本部の「流出等の海上災害発生時の防御及び拡大防止措置」としてあるだけであります。
海の銀座ともいわれる本県沖合を通過する船舶数は1日約500隻で、このうちタンカ―が25隻ということになっています。
 この海域で、タンカ―の衝突事故、油の流出事故が起こらないという保証はどこにもありません。
他県では既にマニュアル策定を終えたところもあると聞きます。本県においても万一油流出事故が発生した場合に備えて、関係防災機関の役割分担、必要資機材の確保と在庫状況、ボランティア支援などについての対応マニュアルを策定する必要があると思いますが、ご所見を伺うものであります


○ 浜井
  次に、診療所及び中小病院の活用とネットワ―ク化についてであります。医療救護計画によれば、救護所は想定被害者数を基に定めることになっています。
 しかし本県の第2次被害想定は、観光入り込み客や公共交通機関等の利用者、通過客などは加えられていません。被災ストレス患者も同様であります。
 あの阪神大震災の時、およそ4万3千人が負傷し、病院に殺到しています。
 そのとき、迎える病院側の状況はどうであったかというと、医師が被災して不在だったり、医療機器が破損して使えなかったり、断水が治療を妨げたりしました。
 また病院に駆けつけることができた医師及び職員は、正午までに20%、夕方までに50%弱、震災3日目でも56%程度であったと聞きます。
負傷者の多くは、一番身近な診療所や中小病院に駆込んだといわれています。被災によって気持ちが動転している負傷者やその関係者にとっては、怪我の状態を重傷、中、軽傷と判断するより、応急診療を受けることが最優先されます。この時、負傷者にとっては、目に入る医療施設があれば、救護所の指定の有無とは関係無く、まずその門を叩くと思います。
 厚生省がまとめた防災時の病院マニュアルを始めとして、県及び市町村が策定した医療救護マニュアルは、人的・物的に恵まれた大病院を前提に組み立てられています。
 ところが指定から外れている診療所や中小病院などは、「自家発電装置がない。」「治療に必要な水がない。」「食糧がない。」などの弱点を抱えているのが実態のようです。
 切迫性が指摘されている東海地震の追加対策として、救護所に指定されていない診療所や中小病院について、最低限の医療機器設備の配備、相互の連絡と連携、医療メ―カ―、リネン業界、給食業界などによる人的、物的な補完的ネットワ―クづくりを考えておくべきであると思いますが、ご所見を伺うものであります。

○浜井
   次は、雇用対策の内、離転職者の職業訓練について伺います。長期にわたる景気の低迷は、我が国社会に深刻な影響を及ぼそうとしています。先に発表された民間信用調査機関である帝国デ―タバンクの調査資料によれば、平成10年上半期の全国の企業倒産件数は、対前年比29.5%増の11,073件で、個人消費の不振やアジア経済危機の影響を受けて、年間ベ―スとしては過去最高に達しようとしています。
 また負債総額は6兆9千3百33億円となって、前年同期比8,8%増、すでに過去最悪となりました。
本県の5月の職業紹介状況についてみますと、有効求職者数の65,156人に対して、有効求人数は46,045人と、有効求人倍率は0,75倍となっています。
月間有効求職者数のうち中高年齢者数は33,929人と過半数に及びますが、この年齢層の就職は困難の極みにあります。
 県内3カ所で計画している離転職者の訓練計画のうち、当初計画に加えた追加実施計画は、沼津校で3回で50人、清水校で1回、20人。浜松校では3回、50人と県内全域で120人の枠の拡大となっています。
 しかし先月、浜松技能開発専門校で募集した「造園科」の訓練コ―スには、15人の募集定員に対して希望者は74人。このうち56人が、9月と来年1月に実施予定の訓練参加への希望をつないでいると思われますが、追加計画では45人の枠しかありません。先のデ―タバンク社の予測通りとすれば、この秋にかけてさらに中高年者の離・転職者の増加がみこまれます。
 世帯主であり、一家の経済の柱でもあるこうした中高年齢者たちの雇用の確保と社会の安定を図るため、県の積極的支援は必要であります。
 そのためには幅広い分野の訓練コ―ス設定やニ―ズの高い訓練コ―スの設定など、弾力的・効率的な対応が求められてきます。今議会に計上された県単緊急就職支援事業費2,700万円で、必要とされるそれら全ての要望に応えていくことができるのか、ご所見を伺うものであります。

○浜井
   次に、県有施設への情報端末パソコンの整備について伺います。去る21日付け朝刊に、産能大の新入社員調査の結果がのっていました。今年4月に入社した新入社員の45%は、就職活動にインタ―ネットを利用していたというものであります。1年に1回だけの情報がのる就職情報誌より、デ―タの更新が早く、リアルタイムの情報が得られるというのがその理由にあげられていました。
 情報化社会の進展によって、インタ―ネットを活用した情報武装が、求職学生たちの大きな武器になっているということを示しています。
 求人・求職情報がインタ―ネット上で、増殖を続けていくものとすれば、それらの情報と同じものを社会会構造の変化の中で離転職を余儀なくされている中高年者にも等しく受けとめられるようにしてあげるべきであると思います。
 インタ―ネットにおける求人情報の提供事業は、第一段階であり、次の段階は、そうして提供された情報を読むための端末パソコンの配備であると思います。
本年度神奈川県では、県民サ―ビスのために行政センタ―など13カ所に、また香川県でも県内33カ所に情報端末パソコンを設置する計画と聞きます。
 インタ―ネット上の情報は、パソコンをもっていない県民はもちろんのこと、インタ―ネットを利用する機会のない県民、そしてまた、パソコンを操作した経験のない県民が、簡単に操作し、各種の情報を読むことができなければ意味をもちません。
素人にも扱いやすいソフトの検討と合わせて、県有施設への情報端末パソコンの配備について、どのように考えておられるのかご所見を伺います。

○浜井
   次に、インタ−ネットの求人情報サ−ビスについて伺います。一昨年に倒産し、会社更生法による再建を目指している三保造船所は、昨年10月30日付で従業員266人のうち、40才以上の中高年者を主体に118人のリストラを行いました。この時の解雇者のうち、今なお40人が、就職できないままでいるということを聞いています。
 昨年、私の知人もリストラによって職を失いました。彼はハロ―ワ―クに6ヶ月通いつめました。「世間の目を考えて、いつもと同じ時間帯に家を出てハロ―ワ―クへ通いました。駐車スペ―スが少ないせいか、朝早く約束時間前にやってくる中年の人たちが多いのには驚きました。結局、思うような職はなく、今は親類の仕事を手伝う毎日です。時々わびしくなりますよ。自殺する中年の人たちの気持ちが分かります。」と沈みがちに話してくれた姿と重なり合います。
さて、本県が進めるデジタルオフィス構想は、行政運営の効率化、迅速化、省力化に向けて大きな変革と成果が期待されています。しかし、この構想の推進は行政の側の独りよがりではなく、県民の側においてもデジタルサ―ビスの享受につながるものでなければならないと思います。
 現在、本県の商工労働部のホ―ムペ―ジに掲載されている職安情報、就職関連イベント情報などは、いずれも皮相的で単なるお知らせ情報の域を出ていません。
新潟県は今年度から、これまでガイドブックなどで提供していた地元企業の採用情報をホ―ムペ―ジに載せ始めました。「トップペ―ジ」の「利用ガイド」から「新潟ワ―ク・ナビ」をクリックし、更に「企業情報」をクリックすると、地元企業約700社の事業内容、採用計画、労働条件などを知ることができるようになっています。東京都も同様のインタ―ネットサ―ビスを実施すべく準備中だと聞いています。
 本県も、たとえば中高年者などが、ハロ―ワ―ク以外のところでインタ―ネット上の情報番号をもとに、求職活動を簡略化するようなシステムが考えられないだろうかと思います。
 ハロ―ワ―クでの時間の短縮、混雑緩和、中高年者のプライドなどへの配慮も含めて、本県でもインタ―ネットによる求人情報サ―ビスの提供ができないだろうかと考えますが、ご所見を伺います。

○浜井
 心の教育について伺います。まず小学校教科担任制の導入についてであります。 かって東京大学医学部長をされていた小林登教授は「こどもは未来である。」といみじくもいわれましたが、生涯特殊出生率1.39という昨年の全国統計値は、この国の「みらい」に対する思い入れを削いでいくような気がしてなりません。
 私たちには、この世に生を受けて、今を生きているこども達を大事に育てていく重い責任があると思います。
「こどもは一冊の本である。この本から 我々は何かを読みとり。この本に我々は何かを書き込まなけばならない。」これは、オ―ストリアのロ―ゼッカ―という人の言葉です。「何かを読みとり、何かを書き込む。」ための機会は、家庭にも地域社会にもあるわけですが、一番大事な場所はやっぱり学校だろうと思います。
「こどもの未来」に明るい希望をつないでいくためには、個性の芽を小学校時代に見つけだして、それを上手に育てていくことが必要だと思います。
 しかし小学校における学級担任制度は、担任教員と生徒とのチャンネルが合うか、合わないかで大きく違ってきます。学年持ち上がりということになれば、共有のチャンネルを持ち合わせない教員と生徒との間は、亀裂を深めていくだけのように思われます。担任教員との折り合いが悪いまま、登校拒否寸前までいってしまったこどもを知っています。
 学校には、こども達の心の中を読み、そこに人生に必要な知恵を書き込んでいくため、こども達と交信しあうことのできるチャンネルをもった教員が必要です。できればこどもの一人一人に対して、こうした教員が必要であります。
 しかし、今の小学校の学級担任制度のもとでの担任教科は、八教科をみなければなりませんから、ゼネラリストになってしまっています。
 現代の学校教育の場でこども達に伝えられるものは、文字や記号を媒体とした概念的に体系化された学問的・科学的知識であります。したがってそれを教える側は、専門的な教育者でなければなりません。
そこで、小学校における教科担任制度を導入し、教科ごとのスペシャリストとしての専門性をもった教員が、複数の目でこども達を見守っていくシステムが考えられないかと思うのであります。こども達の発信するシグナルを読みとり、個々の個性に応じた何かを書き込むためのチャンネルは多い方が確率が高くなると思うのであります。 小学校における教科担任制度の導入について、教育長のご所見を伺います。

○浜井

 心の教育について、次に小、中学校間の教員交流であります。小学校における教科担任制度の導入を提案したわけでありますから、その延長線上の問題として小学校と中学校間の教員の交流についてお伺い致します。
相次ぐナイフ事件、校内暴力など、全国的に特に中学校が荒れています。この春の卒業式で、警察官が警戒にあたった中学校の数が約1,700校にのぼったことがそのことを裏付けています。
 私はある小学校の関係者から、中学校側から、「小学校でしっかり教えていないから中学校では苦労させられるんだ。」といわれて悔しい思いをしたという話を聞かされたとき、私は同じ義務教育機関の中での相互理解が足らないと感じると同時に、小学校と中学校の間で、教員の交流が必要ではないかと考えました。
 資格の問題もあるとは思いますが、中学校の教員にとっては、小学生の学校、家庭、社会における学習環境や生活環境などを知ることができ、小学校の教員にとっては、小学生と中学生の行動や考え方の変化を体感することができると思います。それは、互いに義務教育全体を広い視野で眺めることにつながっていきます。
昨年度末の教育委員会の人事において、小学校から中学校へ75人が、中学校から小学校へは60人が、それぞれ派遣、交流されました。
 しかしこれは、17,000人余の小・中学校の教員総数からすれば、わずかに0,8%にしかすぎません。
 中高一貫教育への提言がなされている今日、その前段階としての義務教育九年間における交流の活発化によって、教員の意識改革を行い、それがひいてはこども達の心のチャンネル回路が広がり、それがさらには「心の教育」につながっていくものと思いますが、教育長のご所見を伺います。



○石川知事

 災害対策についてのうち、油災害対策についてであります。まず、高速道路についてでありますが、事故により化学物質や油類が高速道路で漏洩した場合に、周辺地域への環境破壊や有毒ガスの発声による生命への危険性など、その影響は極めて大きいことから、早急な対策が必要です。県におきましては、昨年8月に東名高速道路で発生しましたタンクロ−リ−からの化学物質漏えい事故を教訓に、新たに代表的化学物質の性質や基本的な事故処理手順、あるいは関係機関との連絡体制などをマニュアルとして取りまとめ、事故発生時に迅速かつ的確に対応できるようにしたところでございます。浜井議員御指摘の交通事故車両からの燃料漏れにつぎましても、このマニュアルにより対処し得るものと考えておりますが、今回の事故の場合、そのマニュアルと対比いたしますと、必要なところへの連絡が必ずしもマニュアルどおり行われていなかったということでございますので、今後とも、関係機関との連携を密にしまして、マニュアルどおりの対応が図られるように徹底をしていきたいと考えております。

  次ぎに、海岸についてでございます。
海洋上の船舶による油流出事故は、船主に一元的な防除措置義務が課されておりまして、必要に応じ、海上保安庁も防除措置を実施するという建前になっております。しかし、日本海の「ナホトカ号」や東京湾の「ダイヤモンドグレ−ス号」事件に見られますように、大規模な油流出事故は、沿岸の自然環境の破壊はもとより、漁業活動、観光産業などに大変大きな影響を及ぼし、その社会経済的損失ははかり知れないものがございます。
 また、初期対応がおくれれば、被害は加速度的に広がり、損害が拡大するということにもなります。
 このため本県におきましては、清水海上保安部と連携をいたしまして、昨年の11月に、県内関係機関で静岡県沿岸排出油防除協議会を設立をいたしますとともに、的確な初期対応活動を行うために情報連絡体制、役割分担、防除措置、資機材の調達・輸落方法等を定めた防除活動マニュアルを作成したところでございます。このようにマニュアルの整備をもとに、今後は必要といたします防除資機材の整備充実と実践的な訓練を積み重ねて、実際の事故発生の場合に迅速な対応ができますように、今回の東名におきます事故もよい教訓としながら、こちらの分野についても徹底を図っていきたいと考えます。

  次ぎに、雇用対策についてのうち、離転職者職業訓練についてであります。
離職者が早期に再就職するためには、みずからが即戦力として必要な技術、技能などを身につけて、積極的に職域の拡大に努めるとともに、公共職業訓練施設においては、社会経済の変化や求人・求職者のニ−ズに適切に対応した訓練を実施するということが必要になります。今回の訓練人員の拡大は、厳しい雇用情勢の中で、特に再就職が困難な中高年齢者やホワイトカラ−離職者を対象に、訓練科目としては、再就職の可能性が高く、かつ受講希望者が多い情報ビジネス、広告デザイン、造園などに重点を置いて設定をしたところでございます。訓練を受ける場所といたしましては、県立専門校はもとより、県下の専修学校とか、あるいは民間の職業訓練校にも対象を拡大をいたしまして、ニ−ズにこたえられるようにしようと努力をしているところでございます。また、今回の補正以外にも、訓練の実施に当たりましては、今後の求人、求職の動向を見きわめながら、実施時期の前倒しとか訓練期問の短縮等、機動的、弾力的対応にも心がけまして、一人でも多くの訓練希望者を受け入れられるような努力をしてまいりたいと考えております。
 一応、今回の6月の補正予算をお認めいただきますと、県の施設、県の行います施策、国のポリテクセンタ−におきます訓練希望、両方合わせますと当初は820名でございましたが、これが合計で1,080余名に拡大をすることが可能になりますし、さらに、民問の訓練校の受け入れ可能性についても現在詰めをしておりまして、うまくいけば80名の枠も確保できそうだということで、詰めをしておるところでございます。いずれにいたしましても、現下の厳しい経済状況の中では再就職先の確保が不可欠でありますので、訓練施設においては、今回大幅に増強したハロ−ワ−ク内の求人開拓推進員等とも連絡を密にしながら、効果的な訓練を行い、修了者が早期に再就職できるように支援をしてまいる考えでございます。その他のご質問につきましては、関係部長、教育長からご答弁を中し上げます。


○健康福祉部長

 救護所の指定の見直しについてお答えいたします。
災害時の医療救護につきましては、静岡県医療救護計画に基づきまして、災害により傷病者が発生した場合、まず、市町村の指定する救護所において中等傷患者の処置や重傷患者の応急処置を行い、入院が必要な重傷患者につきましては、救護病院や仮設救護病院に搬送し、処置することといたしております。さらに、救護病院で対応が困難な重傷患者にっきましては、広域救護病院に搬送し、処置及び収容する体制をとっているところであります。
御指摘の救護所につきましては、市町村長が診療所または避難所として指定した学校等のうちから指定することとしておりますが、人口が集中している地域では、被災者が診療所に殺到し、混乱を来すおそれがあることや、医療救護が長期化するなどに備えまして、複数の医療チ−ムを確保する必要があること、さらには、建物の耐震性等を考慮して、学校等の避難所を指定している市町村が多くなっております。こうした中でも、地元医師会との協議によりまして、市内の全診療所を救護所に指定する市や、人口密度が低い農山村地域などでは、学校などの避難所への交通事情や距離などを考慮いたしまして、診療所を救護所に指定している市町村もあります。このように救護所の指定は、それぞれの市町村、地域の状況によりまして種々の対応がとられているところでございますが、地域における医療救護活動をより一層効果的で実践的なものとするために、市町村における指定状況や指定の考え方等を調査しまして、必要に応じて見直しを指導してまいりたいと考えております。


○健康福祉部長 

 診療所及び中小病院の活用とネットワ−ク化についてであります。東海地震等の大規模災害時におきましては、あらかじめ定められた救護所などの施設が被災するなど、迅速、的確な医療救護活動を行うことが困難となる場合が想定されます。こうしたことから、医療救護計画では市町村長ほ、医療救護施設として指定しない医療機関についても、状況に応じ医療救護活動に参加できるよう、あらかじめ地域の医師会、病院、診療所の管理者等と十分に連携し、これちの施設の活用を図っていくこととしております。県といたしましては、今年度、救護所など医療救護施設における医療救護活動を迅速、的確に行うためのマニュアルを作成することといたしておりますが、この中で、御指摘の補完的ネットワ−クのマニュアルづくりにつきましても検討いたしまして、市町村を指導してまいりたいと考えております。また、災害時におきまして、県や関係医療機関、消防機関、医師会等との間の救急救護活動に必要な情報の交換提供を行います広域災害・救急医療情報システムの構築に向けた作業も現在進めているところでございます。今後とも、大規模災害に備えて、適切かつ急速な医療救護体制の充実強化に向けまして努力してまいりたいと考えております。
○鈴木雅近企画部長
 雇用対策についてのうち、県有施設への情報端末パソコンの整備についてお答えいたします。情報化の進展に伴い、雇用の分野のみならず、さまざまな分野において幅広い情報を入手することの重要性が増すなど、情報に対するニ−ズが高まってきております。こうしたことから、飛躍的に進展する情報通信技術を生かし、県民生活や産業活動、公共部門での高度情報化を進め、時問、距離を超えて容易に情報の受発信ができる環境の整備を図ることは、大変重要であると考えております。
 このため県といたしましては、しずおかデジタル・オフィス整備計画など行政の高度情報化を進めるほか、平成8年度からインタ−ネット上に静岡県のホ−ムペ−ジを開設するとともに、県庁東館2階の県民サ−ビスセンタ−にインタ−ネット公開端末を設置するなど、県民だれもが容易に情報の受発信ができる環境の整備に努めてきているところであります。
 今後とも、行政事務の高度化、効率化を推進するとともに、わかりやすく、使いやすく、かつタイムリ−に行政情報の提供ができるよう、県のホ−ムペ−ジの内容の充実に努めますとともに、県行政センタ−などの県有施設への公開端末の設置拡大につきまして、計画的に進めてまいりたいと考えております。


○植田商工労働部長
 雇用対策についてのうち、インタ−ネットヘの求人情報サービス提供についてお答えいたします。
 近年、高度情報通信技術の発展に伴いまして、パソコンによるインタ−ネットが普及してまいりましたことから、本県においても、この3月にホ−ムペ−ジを開設し、雇用ニュ−スや雇用関係の各種制度等を提供しているところであります。御指摘のように、最近の求職者は、公共職業安定所に出向かなくても、自宅などで、これらに関する惰報を得られるようなサ−ビスを求めておりますので、本県におきましても、今後求職者のニ−ズにこたえられるよう、提供をいただきます企業の協力を得て、企業情報の提供に努めてまいりたいと考えております。さらに、求人情報の提供につきましては、全国的な課題として、個別の企業情報や個人情報の保護等を十分配慮した中で、どこまで提供できるか、
現在労働省において検討しており、その調査研究の一環として、東京都の一部の公共職業安定所において試行的に実施することとしております。
県といたしましては、求職者の二−ズヘの迅速な対応や雇用行政の効率化の観点から、この調査研究の結果に基づいて、早急にインタ−ネットを活用した情報提供システムの構築ができるよう、労働省に対して強く働きかけをしてまいりたいと考えております。


○杉田豊教育長
 心の教育についてのうち、初めに、小学校教科担任制の導入についてお答えいたします。学級担任制は、本来、子供と接する場や時間が多く、子供をよく理解し、きめ細かな指導を行おうとするものであります。特に低学年では、教師が常に子供に寄り添い、心の安定を図ることを重視することから、学級担任制にも大きな意義があるものと考えております。
 しかしながら、議員ご指摘のとおり、子供が多くの教師と人間的なかかわりを持つことも大変重要であると認識しております。そのため各学校では、学級担任外の教師が、さまざまな教科で幾つかの学級を指導したり、学級担任同士が相互に理科や社会、あるいは体育など、それぞれ得意な教科を担当し合うなど、子供が多くの教師と触れ合うことができるように工夫もしております。
 また最近では、複数の教員が協力して指導に当たります、いわゆるチ−ムティ−チング方式も定着してまいりまして、大きな成果を上げているところでもございます。
 今後とも、心の教育を推進するに当たり、議員ご提案の教科担任制の拡大も含め、さまざまな方策を研究し、子供たちの心を読み取り、適切な教育ができますよう努めてまいる所存でございます。

○杉田豊教育長
 次に、小・中学校間の教員の交流についてであります。県教育委員会は、教職員の資質の向上と学校組織の活性化を図るため、人事異動方針におきまして、交流を大きな柱の一つとして位置づけております。その中で、小・中学校間の交流は、異なる校種を経験させることにより、視野の拡大と指導力の向上を図ることなどを目的といたしまして、毎年度末、計画的に実施をしているところでございます。中学校から小学校に異動した教師からは、小学生の純真な姿に接しまして、教育の原点を見る思いがいたしましたというような感想も寄せられております。
このように、小。中学校間の教員交流には、義務教育9年間の視点に立ち、教師が子供に対する理解を一層深めるよい機会でもあります。なお、議員ご指摘のとおり、心の教育は深い子供理解があってこそ、その充実が図られます。今後も、小・中学校間の交流はもとより、多くの子供が高等学校に進学している現状にかんがみまして、中学校教員と高等学校教員との人事交流につきましても、積極的
に取り組んでまいりたいと考えております。



○石川知事
 先ほど離転職者職業訓練のお答えの中で、私、数字を間違えて申し上げましたので、謹んで訂正させていただきます。離転職者の職業訓練の最初の枠、県と国のポリテクセンタ−を通じて 820名の枠を用意したと申し上げましたが、720名の誤りでございました。算術を問違えましたこと、おわびをいたします。

再質問

〇浜井
 離転職者訓練については、9月だ1月だというようなことでしたので、それまで待てないという思いがしましたけれども、先倒しをしながらというお答えでしたので、それはできるだけ短い期間で、職は1日でも早く得たいという思いを充足させるためにこれは要望しておきます。
 商工労働部長にお尋ねしたいのは、先ほど、東京都の一部で実験的にやっているというお答えでした。労働省に働きかけをしていくというようなことですけれども、私が申し上げたのは新潟県なんですね。これは利用ガイドがあつて、県のホ−ムペ−ジから飛んでいけるわけです。新潟ワ−クなりに。これは企業情報の中で、職種別あるいはハロ−ワ−ク、地域別、それから業種別で検索できるのです。例えば、事務系というのを引いてみますと、203件が検索されましたということで、ずらずらずらっと企業名が出てくるわけです。そのうちの一つをクリックすると、例えば財団法人雪だるま財団という形で、初任給が幾らだとかいう形で出てくるわけですね。ですから、労働省に働きかけをするんではなくて、せっかくデジタル・オフィス構想ということを掲げた本県として、もっとみずから努力をしていってもらいたいと、そういう意味で申し上げたことですので、省庁を頼りにするんじゃなくて、本県としてどうするかという視点で考えてもらいたい。その点についてもう一度お答えをいただきたい。


再質問に対する答弁
○商工労働部長
 新潟県の現在行われている状況に基づいての本県の独自の取り組みというご質問だと思いますけど、私も内容を見せていただきました。実態を調べてみますと、やはり企業の方で了解を得たところでないと登載をできないということで、登載が今700社ほど入っておりますけれども、本来ですともっと必要なんですが、了解を得られないところは登載されていないと。登載されている中身を見ますと、初任給から採用の見込み希望、それが入っているところと入っていない企業とが分布してございます。そこら辺をいかに統一をしていくのか、また企業が企業作戦の中でどこまで情報として公開してくれるかというようなものを今後検討していかなければできないということで、労働省も苦慮をしてい
るようでございます。 
 ただ、本県の独自のものとして、了解を得られたところについては新潟県と同じように、現在のホ−ムペ−ジの中の改良で順次登載をしていくと。現在ガイドブック等で機関が使っているだけのものを、広く求職者にひろめていくという観点から、早急に検討をしてまいりたいと考えていまず。よろしくお願い致します。