更新月日 | タ イ ト ル |
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06.11.05 | トビが急降下 カマキリ捕食 (2) |
05.11.26 | トビが急降下 カマキリ捕食 (1) |
一年前、「トビが急降下 カマキリ捕食」という文を載せました。今年また、いくつかの新しい知見が得られましたので、前回の記事に追加するような形で記述します。
(1) 各地のトビが頻繁に、10~11月にかけてカマキリを捕らえて食べている
愛知県内の何カ所かで、この行動を確認しましたので、それほど珍しいことではないでしょう。
(2) カマキリは、普段、高い位置の木の葉の表面で、ひなたぼっこをしている
スコープで探すと、いくつかのカマキリを見ることができました。きっと、たくさんのカマキリが木の葉にとまっていることが推察されます。
(3) トビが近づくと、あわてて葉の裏側へ隠れる
この写真のカマキリは、私が近くにいたため食べられることがありませんでした。トビが2度ばかりかなりの近さ、たぶん5~6メートルまで近付いた時、大あわてで、葉の裏へ隠れました。隠れるところを2回観察しました。トビが去っていくと、ゆっくりと、葉の表側へ戻りました。
(4) トビは葉っぱごとカマキリを捕らえる
カマキリだけを捕らえることは、なかなか難しいようで、カマキリを捕らえる時には、一枚か二枚の葉ごと鷲づかみにします。急に葉の裏側へカマキリが逃げても、そのまま捕らえるかもしれません。そして空中で食べる時には、その葉は地上へ落とします。今回、葉を落とすところを3回見ましたが、その内の2枚を拾うことができました。下の写真はその1枚です。写真中央の少し上に、爪であけられた跡が見られます。他の穴や欠けている部分は、虫が食べたか、あるいは風等でいたんだものです。もう一枚の葉には、爪の跡のほかに、唾液のような液体が付着していました。カマキリを食べる時は空中で食べることが多いのですが、電柱のてっぺんで食べることもありました。
(Uploaded on 5 November 2006)
2005年の10月は愛知県瀬戸市でタカの渡りの観察をしていました。おもしろい研究テーマがあって、今秋はこの20数年間一度も欠かしたことのない伊良湖岬での観察を中断してしまいました。
瀬戸市では、例年以上に渡るタカが少なく、暇を持てあましていましたので、トビになったような気持ちで、飛んでいるトビに感情移入しながらトビばかり見ていました。
かねてより、Aさんから「10月のトビはよく急降下して、樹冠の昆虫を捕まえているよ」と聞いていました。今年の瀬戸市での観察では、何羽かのトビが何度も何度も繰り返しこの行動をとっていました。そして、緑色の昆虫らしきものを空中で飛びながら食べていました。帆翔していたトビがフワッと角度を変えて、重力に吸い付けられるように、別世界を飛ぶように滑翔しはじめて、その後突然、急降下します。
ハヤブサやハイタカのような紡錘形のような弾丸のような急降下の迫力はありません。また、ほかのタカ類・ハヤブサ類のディスプレイ飛行に見られるような華やかな急降下とも違います。それぞれのタカがそれぞれの飛翔能力に相応した急降下をしていますが、トビは、鳥類を捕食するタカ類・ハヤブサ類のようなスピード感のある急降下とは違う、味わい深いというか、地味ながらも「いいなあ」と思わせるような、そんな重力を感じさせない急降下飛翔をします。
トビは、なかなか優れた飛行性能を持っています。かなりの精度で、きちんと正確に昆虫を捕らえています。長時間の帆翔にも耐えられます。
後日、この話を渡り観察中に話したところ、一緒に観察していたBさんはすぐに近くの木々を揺すって、チョウやガ、コカマキリが飛び出したり落ちてきたりするところを見せてくれました。また、Cさんはデジカメで高精細な写真を撮って確認してくださいました。「どんな昆虫なんだろうね?」と頭の中だけで考えているだけではないその行動力に感心しました。結果はみんなが想像した通りの、カマキリでした。
「飛べ 飛べ トンビ 空高く」とのどかに歌われるトビ。多くのバードウオッチャーには「なんだ トビか」とさげすまれたように言われます。世間一般の人には、ゆったりと、のんびり暮らしているように思われているようです。でも、双眼鏡やスコープで観察していると、全然そんなことはありません。かなり厳しい顔つきをしていますし、四六時中キョロキョロと獲物をさがしまくり、必死でがんばって生きているようすが見られます。自分がトビになったつもりで、じっと10分くらい何も考えずに見続けると、トビはおもしろいですよ。私はトビが好きです。
(Uploaded on 26 November 2005)