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「ツミ」 フォルダ の 目次
更新月日 タ  イ  ト  ル
23.09.27  アカハラダカ若鳥 と ツミ雄成鳥の誤認に注意
23.02.01  1月のツミと認知バイアス
21.12.02  ツミのモビングで コウノトリが体勢を崩す
19.11.23  ツミが逃げた!
17.01.01  ツミ 同時に15羽が旋回上昇
12.07.11  日本の鷹隼類 環境省レッドリスト(4) リュウキュウツミ
08.10.24  飛翔中のツミ幼鳥 ♂♀識別表
08.01.01  越冬するツミ
05.05.05  原生林で聞いた ツミ の声
04.10.13  ツミ と ハイタカ の羽ばたき
03.11.03  ミナミツミ Besra と思われる個体を見ました
96.10.30  小形ながら最も気の強いタカ ツミ


アカハラダカ若鳥 と ツミ雄成鳥の誤認に注意


 2023年9月25日、岐阜県金華山水道山へタカの渡りを見に行きました。アカハラダカが1羽、8時22分に飛びました。年齢は、第2暦年の秋(第2回秋)、1歳半くらいの個体でした。

 ツミくらいの小形のタカ2羽が前後に連なって私の目の前をやや低く飛んだのですが、前を飛ぶタカはスーッと滑空し、後ろのタカは力強く羽ばたいていたので「これは何か変だな。突っかかるかな?」 と思って、とりあえず2羽とも前から順番に写真を撮りました。後ろのタカは間違いなくツミ幼鳥でした。前のタカは、とてもツミとは思えない風変わりなタカでした。Canon 100-400mmズームで撮影なので下のようなあまり精細ではない画像しか撮れませんでしたが、識別に必要な大事なところはほぼ確認できます。


生後約1年半、第2暦年 秋のアカハラダカ若鳥個体 2023.9.25 岐阜県金華山 若杉撮影

 この個体の特徴は、

 1 体下面は成羽に換羽済みで、幼鳥のような縦斑、横斑、丸斑などはない。
 2 初列風切はP1~3またはP1~4までが成羽に換羽し、他はすべて幼羽のまま。
 3 次列風切は幼羽のままで、帯がツミよりも1~2本少ない。
 4 翼先がかなり黒っぽい。
 5 下雨覆に鷹斑がまったくない。
 6 下初列大雨覆の先に黒い斑点状の帯がある。
 7 翼先突出数ははっきりしないが4枚に見え、翼先が尖っている、などです。

 一方、虹彩の色や尾羽の換羽状況は分かりませんでした。

 このアカハラダカが飛んだ時刻、金華山の展望台には30数名の方がいて、多くの人が大きなレンズ付きのカメラを持っておられたので、虹彩の色が分かる画像あるいは胸の模様や色の分かる画像を撮られた方もいらっしゃると思います。ぜひ一枚送ってください(メールアドレスは表紙の一番下にあります)。

 ツミは幼鳥から一気に成鳥へほぼ完全換羽しますが、アカハラダカはツミなどと比べると換羽の進行がかなりゆっくりで、幼鳥から成鳥への換羽には少なくとも2年かかります。したがって若鳥を見る機会はやや多いのですが、どういうわけかイラスト図鑑や写真図鑑には若鳥の画像や記述がめったにありません。Bird Research News Vol.13 No.9(2016.9.6付け)などには若鳥が載っています。ネット上の画像でもちょくちょく見ることができます。図鑑にも若鳥をぜひ載せてほしいと思います。 

 私の住む愛知県ではアカハラダカは珍鳥ですが、9月にあまり頻繁にタカの渡りを見に行かない私でもこれまでに、伊良湖岬(20数羽)、田原市の蔵王山(若鳥)、岡崎市の扇子山(成鳥)、知多半島の冨具崎(成鳥)、そして今日のように、愛知・岐阜県境に近い岐阜県金華山(若鳥)で見ていますので、ツミくらいの大きさのタカを入念に拾って1羽1羽の雌雄成幼などを識別していけば、思った以上の数のアカハラダカを愛知県内で見ることができると思います。人知れず、意外と多くのアカハラダカが各地で渡っている可能性があります。

(後日 追記)

 この前日に白樺峠で観察されたアカハラダカの画像がタカ渡りネットワークのサイトで公開されました。9月24日午後3時18分に佐伯元子さんが撮影された画像を見ると、私が見た個体と違うところはなく、渡りルートや時刻、個体数の少なさなどから考えても、同一個体である可能性が高いように思います。白樺峠の画像では決定的な証拠となりそうな尾羽(右のR4)の欠損(らしきもの)がありますが、金華山では一度も旋回をせず尾羽を閉じたままツミに追われて一直線に飛んだので、その欠損(らしきもの)が写っていなくて同一個体と断定はできませんが、それ以外のところでは同一個体と考えて矛盾するようなところは一つもありません。難しいところですが、同一個体だろうと思いながらも、結論としては同一個体だと断定はしていません。(ここまで、後日追記)

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 コロナの関係もあって、この日、金華山へは4年ぶりの訪問になりました。ちょうど4年前のその日はサシバ暗色型が撮影できたり、ハチクマの雌成鳥なのに雄成鳥の模様そっくりの個体が撮れたりしましたが、まるっと4年後のこの日も、7時33分にサシバ暗色型(たぶん成鳥、雌雄不明)1羽が初めから低い高度で出現し、やや近くを飛ぶところが見えました(下の画像)。私は例年、タカの渡りはハイタカ属を中心に見ていますので、サシバやハチクマの時期はあまり頻繁に観察していないのですが、それでも毎年少なくとも1個体は暗色型サシバを見る(または撮る)ことができています。群れが現れた時でも、1羽1羽の個体を暗色型であるかそうではないかと丹念に見ていけば、暗色型に出会う可能性はけっこう高いでしょう。つまり、言われている以上に暗色型の個体数は多いのかもしれません。


サシバ暗色型(たぶん成鳥、雌雄不明) 2023.9.25 岐阜県金華山 若杉撮影

 

 (この通信では通常、観察地点は県名までしか書かず、時期も「〇月」か「〇月上旬」などとしていますが、渡りの観察ですので、細かく書きました)

(Uploaded on 27 September 2023)

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1月のツミと認知バイアス


 2023年1月初旬、某所へハイタカのハンティングを見に行きました。雄成鳥2羽と雌らしき幼鳥1羽、他に個体情報がはっきりとしない(雌成鳥か幼鳥)ハイタカ1羽が出ました。4羽が何度もハンティングを繰り返し、獲物を追いかけて急降下するところを3時間半の間に20数回見ました。その後姿が見えなくなったので狩りに成功しただろうと思われる個体や、狩りに失敗してすぐに次の狩りをする個体、他所へ狩り場を変えたのだろうかという個体など、さまざまでした。

 8時30分頃、ちょうど私の頭上やや高いところで2羽がつっかかり合いをし始めました。ハイタカは比較的穏やかなタカなので(私の主観です)、ふだんハイタカ同士はめったに突っかかることがなく、かなり近づいて絡みそうになることはあっても、近づかれた方の個体がさっと交わしてしまうことが多いです。特にハイタカ同士が足を突き出しながら激しく絡むことは少ないです(見たことがないだけかもしれません)。こういうことをしながら、近づいたり離れたりしてそれぞれがほぼマイペースでハンティングをしています。しかし、このときはかなり荒い突っかかりをしていました。出現した最初のころに確認用で撮った画像を見てみると、胸に少しだけ縦斑がある(突っかかられた雄成鳥との大きさの比較から)雄らしきハイタカ幼鳥に見えました。この個体が同時に出たハイタカ雄成鳥にかなり激しい勢いで突っかかり、何度も両足を前に突き出していました。下の画像は尾羽をつかんだかのように見えます。


ハイタカ雄成鳥(左)に突っかかるツミ幼鳥 愛知県 1月 若杉撮影

 

 「おかしいな、今日は変わったことをしているなぁ」と思いながら、ずっと目を離さず、時々画像も撮りながら観察していました。姿が見えなくなってから画像をゆっくりと確認したら突っかかっていたのはハイタカではなくてツミ幼鳥でした。この個体は胸に縦斑のあるハイタカだろうと思っていましたが、実はツミ幼鳥そのものでした。言い訳っぽいですが、胸の縦斑が通常見られるツミ幼鳥よりもかなり少ない個体だったので短時間の画像確認だけで、勘違いしてしまいました(体下面の模様がツミ幼鳥そっくりのハイタカ幼鳥がこの観察地点では今冬しばしば出現します)し、かなり激しい動きでしたからいつものような羽ばたきの深さによるツミかハイタカかという推定は役に立ちませんでした。

 愛知県内で1月にツミを見ることはちょくちょくありますが、頻度はひじょうに小さくてハイタカと比べると桁が二桁ぐらい少ないです。しかもこの寒い時期に見られるツミは多くは幼鳥です。成鳥もいますが、私が撮った画像から確認できた個体は幼鳥が多いです。そういうことからツミが出現しても高度が高かったり距離が遠かったりするとハイタカかなと思ってしまいます。しかし数が少ないとは言うものの、これも勝手な思い込みであり、先入観であり、いわゆる認知バイアスの一つなのでしょう。最近、マーリン通信の記事にバイアスに関することをけっこう頻繁に書いていますが、やはりバイアスに引っかからず、種の識別は正確でなければいけないでしょう。

 よぶんなバイアスはない方がよいに決まっていますが、めったに見ることのないツミを想定してかなり遠くて識別が難しいほどのハイタカ1羽1羽、あるいは同じ日に山の陰に隠れてすぐに再出現するハイタカを出現のたびごとに次から次と同じか別かなどと識別しているとそれだけで半日で100回とか200回も個体識別をしなければならなくなって結構時間もかかりますし、かかった分だけ飛行技術や生態の観察がおろそかになってしまいます。推定で「さっきの個体だろう(10秒前に樹木の陰に入った個体だろう)」で済ませてしまうことが多くなります。ほとんどの場合、それで間違いはないでしょう。

 ですから、このような認知バイアスがあること自体はある意味でひじょうに効率的で、都合が良いです。一般に鳥は季節と環境によって生息する種が限定されますので、こういう環境でこの時期ならば、こういう種がいそうだということが分かります。そして、現れた種をしっかりと観察して、正しかったか間違っていたかと判断することになります。何か違和感がある時はたいていは異なった種です。こういうことの繰り返しになることが多いです。そういうバイアスはそれなりの意味を持ちます。

 しかし、かと言って出現したツミをハイタカとしてしまうわけにはいかないので、結局、出現のたびごとに種の識別と個体識別をしなければいけない場合があります。4羽のハイタカ(仮に個体A,個体B,個体C,個体Dとする)が次から次へとハンティングを繰り返すと、今見ている個体は個体Aで、山の陰に入ったが山の陰から現れたのはともに同じ個体の個体C、急降下していったのは個体Dだ、などとその都度その都度識別する必要があります。こういうことをたった1時間でもしていると、くたくたになります。だから、できる限りの正しい推定で、「さっきの個体だ」とすれば、それでほぼ間違いはないし、疲れもぐっと少なくなります。

 「そんなに一生懸命個体識別しなくてもいいよ」という声が聞こえてきますが、ハイタカの場合は雌雄で体の大きさが極端に違いますから、狩りの仕方にしても雄と雌では別種くらいの違いがあります。ですから、その都度の雌雄識別はやはり必須で、結果的に忙しいです。そういう忙しい時に限って何か事件が起こり、ついついバイアスの罠に引っかかってしまい、ツミをハイタカと誤認してしまいます。きついですが、克服しなければいけないでしょう。

(Uploaded on 1 February 2023)

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ツミのモビングで コウノトリが体勢を崩す


 2020年10月下旬のことです。私はあるタカ渡り観察ポイントでハイタカ属の渡りを観察していました。すでにサシバやハチクマは渡る時期が終わり、飛んでも稀に1羽出るかどうかという数です。ハイタカ属とノスリの渡る時期になっていました。午前中の5時間15分の観察で、オオタカ4(A1,J3)、ハイタカ15、ツミ21、ハイタカSP2、ノスリ41、ミサゴ2、トビ6+が出ました。このうちのハイタカ2羽は2羽とも胸にくっきりとした縦斑があり、腹や脇に横斑があって体下面がツミ幼鳥の模様に似ていて、少し紛らわしい個体でした。小鳥類はイスカの10数群200羽ほどが飛んで、肉眼でも青空にきれいな赤と黄色の点々を見ることができました。

 そんな中、1羽のコウノトリが現れました。(自宅に帰ってから)足につけられたカラーリングから、出生地や愛称が確認できました。翼を目一杯広げて悠然と飛んで私の立っていた地点へ向かって来ましたが、そこにツミが現れました。ツミの足がコウノトリの体に触れるような、あるいは触れる寸前かという状態で、Vの字のような急降下・急上昇の飛行を何度もして、繰り返しコウノトリをモビングしました。残念ながら、ツミが足を出している瞬間の画像は撮れていなかったです。


モビングするツミと体勢を崩したコウノトリ 愛知県 10月 若杉撮影

 

 最初、コウノトリは左の画像のように悠然と飛んでいました。2枚目のように、ツミがモビングを何度も繰り返すうちに、ある時、コウノトリが翼を少し縮めながら大きく揺らしました。羽ばたいたというよりも翼をすぼめるようにしながら翼を揺らして、次列風切のあたりが写真のようにふわっと上下したという感じです。3枚目のように体が大きく傾いて、傾いたまま滑空していき、高度を下げて姿を消しました。姿勢を立て直すことなく、私の視野から完全に消えるまでずっと傾いたままでした。翼を傾けて弧を描きながら降下するなら、それはよくあることなので分かりますが、そうではなく、傾けたままでまっすぐに正面に降下したので少し違和感を覚えました。ツミの攻撃は執拗で、その勢いはかなり強く感じましたが、コウノトリがどの程度のダメージを受けたのかよく分かりません。

 ツミやハイタカはしばしば自分より大きなタカ類やサギ類などにモビングを繰り返します。中でもツミは体が小さいながらも、気の強さという点ではタカの仲間の中ではピカイチで、ハイタカ以上に自己主張を前面に強く出してきます。江戸時代の鷹匠言葉では、「しゅわみが強い」または「しわみが強い」という言い方をしていたようですが、その語源はよく分かりません。

 モビングするツミは幼鳥を多く見かけますが、愛知県で見るツミはその多くが秋の渡り途中の個体で、10月はそもそも幼鳥の比率が高い(特に雄成鳥は11月になるまではあまり見かけない)ので、成鳥よりも幼鳥のほうがよくモビングするのかどうか、そういうことが言えるほどのデータは得ていません。

 キジバトや小鳥を捕食しようと追いかけて人家に飛び込んでくるタカはたいていツミです。時々、ハイタカも同様な報告例がありますが、ツミよりは少ないです。オオタカは鳩小屋やニワトリ小屋、倉庫などに突っ込む事例が多くありますが、人家の室内に突っ込むことはあまり多くないようです。ツミ、ハイタカ、オオタカともにそういう事例の多くは幼鳥です。

(足を出すことについて)

 オオタカやハヤブサが獲物を襲うところをよく見ますが、足を出している時間はほんとうに短くて(特にオオタカは短くて)、肉眼では足を出しているのか出さなかったのか分からないほどです。1秒10コマの連写で撮影しても、そのうちの1枚に足が出ているコマがある程度で、つまりかなり短い時間しか足を出さない、または捕獲の直前にしか足を出さないといえます。一方で、オオタカと同じハイタカ属であるハイタカは長時間足を出したままで急降下することが多いです。足を出すことで体全体の姿勢を制御したり、スピードや方向を補助的にコントロールしていると推測しているのですが、実証できるようなデータはないです。ツミはどちらかというとオオタカに近く、足はあまり長時間出さないほうです。同じハイタカ属でも、3種3様で、性格や飛行、狩りの方法などにかなりの違いがあります。 

(Uploaded on 2 December 2021)

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ツミが逃げた!


 愛知県でツミを見かけることは秋の渡りを除くと意外に少ないです。ハイタカの渡りが終わってしまった12月頃や3月下旬のサシバがそろそろ来るだろうかという時期にはちょくちょく見かけますが、1~2月の厳寒期にはあまり見かけないです。野外へ出る日数が今以上に多くなれば見る機会も増えるかもしれませんが、厳寒期にツミを見かけるのは1年でせいぜい2回ほどです。

 2019年2月のことです。オオタカの営巣を観察していた時、上空やや高いところを飛ぶツミ幼鳥を見つけました。ごく普通の羽ばたきで東から西に向かって水平にやや速く飛んでいました。カメラのファインダーで追いながら見ていると、ツミは突然、体を垂直に立てるように体勢を変えて、急ブレーキをかけるようにスピードが遅くなりました。そして背面飛行の状態になって、急降下していきました。下の画像です。急ブレーキをかけ始めてからシャッターを押し始めました。画像1の直前と画像4と6以降はピントが甘かったので(残念ですが)消去してしまいました。


急ブレーキをかけた後、背面飛行で急降下するツミ 愛知県 2月 若杉撮影

 

 このツミはどうしたんでしょうか。近くにハヤブサは飛んでいませんでした。営巣初期のオオタカ♀の「キャッキャッキャッキャッ」や♂の「キッキッキッキッ」が頻繁に聞こえてきましたが、この時上空には飛んでいませんでした。ツミが獲物を捕る時にはこんな上空でこんな急ブレーキは必要ないだろうというほどの急ブレーキでしたし、かといって近くにパートナーがいるような雰囲気もありませんでした。こういうことを一瞬のうちに想像しながら降下するツミを見て、再び上空に目をやるとツミと鉢合わせをするような方向からオオタカの♂成鳥が力強く羽ばたいて飛んできました。私の立っていた位置からは目の前の竹林がじゃまになってオオタカの姿が見えなかっただけで、ツミは正面から猛速で飛んでくるオオタカに気付いて急降下で逃げたようです。

 江戸時代、ツミはタカ類の中でもっとも「しゅわみ」が強いタカといわれていました。しゅわみとは気の強さ、闘争心のことで、自分よりも大きな体のキジバトを捕らえようとしたり、どんな大きなタカにも臆せず向かっていくというような意味を表します。繁殖期で巣や雛を守らなければならない時期はどんな邪魔者にでも向かっていくのですが、やはり厳寒期はそこまでする必要がないので、習性がちょっと違うかもしれません。

 ツミはやはりオオタカが怖いのです。ちょっと気を許すと捕らえられて食べられてしまいます。ましてや正面から向かってくるオオタカに対しては背面急降下をしてでも逃げなければならない、あるいは逃げた方が得策のようです。私がオオタカに気が付いた後のツミがどういう行動をしたか興味がありましたが、竹の多い雑木林に入ってしまったか、雑木林の向こうに飛んでいってしまったようで、残念ながら見失ってしまいました。オオタカとツミの距離が離れてしまったので、一人だけで両方を同時に見ることはできなかったです。こういう時はやはり二人で観察するとよいです。

 愛知県ではツミの繁殖例がひじょうに少なく、私が名古屋市およびその近郊で繁殖のようすを観察することができたのはたった4回(4年)ですが、今まで頭の中でうっすらとそれは愛知県にツミの天敵となるハヤブサやオオタカが多いからだろうと思っていました。しかし関東地方ではオオタカがけっこう多いにもかかわらず、ツミが(それなりに)数多く繁殖しています。愛知県でツミが少ない理由やハイタカがまったく営巣していない理由をいくつか推定して、それを一つずつ裏を取って確認したり、逆に否定したりすればよいのですが、種間関係が複合的に絡み合って単純ではなくて、しかも観察回数が十分にとれなくて、結論はいつも持ち越しです。何かにつけてそうですが、現象の理由というものは簡単には(一概には)言えないようです。したり顔で「これはこういう理由でこうです」などとは口が裂けても言えません。

(Uploaded on 23 November 2019)

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ツミ 同時に15羽が旋回上昇


 前々回は「ハイタカ 同時に10羽・8羽舞う」という題で同時出現のハイタカの数について書きましたが、今回はツミ15羽の同時出現についてです。

 ツミが同時に15羽出現したのは、愛知県内のタカ渡り観察ポイントで、2016年10月30日の8時55分頃のことです。イカルやアトリ等の小鳥の群れが何度も渡っていたので、このツミの群れも最初は肉眼で見ながら、「この群れは何かな」、「あれっ、旋回しながら飛んでいるから、ちょっと動きが変わっているな」と思って双眼鏡を向けてみました。するとツミの群れでした。数えてみると15羽でした。それも狭い範囲に固まって旋回上昇していました。他のツミにちょっかいをかけたりしながら飛んでいる個体が多かったです。

 キヤノン600mmF4しか持っていなかったので、なかなか全体が入るような写真は撮れませんでしたが、下の写真にはなんとかぎりぎりで6羽が入っています。画像を拡大してみたら、15羽のうちに♂成鳥が1羽見られ、♀成鳥かなと思われる個体もいましたが、多くは幼鳥でした。旋回しながら見る見るうちに高度を上げて、三々五々、ほぼ真西へ渡っていきました。


ツミ同時に15羽のうち、撮影できた6羽  2016.10.30 Canon600mmF4 by Wakasugi

 

 この日は午前6時40分から12時ちょうどまでの観察でしたが、ツミはこの15羽の群れの他に18羽出て、計33羽でした。18羽とも群れではなく、最大2羽同時に出た程度で、他は単独での出現でした。


別の日のツミ Accipiter gularis ♂成鳥   2016.10.18 Canon400mmF5.6 by Wakasugi

(Uploaded on 1 January 2017)

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日本のタカ類 環境省レッドリスト(4) リュウキュウツミ


 ツミ Accipiter gularis  (Temminck & Schlegel, 1844)には、亜種ツミ Accipiter gularis gularis  (Temminck & Schlegel, 1844) と、亜種リュウキュウツミ Accipiter gularis iwasakii  Mishima, 1962 の2亜種が日本にいます。リュウキュウツミは、先島諸島の八重山列島(西表島、石垣島など)に留鳥として棲むといわれています。2006年・2012年版の環境省レッドリストでは、絶滅危惧IA類(Critically Endangered,CR)ほどではないですが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いとして、絶滅危惧IB類(Endangered, EN)に指定されています。亜種小名の iwasakii は採集者の岩崎卓爾氏から、命名者名の Mishima は三島冬嗣(みしまとうじ)氏から付けられました。

 図鑑などの説明によると、亜種リュウキュウツミは亜種ツミに比べて、
〇 背面の色や体下面の斑が亜種ツミよりも濃い。
〇 成鳥の横斑や幼鳥の縦斑・横斑が亜種ツミよりも太くて間隔が広い。
〇 オス成鳥の虹彩の色が亜種ツミの暗紅色よりもうすく、橙色に近い。
〇 翼式が亜種ツミと少し違うという説がある。そうではないという説もある。

 RDB (Red Data Book) の情報として、環境省の絶滅危惧種情報検索ファイルには、
【摘要】として、
 「ツミ( Accipiter gularis )の亜種。八重山諸島に留鳥として分布する小形の猛禽類である。林内で営巣し、小鳥類を採餌する。生息数や分布については、よくわかっていない。」と、記述されています。同じく、

【形態】として、
 「全嘴峰長17.8mm、翼長160mm、ふ蹠長52mm、尾長127.5mm(山階鳥類研究所標本:幼鳥オス)。亜種ツミ( A. g. gularis )と比較すると翼長が短く、風切羽の長さに相違点が見られる。」と、

【分布の概要】として、
 「種ツミは東北アジアから南中国、フィリピンにかけて分布し、日本では留鳥として1年を通して見られるが、一部は越冬のため移動すると考えられている。本亜種は八重山諸島にのみ分布する固有の亜種で、渡りはしない。」と、

【生物学的特性】として、
 「本亜種の生態はほとんどわかっていないが、亜種ツミとほとんど変わらないと考えられる。平地から山地の林にすむ。マツなどの高い枝に、枯枝で皿型の巣を作り、2~5卵を産む。主に小鳥を捕食するが、昆虫や小形哺乳類も食べる。」と述べられていますが、「亜種ツミとほとんど変わらないと考えられる」と断定してしまってよいかは疑問です。

【分布域とその動向】として、
 「八重山諸島の石垣島、西表島に留鳥として分布する。
 繁殖期分布情報:サブメッシュ数:0(第2回自然環境保全基礎調査)
 越冬期分布情報:2次メッシュ数:6、3次メッシュ数:10(第3回自然環境保全基礎調査)」と、

【個体数とその動向】として、
 「生息個体数についての資料はなく、個体数変動については不明である。」と、

【生息地の現況とその動向】として、
 「生息地となる森林は、農地開発やレジャー開発により減少傾向にある。」と、

【存続を脅かしている原因とその時代的変化】として、
 「農地開発やレジャー開発による森林伐採(11)は、生息地を減少させる。」と、

【特記事項】として、
 「資料が少なく生態も不明であるので、さらなる調査、資料収集が望まれる。」と、

【保護対策】として、
 「1992年には西表島の中央山岳部を中心に国設西表鳥獣保護区(3,841ha、うち特別保護地区2,306ha)が設定された。」と、記述されています。

【参考文献】として、
 1. 三島冬嗣,1962.南部琉球諸島のツミ(新亜種)とクロアジサシの亜種名について.鳥,17: 220-222.
 2. 森岡照明・叶内拓哉・川田隆・山形則男,1995.図鑑日本のワシタカ類.文一総合出版,東京.631pp.
の2本があげられています。

なお、1.の三島冬嗣氏の『鳥 第17巻』(1962)短報は、【 三島短報 】で、見られます。

さて、次のようにいくつかはっきりしないことがあります。

1 本当に亜種かどうかという疑問があります
 図鑑『日本のワシタカ類』では、ツミとリュウキュウツミは同じである、つまり、亜種の存在を認めていないという『日本鳥類大図鑑』(清棲 1985)の記事を引用紹介しています。

2 ミナミツミなど他種の亜種の可能性もあります
 ツミの亜種ではなく、ミナミツミ Besra (別名 ナンバンツミ)の亜種の可能性があるかもしれません。ベスラは一度だけ伊良湖岬で見たことがありますが、胸の縦斑と横斑が太くてその間隔がひじょうに広かったです。

3 そもそも別種の可能性もあります
 もしも、ほんとうに確実に翼式が異なるとすれば、これはかなり大きな違いですので、そもそも種が違うことになるのかもしれません。そうなったら新種かもしれません。今のところ、まだデータ不足のようです。

 リュウキュウツミについては、これからの地元の研究者の努力によるところが大きい気がします。生態写真を多く撮ったり、繁殖の確認をしたり、留鳥と越冬鳥を区分したり、もし死体が見つかれば詳しく調べたり…ということを、繰り返す必要があります。または、環境省か沖縄県、あるいは民間の鳥類研究所が専門家のPTを作って一気に解決するかです。遠くに住む私たちにはなかなか研究できない面があります。

(Uploaded on 11 July 2012)

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飛翔中のツミ幼鳥の♂♀識別表


 飛翔中のツミ幼鳥の雌雄識別はひじょうに分かりにくいです。識別したいと強く願いながらも、ほとんどの場合は高空過ぎて、私にも判別できないことが多いです。しかし、たまに低くを飛ぶ時には、雌雄が分かることがあります。そこで、少しでも分かりやすいように、どこに目を付けたらいいのかを中心に考え、私見を交えて一覧表にしてみました。

 表は、まだ作成途中です。皆さんに見ていただき、修正・追加していきたいと思っています。ご意見をください。よろしくお願いいたします。

飛翔中のツミ幼鳥の♂♀識別表 Ver.1.0(マーリン通信)
視  点 ♂成鳥 ♀成鳥 ♂ 幼鳥 ♀ 幼鳥
体の大きさ     メスに比べれば小さく、近くを飛んでいる時にはその小ささが分かることがある。また体が軽く感じることがある。 オスに比べれば大きく、近くを飛んでいる時にはその大きさが分かることがある。また体が重く感じることがある。
頭の大きさ     メスに比べれば、相対的に、頭でっかちに感じる。 オスに比べれば、相対的に、頭が小さく感じる。
脇の横斑     間隔が粗く、横斑が太い傾向にある。 オスに比べれば、横斑の間隔が狭く、横斑そのものが細いように感じる。
虹彩の色     11~12月に渡る個体の中には、虹彩が少し茶色っぽく見えるものがでてくる。年を越して、1月末になると、かなり虹彩がはっきりと赤っぽくなってくる。 黄色。

 

 今後、さらにしっかりと観察をして、分かりやすいものにしていきたいと考えています。なお、11月の虹彩の色については、B-B Birder さんにヒントを教えていただきました。

(Uploaded on 24 October 2008)

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越冬する ツミ


 愛知県でのツミの生息は、「少数が繁殖、多数が渡りで通過、少数が越冬する」という状況です。ツミの渡りは9月から11月にかけて多く見られます。11月初旬の「立冬」後はノスリやハイタカが中心で、「初冬のタカ渡り」と私は呼んでいますが、ツミもけっこう渡ります。12月初旬もノスリ、ハイタカが少数渡り、これも、「師走のタカ渡り」と私は勝手に名付けていますが、ツミはほとんど渡りません。12月の中旬になるとノスリも含め、タカの渡りはぐっと少なくなり、居付くべきタカはほぼ居付いてしまいます。


記事とは別のツミ Accipiter gularis 幼鳥 2007年11月、愛知県にて若杉撮影 

 

 さて、2007年12月24日、県内の山間部のクマタカを見に行った時に、偶然ツミを見かけました。この時期なら、まず、地付きのツミと思われます。11時40分、私から十数メートルの距離のフェンス上に、飛んできてふわっととまりました。大きさはヒヨドリか、ヒヨドリよりもやや大きいかなというくらいでした。20秒ほどじっとしていました。胸に縦斑があり、緑色の蝋膜がこんもりと盛り上がっていました。オス幼鳥でした。虹彩は、1~2月には少しずつ赤味を帯びてくるはずですが、まだ12月だからでしょうか、黄色のままでした。

 13時10分には、たぶん同一と思われる個体が、山の斜面を飛んでいる姿が見られました。ツミらしくなく、浅く羽ばたいて山の斜面を滑空していました。獲物を探す時はいつもの深い羽ばたきは必要がないのでしょう。ハイタカが飛ぶようなふわふわとした感じの飛び方でしたので、一瞬ハイタカかなと思ってしまいました。しかし、そのすぐ後に、思い切り強く羽ばたき、体を左下に傾けて翼をすぼめ、猛スピードで樹間に突っ込んでいきました。獲物が捕れたかどうかは分かりませんでしたが、その後、林の中から出てくることはありませんでした。

 毎日野鳥を見ている方はしばしば越冬ツミを見ていらっしゃることでしょうが、仕事があって、週1でしか山に入れない私にとって越冬ツミは珍しく、見ない年もあるほどです。

(Uploaded on 1 January 2008)

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原生林で聞いた ツミ の声


 2週間ほど前に書いた記事、「タカ類の観察法と小鳥類の観察法」で、タカを観察する時はあまり林の中に入らない方がよいというようなことを述べました。少々断定的な言い方でしたが、これにはもっともな部分とそれほどでもない部分があります。この記事の中の、「以前、5月初旬に原生林の林道を歩いていて、運良く目の前の枝にツミがとまってこちらを向いたことがあります。幼鳥なのに虹彩が……」と書いた場所とまったく同じ場所で、思いがけない声を聞きました。4月30日午前6時20分頃でした。キィーキィキキッキッキッという尻下がりな鳴き方で、頭上で、前方で、後方で、と続けて計3回聞きました。姿は見られませんでした。秋の渡りの時や、営巣地で食料を運んでくる時によく聞く鳴き声です。特に珍しい鳴き声ではないのですが、ちょうど18年前と同じなつかしい場所で思いがけず声を聞くことは、うれしいものです。

 この日、原生林に向かう途中、国道153号線で、車にはねられたと思われるテンを見ました。黄色が鮮やかで、走行中も、キテンだとすぐに分かりました。木の枝上を生き生きと走り回るテンを見てみたいものです。


車にはねられたと思われるテン

(Uploaded on 5 May 2005)

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ツミ と ハイタカ の羽ばたき


 2004年10月11日、愛知県内の海岸部でタカの渡り観察中のことです。ほとんど雲のない晴れの青空で、暑い日でした。一羽のツミかハイタカらしきタカが山頂付近に現れました。初めは斜め横からしか見えず、翼の先や模様が見えませんでしたので、その羽ばたき方を見ていました。羽ばたきは深くなく、2~3回パタパタと羽ばたいて、スーッとグライディングするということを繰り返していました。この羽ばたき方から、すぐにハイタカだと勝手に決め込んでいました。(左目次の「ハイタカ」のフレームを参照してください)

 やや近づいてきたら、ハイタカほど尾羽は長くないし、翼の先はハイタカほど丸くはないので、「アレ?おかしいな」と思いながらも、「でもこの飛び方はハイタカだ」とまだ思いこんでいました。かなり近づいてきて、翼の先のとがり方や、尾羽の長さが分かってくると、やはり私の判断はまちがっていて、このタカはハイタカではなくツミでした。頭の真上を通った時に、胸の縦斑と脇腹の太い横斑が見え、最終的にツミの幼鳥(たぶんメス)と確認しました。こんな飛び方のツミは病気か、疲れているのか、体力を消耗しているのか、何なんだろうと思っていると、いったん海上へ出た後、再び戻って頭の上で旋回し、山の方へ帰って行きました(本気で病気だと思っているわけではありませんが…)。

 ハイタカのように急降下をするツミ(ハイタカほど急激ではないです)や、ツミのように激しく深い羽ばたきをするハイタカを見たことがありますので、ツミがハイタカのような羽ばたき方をすることもおかしくはありません。急降下や羽ばたき方だけでツミとハイタカの識別をしてしまうことは危険ですね。識別は慎重にしなくては…と思い知らされました。


この日のツミ(記事とは別個体) 

(Uploaded on 13 October 2004)

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ミナミツミ Besra と思われる個体を見ました


 2003年11月2日11時47分ごろ、愛知県伊良湖岬の恋路が浜で観察中、上空にハイタカ属の鳥が近づいてきました。ハイタカのメスほどは尾羽が長くないし、初列風切の先がややツミっぽくて、「ツミかな」と思っていました。だんだんとこちらへ近づいてきたので幼鳥かどうか確認しようと思い、胸の辺りのタカ斑をじっと見たら、ずっと腹のほうまでやや黒ずんだ太い縦斑が続いていました。びっくりしました。翼は次列風切が、やや幅広く感じられました。こういう個体は、今まで見たことがありません。

 私はこの個体については、双眼鏡(Leica 10×50)のみの観察でしたので、確認できたのはそこまでが精一杯でしたが、一緒にいた川田隆さんが双眼望遠鏡で確認されたところ、今までに川田さんが3回観察されたことのあるベスラ Besra 幼鳥だとのことでした。

 Besra(Besra Sparrowhawk または Asiatic Sparrowhawk) は 学名 Accipiter virgatus (Temminck,1822) で、ミナミツミとか、ナンバンツミといわれる種です。日本鳥学会の「世界の鳥の分類和名 タカ目」(日本鳥学会誌『鳥』vol32、No4)では「ナンバンツミ(南蛮ツミ)」となっています。一般にはミナミツミと言われています。

 私は Besra を見るのが初めてですので、自信を持って Besra であるとは断言できません。しかし、ツミくらいの大きさで、ハイタカ属の仲間の特徴を備えており、明らかにツミでもハイタカでもアカハラダカでもない鳥とは…。

(Uploaded on 3 November 2003)

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小形ながら最も気の強いタカ ツミ


 ツミは私にとって特別な思いのある鳥で、いつも意識をしています。いろいろ話題を提供してくれる鳥です。昔は日本中でも繁殖例がほとんどなかったのですが、今や市街地にまでどんどん進出し、名古屋市も含めて、各地で営巣が確認されています。断片的な記述ばかりですが参考にしてください。

名前 ツミとエッサイ

 標準和名がつく前は、雄に対してエッサイ(悦哉)、雌に対してツミ(雀鷂)と名前が付いていました。一部の書籍を見ると、「別種と思われて…」などの記載がありますがこれは間違いです。ちゃんと同じ種の雄と雌と認識されていました。

 英語で牛を総称してcattleといいますが、牝牛はcow 、雄牛はbull、雄牛で去勢されたものはox (複数形 oxen)です。鶏は、めんどりは hen、雄どりはcockといわれます。これらの名は家畜として実用目的で分けたもので、雄と雌などを区別しておいたほうが何かと便利だからです。ツミの雌をツミ、雄をエッサイと呼んでいたのも同じ理由です。昔の鷹匠が使ったのはツミだけで (これもそんなには多くなかったのですが)、エッサイは鷹狩りにはまったく使われませんでしたので、呼び名を分ける必要がありました。

虹彩(虹の彩りとは良い名称、英語でもiris)の色

 雄幼鳥の虹彩は、生まれた翌年の1月にはもうすでにオレンジ色がかってきます。2月にはかなり赤色っぽくなります。88年5月9日に愛知県の段戸山裏谷で目の前の枝にひょんととまったオス幼鳥の虹彩はもうすっかり赤色でした。

ろう膜の色

 野外で元気に生活しているツミのろう膜は緑色~黄緑色で、隆々と盛り上がっています。はく製にしたツミのろう膜は黄色になってしぼんでしまいます。ですから、はく製のデータはいろんな意味で要注意です。図鑑のろう膜の色を注意してみるとおもしろいです。緑色のろう膜を黄色に描いている人は、実物を見ずにあるいは野外観察をせずに、剥製でも見ながら描いているのでしょうか。

夏と冬

 以前は冬場見ることは私はありませんでしたが、繁殖例が多くなってきたからでしょうか、愛知県でも、冬場の情報がよく入るようになりました。また、5月に日本へ渡ってきたばかり(と思われる)個体群の様子なども聞きます。数羽のツミが林縁部に集まってじっとしていたそうです。

飛翔中のツミとハイタカとの区別

 日本野鳥の会愛知県支部報の1984年9月号5ページに記述しましたが、再録して要点を述べると、

  ① ツミは体全体に対して、ハイタカよりも頭が大きく見える。
  ② ツミはハイタカよりも尾が短い。
  ③ ツミ幼鳥の胸には縦斑が見られる。胸が縦斑のハイタカもいるが、やや少ない。
  ④ ツミは羽ばたきがハイタカより深くて速い。ハイタカのような羽ばたきが浅くてひらひらとした飛び方ではない。
  ⑤ ツミは体がハイタカより軽そうに見える。

  (後日注 … 32年後の2016年の注)
 ここに書いた5つの視点は、かなり大ざっぱな書き方です。30年ほど前まではよい資料がなくて、ここまで書くのがやっとでした。今はツミとハイタカの細かな識別点がしっかりと整理されています。

当地方での繁殖

  1983年に愛知県豊田市で巣を見て以来10年間のブランクがありましたが、1993年からは3年続けて名古屋市内で営巣のようすを見ることができました。

バンディングによる回収例

  1974.11.01 富山県(雄幼鳥)→ 11.14 鹿児島県西表島
  1990.10.27 伊良湖(雌成鳥、倉橋氏放鳥)→ 1991.4.23 鹿児島県奄美大島

 現時点ではこの2例が知られています。

(Uploaded on 30 October 1996)

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