踏み込むと腰まで埋もれてしまう深雪
の中を黙々とラッセルする。しかし
それも標高を稼ぎ、傾斜もますほど
積雪も少なく岩肌を見せるようになる。
強風と勾配は雪すら一所にとどめ
させてはくれない。
そして夕刻、ふと見上げると、
ついに奴がその巨大な鋭い
顔を見せていた。
翌朝、天候は上々だ。
しかしこの晴天も昼前には急変
するであろう。山の経験則である。
早朝から二人は槍の肩にとりつく
こととなった。