槍ヶ岳山荘迄は半分体力任せで登り詰めた感

もあったが、ここから穂先まではそうも

いかない。我々は互いをザイールで結び、

一方が三点確保しつつ登板するときは

一方が確保する原則を貫いた。

雪に強いアイゼンも岩場では却って

ぎくしゃくする。我々は登山靴のグリップに

任せた。

そしてついに手に入れたものは、

見事な絶景である。それが全ての

方向で。冬山では奇跡的な快晴。

彼らは立山、剣岳、鹿島槍といった

三千メートル級の山々を全て従えて

いた。

まさか月子ちゃんも槍の頂点に

立てるとは思ってもみなかったで

あろう。しかしこの強風では

いつまでもここに留まることは

許されない。一等三角点に供えたりんご。穂高連峰では遭難者を捜索する

ヘリが舞っている。

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