kenkyuronbun

研究論文に チャレンジ
研究授業を論文にまとめてみよう

1 研究授業を1時間やったから、論文書ける?・・・ちょっと待って、そういうわけでもありません。

(1)そもそもなぜ論文にまとめるのでしょうか?
 論文にまとめなくってもいい、でも、「まとめる」というたいへんな作業をするからこそ見えてくることもあるのです。研究授業でがんばったら、生徒も生き生きと活動して成果をあげることができた。「がんばれば、できる。」これでは、自分がまた授業をする時に、また他の先生が同じ実践をやってみようとする時に、参考になりません。「こういう手だてをすると、こんな生徒に、こんな効果をあげることができる。」それが明らかになれば、自分にとっても財産となるし、他の先生にも参考になることでしょう。そのために、ちょっとがんばって論文にまとめてみたいですね。

(2)オリジナル単元になってますか?
 指導案を見ると、単元名が「Unit 6 The Story of Silent Night」みたいに教科書の単元名になっていることがよくあります。でもそこから脱却して、オリジナル単元を構想したいですね。「クリスマスって何?」という単元を作り、教科書の本文で「きよしこの夜」のできた経緯を学び、クリスマスがどんな意味があるのかをALTとの会話で探り、日本の伝統行事(たとえば正月)などと比較したレポートを書かせ、それを見せながらALTと会話をする、などと単元を構成していきます。教師が単元を構想しながら、どんな活動が展開できそうか、わくわくするような単元にしたいですね。

(3)資料(データ)がないと考察できません
 たぶん、一番難しいのがこれです。研究授業をしたから、論文にまとめてみよう、と考えたとき、多くの場合、単元前のデータがないので、生徒がどう変容したか証明できなくて困ってしまうわけです。客観的に証明するためには、数字で単元に入る前と単元終了後のデータを取っておく必要があります。研究授業をやる前から、もっと言うとオリジナル単元に入る前から、どうやってデータをとるのかを考えておいて、確実にデータを残していくことが大切になります。
 データは、アンケートなど数字で表すことができるものだけではありません。単元に入る前の(単元1時間目の)生徒の思い(作文)や、毎時間の感想、単元終了後の生徒の思い(作文)も大切ですし、授業記録としての写真撮影・ビデオ撮影・音声の録音なども有効でしょう。研究授業が単元中に何回かあると、直接見てもらう観点を決めておいて、たとえば抽出生徒の動きなどを他の先生に記録してもらうことも良いデータになります。

2 研究主題(タイトル)を考えよう

例) 実践的コミュニケーションに意欲的に立ち向かう生徒の育成
     ーポートフォリオを用いた英語学習方略の体験を通してー

 ※研究のねらい・目標が含まれているか
  研究の対象・領域が示されているか
  研究の手だて・方法が現われているか

3 教育論文の形式を考えてみましょう

例)目次
1 主題設定の理由
2 研究の概要
(1)研究の仮説
(2)研究の構想
(3)検証方法
3 研究の実践
(1)授業の実際
(2)検証と考察
4 まとめと今後の課題

それぞれの項目、次のようなことに留意しよう
1 主題設定の理由
※3段落構成が良いとされています。
   1段落目・・・社会の要請(こんな力が必要だと言われている)
   2段落目・・・生徒の実態(目の前の生徒は、こんな状態だ)
   3段落目・・・教師の願い(だから、私はこういう授業をしたい)

2 研究の概要
(1)研究の仮説
※3つの構成要素が含まれている仮説になっているか。
   1、○○おいて・・・場・内容等
   2、○○を○○すれば・・・問題把握・手だての工夫
   3、○○になるであろう・・・期待できる生徒の変容
 1つか2つ程度にしたい。あとで、それぞれについて検証と考察をすることになる。
 あまり大きな内容であったり、大きな能力を扱うと、短い単元で変容がわかりにくい。
 「いろいろな手だてを講じたら、まあまあこんな力がついた」ではだめ。
 具体的に、「こういう手だてを講じたら、こういう力が伸びた」と証明しやすい内容を。

(2)研究の構想
※単元構想図などを示し、その内容を説明するとわかりやすい。
 読む人のことを考えて、配慮することが大切。

(3)検証方法
※全体の変容と個の変容を追いたい
 全体:単元開始前と終了後のデータの比較
 個:抽出生徒を決めておいて、その生徒の学びの変容を追う
   ただし、抽出生徒は都合のよい生徒にならないように、選定の理由を
   例)話す活動に積極的な生徒と消極的な生徒
     英語の能力が高い生徒とそうでない生徒
     この2つを組み合わせると、クラスを4つのグループに分けることができる。
     抽出生徒A=話す積極的+英語能力高い
     抽出生徒B=話す積極的+英語能力低い
     抽出生徒C=話す消極的+英語能力高い
     抽出生徒D=話す消極的+英語能力低い
     こうやって4人の抽出生徒を決めれば、それらの生徒は各グループの代表者
     その生徒の変容=そのグループの変容と考えることができる。
     なお、実名や本当のイニシャル、A男・B子など性別が分かるものは、避ける。

3 研究の実践
(1)授業の実際
※全体の様子、抽出生徒の様子を授業の流れにそって記述していく
 授業や生徒の動き(心の変容など)がイメージしやすいストーリー仕立てが有効。
 写真や生徒作品、使った教材などで授業がイメージしやすくなる。
 資料を縮小コピーする場合は、文字が読める程度にとどめたい。読めないと意味ない。

(2)検証と考察
※仮説が正しかったかどうかを検証する。
 分量としては、原稿用紙30枚の論文であれば、10枚以上は、この項目で使いたい。
 具体的なデータの数字の変容や、毎時間の生徒の感想、研究授業の記録など使う。
 いつも「仮説は正しかった」と結論づけるばかりが良い論文ではない。
 「仮説があてはまらない」と結論づけた場合は、その理由や別の考え方を紹介したい。

4 まとめと今後の課題
※主題に関わることで、明らかになったことをまとめ、さらに今後追究すべきことに言及。

4 数字で生徒の実態をとらえることから始めたい

シンプルに次のようなフォーマットで研究をとらえてみよう。

(1)生徒の実態
※これを数字@で
あらわしてみる。
(2)求める生徒像
※数字@をどう変化させて
数字Aにしたいか。
(3)仮説・手だて
※数字@を数字Aに変化させるためには、
どんな手だてを講じればよいのか。その理由はなぜか。
(4)変容の様子
※実際に授業をしてみて
数字@がどうなったか
調べてみる。
(5)考察と今後の課題
※数字@は数字Aに
なったのか、その理由は。
次の課題は何か。

(1)すべて「生徒の実態」を数字に表してみることから、研究は具体的になっていく。
例)「ALTとあまり会話できない」という実態のとらえでは、あいまいすぎて、次に進まない。それを「ALTとの1対1の会話を1分間行った場合、ALTの発話が何文で生徒の発話が何文かを調べてみた。するとクラスの平均がALT20文、生徒5文であった。」と具体的な数字で記述してみる。
実際にテストをしてみて、どんな数字がでるのかを記録しておく。。

(2)この「20」「5」という数字があると、次のステップに進んでいける。では、この数字をどうしたいのか。
例)「ALTの発話より生徒の発話が多い状態にしたい。」(=求める生徒像)
これで単元の目標が具体的に定まる。

(3)それでは、それを達成するためには、どんな手だてを講ずればよいのか考えてみる。
例)手だて@=暗記用例文集を作成し、暗唱させる。
  手だてA=ペアのチャット練習を行い、コミュニケーション・ストラテジーの練習をする。
  手だてB=単元中に3回、ALTとの1対1の会話を行う。
これらのアイディアを考えたら、できるだけ多くの先生とディスカッションしてみるとよいl
他の先生からもアイディアをもらい、オリジナルな活動も工夫し、有効そうな手だてを選んでいく。

(4)授業を実践してみると、結果がどうなったのか気になってくる。単元前に行った同じ状況でテストをしてみる。
例)単元前が「ALT20文、生徒5文」だった。単元後は、「ALT10文、生徒11文」になった。

(5)でてきた数字の変化を見て、仮説が正しかったかどうかを確認する。
例)ALTより生徒のほうが発話量は多くなっているので、仮説は正しかったと言える。
では、どの手だてがどんな生徒に対して有効であったのかを考えることになる。
手だて@は英語能力の低い生徒に有効であったとか、手だてBは話すことに消極的な生徒に有効であったとか、データを駆使して証明していくことになる。」
今後の課題としては、さらに伸ばしたい生徒の実態があるのか、別の手だてを試してみたいのか、さらに別の単元で同じ手だてで深く追究していきたいのか、方向性を示す。

5 教育センターで薦めるチェック・ポイント

長期研修等で教育センターで学ばれる先生方へアドバイスされている項目です。論文執筆の途中ならびに、完成したときに次のチェック・ポイントで確認してみてください。読み手に取って理解しやすい論文が良い論文であると思います。

□ 事実として書いてあることには客観性があるか。
□ 意見(考え)として書いてあることが、誰の意見かはっきり分かるか。
□ 文のならべ方は論理的な流れに乗っているか。
□ ひとり合点で説明を省いたために読み手をまどわせるところはないか。
□ 既発表の研究結果、資料、データとの比較検討はしっかりとなされているか。
□ 統計的な処理に誤りはないか。
□ 章・節は明確かつ適当な数か。
□ 章・節の表題は適切で、付してある番号は系統的か。
□ 用いられている図や表は適切かつ必要性のあるものか。
□ 一度読み下しても理解できず、読み返して初めて理解できる文が混ざってはいないか。

参考になるかどうかわかりませんが、左のカバンをクリックすると、私の過去の論文を読むことができます。