オナベは嘉手納基地監視台にて2000.10.2撮

拝啓国務長官様

コリン、またもや上院公聴会で有名になった君の「開いた口がふさがらない」という顔をしなくちゃならない羽目に陥ってしまったようだね。


米国海軍のホームページ
"http://www.chinfo.navy.mil/
navpalib/factfile/aircraft/air-ch53d.html"より

キャンプハンセンの海兵隊員諸士(http://www.okinawa.usmc.mil/)は

"FIRST TO GO, LAST TO KNOW"

という海兵隊のモットーに照らして良くやっているようだ。事故後も「作戦上最低限の飛行」ということでCH53Dヘリ6機は強襲揚陸艦エセックスに向かい、31st Marine Expeditionary Unit(第31海兵遠征部隊)は「都市型訓練施設」での訓練の成果を無事イラクで発揮することが出来そうだ。

そこへ川口順子さんからの電話である。以前やたらにケータイで電話をしたがる首相が日本にいて、「ブッチフォン」と呼ばれたが、今回の「グッチフォン」は君にとってはあまり有り難くはなかったのではないだろうか。

「軍人は万事戦場を規範とすべし」なんて悠長なことをいっている場合ではなく、バクダッドでは毎日米国の若者が戦死しているのである。しかも2001年9月11日以降、世界中で伝統的な戦闘地域と非戦闘地域の境界はなくなり、世界の全てが「非対称型戦争」という新しい形の戦いの戦場と化しているのである。キャンプハンセンもアジアにおける前方展開基地として、同じアジアの他の戦場と変わりなく期待通りの役割を果たしているのである。この際、多少の搭乗員の損耗は避けられないし、民間人に被害が及んでも「御気の毒」というだけで仕方の無いことである。これが戦争なのだ。ましてや今回にいたっては人的被害が出たわけでも無く、ヘリがちょっと乱暴に基地外に着陸し損なったというだけで、被害といえば基地に隣接する鉄筋コンクリート造の建物の壁をローターで叩いただけのもの、あとは植木が数本こげたというだけである。

しかし君は「開いた口がふさがらない」顔を隠し、沈痛な面持ちで「大臣の発言は深刻に受け止める。申し入れ内容は関係者に伝達する」「事故を受けた日米協力の重要性は理解している」と台本通り答えなくてはならなかった。なぜならばこれは我々日本人の戦争ではないのだ。聡明な君のことだから、十分承知しているとは思うが重ねて言っておこう。

これは我々の戦争ではない

君には分かっていてもおさるのジョージには分らなくて、「開いた口がふさがらない」顔をされるかもしれないが、彼に会った時に日本人が次のように言っていたと伝えてくれたまえ。

これは我々の戦争ではない

我が国にも貴国の軍事施設が沢山有って、鉄条網には次のように書かれているのだが、文中「施設」とあるのを「戦争」と言い換えてくれたまえ。「あっ、そう。立ち入り禁止なのね。だったらオラシランモンネ。勝手におやんなさい。」というのがわれわれの一般市民感情だと思ってくれて良い。59年前にはトージョーをやっつけてくれて我々は感謝しているのだが、あの時我々が学んだのは「トージョーが悪い」ではなく、「戦争が悪い」だったのだよ。その後、朝鮮戦争から今年にいたるまで、「戦争ね、邪魔にならないように他所でやってちょうだい。」というわけで、我々は繁栄を手にして来たのだ。


しかしまあ、今回は場所が悪かった。誰もが「起こるべくして起こった」と考えている。59年前には戦争が終わって「日本人は民主主義を、韓国人は戦争を、台湾人は戒厳令をプレゼントされました。」だったのが、沖縄だけは気候がハワイかグアムに似て、GIの海水浴にちょうどよく、ねーちゃんはきれいだ、ということでワイルドカード扱いだったのだね。「琉球民政府」といういかにもワイルドカードの看板を下ろしたものの、「無断立ち入りを禁ず」という看板は面積あたりの密度からすれば全国平均の数十倍になってしまう。GIもヴェトナム戦争の頃のように「有り金全部使っちま」おうとしても、円高で基地から出られない。金が無いので "FIRST TO GO, LAST TO KNOW" という海兵隊の馬鹿共は暗がりで女子小学生にまたがってしまう。と完全に迷惑施設化している。迷惑だけならともかく、危険極まりない、いいかげんに本土並みにしたらどうだ、という運動の標的が今回の普天間飛行場だったのだから、

これは我々の戦争ではない

と言いたくもなろうというものだ。大体、仏教徒のごときアジアの多神教の民は今回の戦争など、「私の神様とあなたの神様のどちらが正しいか」という発想から来ているとしか見ていない。我々は昔から「八百万の神々」をそれぞれに尊重する、というのに慣れ親しんでいるので、死海のほとり、イェルサレムなる村の「羊飼いの神」と「商人の神」と「金貸の神」の争いなど、どうもピンとこないのだ。 3人の男

「戦争やって儲けようぜ」というのは分かりやすいという点では手っ取り早い手段だと思うが、我々賢い日本人は君達のように自分で手を汚さないでも儲けられる、ということにも気付いている。「戦争ね、邪魔にならないように他所でやってちょうだい。」というわけで朝鮮戦争で儲け、ヴェトナム戦争で儲けて来たのだ。貴国の「おさるのジョージ一家」が「それはずるい」とねじこんで、とうとう59年の国禁を破って日本軍の海外出兵に踏み切ってしまったのだが、あれは現在の首相が「戦争ね、邪魔にならないように他所でやってちょうだい。」というわけで、のらりくらりと役割り分担を回避して来た先輩諸氏ほどの頭が無かったせいで、残念なことだ。

戦争をやらないで自分達が儲ける、というのは何も難しいことでは無いので御伝授しても宜しい。金だけ貰ってあとは適当に誤魔化しさえすれば良いのだ。先日は三菱自動車というのが民生用のトラックでヘマをやって新聞で叩かれているのだが、あれは三菱という企業グループの「政府予算を配分してもらえば何もしなくても食っていける。」という体質から来ているのだね。戦前の軍需産業出身であり、現在でも宇宙ロケット開発やら原子力発電やらを担当している連中はいずれも「政府予算を配分してもらえば何もしなくても食っていける。」という体質になっている。おかげで世界でもトップクラスの予算を貰いながら、いざとなると気象衛星の打ち上げに失敗して外国の商業ロケットに頼る、原子炉の配管は28年間ほったらかし、という有り様なのだが、自分の手を汚して他国民を殺すよりは気が効いている。

先物買いの連中がおさるのジョージ再選は無いとみて、原油の先物買いをしているようだが、これも戦争をやらないで自分達が儲けるということから行けばシロートである。おさるのジョージ一家にしてみれば「戦争をやらないとガソリンは1ガロン当り2ドルになっちゃうよ。」というわけで、中間選挙の尻押しにはなるだろうが、40年先か、60年先に石油資源が枯渇するまで戦争をやり続けるのだろうか。我々日本人は賢いので、今までに石油資源が枯渇するまでにしのばなければならないエネルギー節約の訓練をしつつ儲ける、というのをやって来ている。君の国ではガソリンが1ガロン当り1ドル80セントになれば国民はパニック状態になり、「だったら戦争だっ。」となるだろうが、我々日本人は現在、1ガロン当り3ドル75セントのガソリンを使っているのだよ。

コリン君、眼鏡を掛けなおすことはない、君の読み間違いではないので、大きな字で書いてあげよう。我々日本人は

1ガロン当り3ドル75セント

($1.00=110円換算x108円/L)

のガソリンを使っているのだ。いいから開けたままの口を閉じなさい。君の国で1ガロン当り1ドル75セントで売っているのと同じく、サウジアラビアからタンカーで運ばれた原油を精製すると、輸送距離は喜望峰周りで貴国に運ぶよりは近いはずの我が国では、小売価格は1ガロン当り3ドル75セントになることになっていて、それを誰も不思議には思わないのだ。セルフサービスのスタンドが無いとこれが1ガロン当り3ドル90セントになってしまい、私など妻にこっぴどく叱られるのだ。

そして我が国の輸入総額の2/3が原油代金だとなると、戦争をやらなくても儲けたいやつは儲けることが出来ようというものだ。しかも京都会議で示したように世界の省エネルギー政策でもリードをとれる、自動車等の省エネルギー技術の開発は進む、おまけに「原子力は安い」と胸を張ることもできる(これは商用原子炉の建設運転コストだけで言っているので、国家プロジェクトとしての開発費と廃棄物処理代を加算しない、というのがミソなのだが)。

コリン君どうだろうか、どうせ「大量破壊兵器に関するCIA」の一件で、おさるのジョージ一家の人身御供にされてしまった君の政治生命じゃないか、米国の石油小売価格を日本並みに引き上げる、という政策に残りの一生を掛けてみたら。石油資源が枯渇する頃には歴史に残る業績として評価されると思うのだが。

それはそうとして、ヘリはウザいからやめてね。