ロンドンの住宅危機

2000.11.17インブニングスタンダード

ロンドンは絶望的な新規住宅不足に苦しんでいる。

特に看護婦、教師、警官といった首都機能を維持していながら、そこに住むことが出来ないでいる、低所得の人々に入手可能な住宅が求められている。

リビングストン市長の住宅委員会の報告書はこの問題に言及しているが、問題を解決できるわけでは無い。報告書は新規着工住宅の少なくとも半数が低所得、中間所得層に入手可能なものであることを求めており、これが実現すれば大きな変化が起きるであろう。

問題を実業界でこれまで常に彼の強力なバックとなって来たロンドン・ファーストが今日指摘した。今後予想される大量の住宅供給の主体は、現在敷地の25%を住宅協会を通した低価格住宅に、という枠に縛られている民間開発業者であるが、昨日の住宅白書では量とともに質の点でも従来より高いものが求められている。明らかな危険性は開発業者にとって過大な要求となり、ロンドン市内での開発が全体として魅力の無いものになりはしないかという点だ。

市長の報告書では提案の経済効果に付いても触れている。しかしこの提案がもし非建設的な結果を生じた時の対処については述べられていない。確かに密度を上げるなどによって要求を実現しやすくする提案や、公営住宅居住者が移住するための方策など、様々な良い考え方が盛り込まれている。その反面、住宅供給を増やすもう一つの側面、市有地への高密度再開発といった市長が嫌がりそうな政治的に微妙な問題には触れられていない。

もし現実に劇的な変化が訪れるとするならば、政府も低価格住宅にさらなる補助をすべきか、ロンドンには住宅難がつきものだと考えるかの選択を迫られるだろう。市議会もまた莫大な手持ちの住宅と土地をどう活用するかについてもっと積極的なる必要がある。民間業者のみで手柄をたてることは出来ないのだ。


発電所が鍵を握る

2000.11.17インブニングスタンダード

バタシーのウォ−タ−フロントはこれまでその価値を封印されて来た。有名な発電所とナインエルムズに続く醜い工業地帯の印象が強く、開発業者からは見捨てられていた。

しかしその立地は隣接する公園と川面の景観によって高級住宅地となる可能性を秘めている。リチャ−ド・ロジャ−ス卿の設計になる「モンテヴェトロ」と名付けられたスマ−トな集合住宅の計画がフルハムとチェルシーから南岸にスタイリッシュ名住宅を求めようとする人々を引き付けている。

リバ−サイドの再生計画が始動し、高層開発が進み始めたのだ。今後5年間でテムズ川のこの一帯にはワンズワースから現在人気の集まっているボクソ−ル・サウスバンク、さらに東に延びる一連の混合開発が進められる。

手の早い投資家は既に周辺に集まっている。そこにとぐろを巻いている発電所が鍵となる。ここでは40万平方米以上に達する事務所・ホTル・会議場・シネコン・ショッピングモ−ル・バ−・レストラン・スポ−ツアリ−ナを含む計画が進められている。これにはヴィクトリア駅まで5分という鉄道新駅も含まれている。
バークレー・ホームズは発電所に隣接して「チェルシ−ブリッジ・ワ−フ」と称する開発計画の許可を取り付けた。これも同じように低層中層ビルを中庭の周りに配置した複合開発である。川沿いには新しい遊歩道・自転車道・船着き場が作られる。バークレーでは第一次500戸の売り出しを2001年に予定している。これらは1ー3寝室の集合住宅で駐車場には制限がある。

「チェルシ−ブリッジ・ワ−フ」の裏のクイーズタウンロードでは開発会社のロンドン・タウンが「首都で初のディジタル開発」と称する「ザ・ブリッジ」の工事を進めている。外側が大きくガラスで覆われた現代的な98戸の集合住宅で、室内にはハイテク時代の住人に相応しく通信ケ−ブルが張り巡らされている。(本格的オタク向けにエレベ−タの中でもインタ−ネットが使える。)詳しく知りたい人はhttp://www.thebridgelondon.com/まで。室内は床から天井までの窓、バルコニー、エアコン、床暖房、システムキッチン、バスル−ムが完備しており、お値段は1寝室の285,000ポンドから3寝室の615,000ポンド。

さらに面積は40坪から105坪お値段は895,000ポンドから2,750,000ポンドという、高価なデュプレックスやペントハウスも売り出されている。

バタシ−公園近くの元ヴィクトリア・スク−ル跡は「ザ・ロフトハウス」として改装中である。サールストン・ホームズが29戸のギャラリ−付アパ−トと2つのオフィス付き住宅として開発しており、こちらは全戸駐車場付きであり、門に囲まれている。吹き抜けが有るとの事だが最も小さなものは19.4坪だ。同社は市内の小規模開発が主体で、コヴェント・ガーデン、フルハム、ノッティングヒルでも先端的なデザインの開発をしているとのこと。バタシ−での開発では20世紀初めにドイツで起こったバウハウス運動から名前をとっている。剥き出しの模造品だとみなす人がいるかも知れないが、サ−ルストン社ではトレンディな若い人に受けると自信を見せる。「光、スペース、豪華さがデザインの基本要素となっております。」とマネージャーのキース・アイルランドさん。お値段は300,000ポンドから700,000ポンド。

もっと手頃な住宅もナイン・エルムズ南のクリムズワース・ロードでミッチェル・シャンリ−社から売り出されており、44戸の住宅が185,000ポンドから、モデルルームは毎日公開されている。

Pink Floyd

市長の低価格住宅構想は
「うまくいかない」

2000.11.17インブニングスタンダード

ケン・リビングストン市長の重要な協力者はもっと多くの低価格住宅をという市長の要請を「うまくいかない」と一笑に付した。

初めて政策の不一致が明らかになった圧力団体のロンドン・ファーストは新築住宅の半数を低価格住宅にするという市長の要求は開発を鈍らせ、ロンドンの住宅危機を悪化させると主張した。

委員長のジュディス・サロモン氏はロンドンの慢性的な住宅不足への認識を歓迎しつつも、35%を低所得者向け、15%を中間所得者向けに、という目標を非難した。

「そんな要求はうまくいくわけが無く、住宅供給が全国平均をはるかに下回っているロンドンで、さらに新築住宅が減るのは眼に見えている。」昨日発表された市長の住宅委員会の発表に付いて述べたもの。

「我々の懸念はこの新しい政策が住宅開発に逆行するもので開発を妨げる事である。この基準に沿ったのではでは開発業者は新規住宅の開発ができるはずが無く、ロンドンは住宅供給が50%減となるに決まっている。」

サロモン氏は市長の戦略が住宅供給の為の「たった一つの長期的解決」を台なしにすることを恐れている。
「開発用地は可能なところでは商業開発へ、都市再生が必要な地域では開発されないまま放置されるでしょう。」

攻撃には市長が「社会主義車の夢物語を追い求めている」とする保守党も加わった。保守党の都市再生へのスポ−クスマンであるティム・ロウトン氏は計画は「破滅的」と決めつけた。「これで都市再生の為の開発計画の多くが息の根をとめられてしまう。」低価格住宅の供給目標はそれぞれの開発委員会が決めることで、市町村や国が決めることでは無い。」

「左翼の都市住宅政策は長期にわたってロンドンをカモにして荒廃させるレシピとなるだろう。」

しかし市長は提案が現実的なものだと主張している。「これらは全てユートピアでもウィッシュリストでも無い。我々は無定見な事をしているのではなく、何が実現可能かという基礎のを元に報告書を書き上げたのだ。我々は開発業者とも密度基準、高さ制限などに関して根本的な解決には何が必要かの意見交換をして来た。」 市長には目標にそぐわない開発申請には介入する権限が与えられているが、それは環境省の監督下にも置かれている。