15.投資の実現

私達はこのレポ−トで、都市の水準を引き上げ、問題をしぼるために公的資産を投入して充分な配当が得られるであろう事柄に焦点を当ててきました。そのような投資は都市再生には民間からの投資が不可欠であるという事にも行き着きます。公的投資と民間投資が全く無関係に行なわれることは稀です。都市再生の為に最も有効な資金の使い方は民間からのより大きな投資の為の道筋を開く、というものです。公共部門が担当すべきとして私達が提案した、用地取得、土地浄化、環境維持管理の為の出資等はこうした「呼び水」となるべき事柄の一部です。

民間投資の誘導

私達が民間経済に対して持つ懸念の一つは、複雑な地域再生プロジェクトが必要とする中・長期な投資のリスクに対し、市場経済が対応しにくい、という点です。政府はこのような投資に対して出資者がより効果的にリスク管理をするための手助けを通じて民間資金を都市再生に誘導することが出来ます。長期的な公的・民間資金のプ−ルを実現する基金の設定は、当面の問題のいくつかを解決するためにも有効です。我々が「重点都市地域」として提案した地域における、官民合同の出資組織は、特に機関投資家にとって魅力的なものとなるでしょう。

同じ様な筋書きで、地域開発機関が都市再生プロジェクトの為に資金を募り、機関投資家に対して債権を発行する地域開発公社の設を提案します。私達はまたPublic Private Partnership(PPP)、Private Finance Initiative(PFI)といった手法にも注目しています。これらは民間資金を土地の再生、維持管理に充て、行政にとっては地域住民の必要に応える枠組となります。

現在のところ退潮期にある民間借家もまた機関投資家が都市再生の為に担当できる分野です。これまで政府の監督下にあったHousing Investment Trust は機関投資家、個人投資家が株式を保有し、借家事業から配当を得ることのできる仕組を模索しています。私達は政府に新たな仕組を作り出すため、米国のReal Estate Investment Trust のモデルから学び、同じ様な仕組で出資者には相応の配当があり、資金運用コストが適切で、入居者にも家賃の安い仕組を開発することを強く求めます。小規模土地所有者には「間貸し特例」の様な優遇税制がインセンティヴとなります。

提案の「重点都市地域」では、これ以外の経済的な手法も考えられます。開発者を援助すr為、私達は土地取得税の控除と登記税の減免を提案します。入居者を引き付けるためには住宅登記税の減免、財産税の控除、自動車保険、地方税、事業税の減免なども利用出来ます。

公共投資の適正化

私達は公共資金が都市環境の改善に大きな力を発揮することを確認したいと思います。この目的の為には都市再生事業が政府による区分・検査・会計監査手続の中で明白に認識されていなくてはなりません。中央政府から地方への予算配分の公式を変えるだけで無く、地方議会には予算執行の為のより大きな自由与えられることを強く望みます。都市重点地域では特別地方税、あるいは都市再生による経済活性化によってもたらされる収益を、地域の都市環境の維持管理に還元する事業税を、定めることができる権限を、地方自治体に与えることを提案します。

私達は今後3年間に渡り都市再生予算を増額するという昨年(1999年)の政府による決定を歓迎します。都市部の資産が長期に渡り不良化することを防ぐ為には大きな公的投資が避けられません。60%という再開発比率を達成するだけで無く、それが管理の行き届いた質の高い都市環境となるためには、充分な資金手当てが必要となります。

現在のところ、都市再生の資金計画は英国協同投資基金と独立都市再生基金の二つの地域開発機関(RDA)が所轄していますが、私達はこの二つの機関の早急な統合を提案します。物理的・社会的な事業を統合する都市再生事業に出資することができる一つの金庫が作られるべきです。私達は同時に「地域ニューディール」の前例と同様、10年までの長期に渡る資金運用のフレキシビリティーを提案します。資金運用は事業の求めるところに従ってなされるべきです。

住宅の質と家賃格差・所得・消費支出の不釣り合いが多くの住居地域の環境劣化の原因となっています。戸建て住宅の為の過大な敷地、私有地における長期的な維持管理支出の欠除など、過去の失敗が高い負担となっています。低家賃の公共住宅地域では入居者の多様化を実現するため、家賃格差のよりフレキシブルな運用が望まれます。公共住宅では需要の大きな地域に投入されるべきです。その為には公共住宅が過剰となっている北部、ミッドランドに当てられている公共住宅資金の振り替えも含まれます。

公共住宅地域でも不良化の大きな地域での更新事業には二本立ての戦略我必要です。維持可能な敷地の全てに資金が割り当てられ、維持管理体制を改善し、入居者の所得を多様化し、都市施設の拡充が行なわれなくてはなりません。これと同時に既に住民が住みたいと考えなくなった様な、悪化の著しい部分に対しては、選択的な再開発が必要です。これを実現するためには速やかな住宅ストック間での住み替えが必要です。政府には住み替えをより魅力的なものとするため、過去の採算計画の一部を放棄することも求められます。

地方自治体には住宅改善計画の中で特に重点都市地域における民間住宅開発を援助することが求められます。これには公的資金による補助だけで無く、投資信託方式の援助も含まれます。

主な提案
  • 今後3年間で地域再生事業に民間から10億ポンドの追加投資を呼び込める様な官民合同の基金を作る。
  • 投資を喚起する財政手法を展開する
  • 民間借家への機関投資を促進する。
  • 再開発意外に再生手法が無い敷地・建物について、開発者・投資家・地権者・地権入居者・賃借者に魅力的な優遇税制を導入する。
  • 今後3年間の公的資金配分の基礎とするため、都市再生事業資金を2001年の予算変成に組み込み。
  • 中央政府から地方への予算配分の公式を適正化し、地域の都市計画機関が都市環境の維持管理に必要性を反映できるものとする。
  • 地方自治体に都市重点地域で特別地方税・特別事業税を定めることができる権限を与える。税収は地域の都市環境の維持管理に充当する。
  • 計画機関が都市再生を進める上で必要な住み替えをより魅力的なものとするため、公的住宅購入の為の公的融資・民間ロ−ンの減免、免税を含む住み替えパッケ−ジを導入する。


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16.ルネサンスの持続

このタスクフォ−スの報告書では今後20年以上にわたり、住宅供給が成長し、英国の都市の豊かさの基礎となる、都市再生を実現するために、必要な詳細なアジェンダを提案しました。変化はすぐにもたらされるものもあり、長い時間をけて実現するものもあります。私達にはその何れもが必要です。政府が社会・経済・環境に関する指標を網羅して、成果を詳細に公表する「都市実態報告」を毎年作成する、というのが結論に代えての私達の提案です。新たな都市政策委員会が全ての段階での都市政策の改善を調整します。委員会は副首相を委員長とし、内閣に直接を報告します。これによって地域、地方自治体のリーダーは各大臣と力を合わせて変化の為のアジェンダを実行に移すことが出来ます。

政府から発表される都市白書は英国の都市の未来についての記念すべき宣言となるはずです。私達は政府に持続可能な都市を作り出す発想と手段において大胆であることを求めました。私達が実現しようとするヴィジョンは理想から程遠い姿にある、住宅に関する政策の中に込められています。

永年に渡る投資の欠除とそれによる都市の劣化をただちに解決する簡単な方法はありません。しかし私達は変化の希望に楽観的です。私達の提案は適切な経済・社会政策と結びついた時、切望される解決への推進力となるはずです。私達が未来を見つめ、政策と戦略を練り上げた、都市再生の恩恵を被るのは次世代の都市住民であるべきです。この努力こそが持続可能な都市の理想の姿でしょう。

  • 大気汚染・土壌汚染・エネルギ−利用・水のリサイクルとゴミ処理といった、主な都市環境の指標は全て大きく改善される。
  • 健全な経済成長は都市内部、禄缶、地域間でより公平な経済的機会をもたらす。教育水準・健康・犯罪・貧困など主要な社会指標が改善される。
  • 既開発地-ブラウンフィ−ルドの持続性が向上し、地域の住宅需要、住宅予測に応えるものとなる。これに応じて未開発地への開発圧力が下がる。
  • 都市人口の定価に歯止めがかかり、年を追って都市居住人口が増加する。郊外から中心市街地へ人口が流入し、公的住宅と民間住宅の区別が無くなる。
  • 少なくとも5大都市で都市生活のクオリティ−を計る全ての指標からヨ−ロッパにおけるトップ50に入る。下位1/3に含まれる都市は無くなる。
  • 住民・投資家の指向調査で都市部への評価が肯定的なものになり、都市生活が楽しまれていることが解る。
  • 都市部の住民による評価が都市を安全で魅力的な場所だと見る様になる。
  • 英国が持続的な、質の高い都市デザインの先端にあることが世界的評価を受ける。
  • 健康・教育などの社会サ−ビスが都市住民の必要に焦点を合わせた都市的なものになる。
  • 全ての都市における環境が住民の求める水準で維持管理される。
  • 英国が都市開発技術の国際的中心となる。
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