4.中心課題と解決策

土地・建物のリサイクル

新規住宅供給の60%以上を再開発で、という政府の目標を達成するため、私たちは新規開発を進める前に現在ある宅地・建物のなかで放置されたもの、空き家、利用度の低いものの有効利用を進めなければなりません。 このための方策として次のようなことが考えられます。

  • 未開発地の新規開発を制限し、市街地の再開発を誘導する。
  • 自治体、公的機関の保有する余剰敷地、建物を都市再生のために放出することを求める。
  • 2030年を目途に、全ての汚染敷地を有効活用するための全国キャンペーンを展開する。
  • 全ての町村で空き地に対する戦略を準備する。
  • 住宅の新築・改築に対する付加価値税を再考する。

都市環境の改善

都市の住宅地は生活のための魅力的な場所でなくてはなりません。このためには優れたデザイン、交通の改善、コンパクトで、用途が多様であり、公共交通と地域サービスの利便性を維持できる密度の開発により強いコミュニティー感覚、社会的安全性が感じられるものでなくてはなりません。これを達成するためには次のことが求められます。

  • 教育・トレーニング・先行プロジェクト・戦略的マスタープランとコンペティションの活用、地域建築センターの展開を通じた全国キャンペーンの開始。
  • 開発密度を適正なものとするための計画・資金ガイドラインの導入。
  • 交通予算の65%以上を歩行者・自転車・公共交通のための割り当て。
  • 住宅地域に歩行者優先の「ホームゾーン」を設定する。

優れたリーダーシップ・市民参加・維持管理

地方公共団体が都市再生をリードします。自治体と自治体が代表する地域の住民・市民とのパートナーシップを通じてこの役割を担うための権限、手段、民主的な立法権を付与されるべきです。都市地域はより効率的に利用されなくてはならず、公有地その他の遊休地は各々最も適した形で利用されるべきです。 このため

  • 都市計画の資質を都市の変化を導くものに改め、地域の住民・市民が意思決定のプロセスにより深く関わることのできる、地区レベルでの詳細計画を展開する。
  • 戦略的マネージメントを強化し、地方自治体の都市環境全体への役割を拡大する。
  • 近隣地区の地上権、収入をより多様化する。このため公共住宅の入居資格を緩和する。
  • 地域の議員、専門家、市民が都市再生をリードして行くに足る力量を身に付けるため、都市開発のための地域リソースセンターを導入する。


都市再生の起動

地方公共団体とそのパートナーには、都市再生の求められる地域にたいして長期的な手だてを開発するため、より大きな自由が与えられるべきです。公共投資は私たちの都市の再生のために、より多くの機関投資を呼び起こすために使われるべきです。これを実現するために次のことが必要です。

  • 開発許可の合理化、土地取得の緩和、優遇税制その他の手段を活用することにより、民間気仰臥とし再生を進めることができる地区に都市再生重点地区を指定する。ア=バンルネサンスの必要を満たす重要課題に対し、政府・自治体の関連部局を横断的に対応させる。
  • 地域の住民グループが自らの手で地域を改善するためのルネサンス基金を創設する。

5.都市環境をデザインする

都市の人工環境がうまく機能するためには、そのクオリティーが決定的な要素となります。良くデザインされた建物・道路・近隣住宅地は社会的・経済的・環境的な都市再生のために欠かせません。最近のオランダ、ドイツ、北欧各国の事例からは、英国の都市生活のクオリティーが遥か後方に取り残されてしまったことを示しています。

都市部の開発は再開発であれ、新たな敷地での開発であれ、人々を引き寄せ、都市部に再び戻ってくるためには、現在のものよりも遥かに高い規格でデザインされなければなりません。都市開発は周辺と一体化し、公共交通へのアクセスが適切に取られ、良好な状態を保ちつつ密度を上げることによってその可能性を最大限に発揮できるものでなくてはなりません。都市開発はさまざまな活動、サービス、住宅では所得と所有形態を混在させることにより、多様性を追及すべきです。地域の伝統遺産を尊重し、環境への悪影響を最小限に抑えることのできる土地の有効活用が必要です。高い規格を持った建物、建物の間の、人々が出会い、移動する公共空間のデザインが優先されなくてはなりません。

デザインのクオリティとは新規開発についてのことではありません。歴史地区から郊外の低密度住宅地に至るまで、既存の都市環境を私たちがどう活用して行くかということでもあります。

政府は都市デザインの中心課題を定義し、選択メニュー式によるのでなく、優れたデザインが地域開発と都市再生戦略を支えるものであることを差し示すガイドラインを作成すべきです。新たな開発がより大きな都市の骨組みの中でどのように働くかを追及する三次元的な戦略である戦略的マスタープランの活用が推奨されます。これは民間投資家と開発計画者に対し、その開発によって引き起こされるインパクトのアセスメントをより厳密にするだけでなく、都市デザイン全体を改善するための貴重な手だてとなります。

公共機関と都市再生のパートナーは、より詳細・包括的な開発概要を準備することで都市デザインの質を高めることに貢献できます。さらに次の段階としては都市再生プロジェクトをデザイン・コンペティションの対象とすることを提案します。オランダ・スペイン・ドイツの見学会では適切に運営された公開コンペがより優れた都市デザインを産み出すだけでなく、投入資金の値うちを高めるものであることが強調されていました。

住民・市民の参加はデザイン過程に不可欠です。コミュニティープロジェクトの支援・展示会・セミナーなどを通じてデザイン課題の解決に住民・市民参加を進めるための地域建築センターを大都市に創設することを提案します。

主な提案

  • 新たなベスト・プラクティス・ガイドラインの適用によって、計画・資金の誘導を通じ、デザイン上の重要課題を広く知ってもらうための全国的な都市デザインの骨組みを作る。
  • デザイン主導型の様々なタイプの住宅開発によって都市再生を進める一連の先行プロジェクトを国が行う。
  • 自治体に公有地、オープンスペースに関する資産・デザイン・マネージメント・メンテナンス・財政の全てに整合性を持つ統合戦略を求める。
  • 密度基準を合理化し、持続可能で活気のある環境を作り出すに足りない低密度の開発プロポーザルを防ぐための開発・融資ガイドラインを整備する。
  • 住宅取得に際し、販売価格に対してどのようなレベルの性能が得られるかを示す、環境・維持費についての格付けを制度化する。
  • 都市再開発事業の融資、開発許可を統合的戦略マスタープランに見合うものとする。
  • 主要都市に各々地域建築センターを創設する。

6.結び付ける

都市とその近郊が経済的・社会的に力強い単位として機能するためには適切な交通その他のインフラが必要です。しかし私たちは自動車交通の成長による環境・健康への被害を無視することもできません。人々を都市部に引き付け、受け入れるための最善の方法の一つとして、私たちは自家用車の必要性を減らすことがあると考えています。このためには歩行者・自転車・公共交通を特に優遇する政策が必要です。

政府は開発によって新たに発生する交通需要に対し、計画者、開発者がその責任を全うすることを確かめなくてはなりません。地域交通計画には法制の下で自動車交通の量と距離を減らすことを特別な目標を設定するべきです。

住宅地、大通りでの制限速度を通常時速20マイルにすることを妨げる理由はありません。これに加えて私たちは住宅地域の住民が地域を歩行者優先とし、自動車は歩く人よりもわずかに早い速度に制限される「ホームゾーン」に指定する制度を提案します。また、歩くことが楽しくなるような空間や路上設備によって歩行者が増えることも期待できます。地域の実情に応じて交通量の多く危険な道路には自転車専用レーンを設けるなど、総合的な自転車交通ネットワークを開発することも大切です。地域交通計画では歩行者・自転車による地域へのアクセシビリティーの改善状況が年度ごとに公表されるべきです。全ての都市開発・高速道路の開発は、それが歩行者・自転車の利用を優先するものでない限り、公共投資の対象とすべきではありません。

現在の公共交通は多くの人々が自家用者の利用をやめるほどには快適で十分なものとは言えません。都市部の交通手段を変容させるためのバス・サービスの拡充、軽便鉄道・路面電車といった革新的な技術の導入には中央からの明確な指導と援助が欠かせません。バス・サービスの質の向上にはロンドンで行われているような管理の行き届いたフランチャイズ・システムが唯一の解決策かもしれません。

政府は今後10年間にわたり、交通予算の65%以上を歩行者・自転車・公共交通のために割り当てるべきです。地域交通計画には公共交通のアクセシビリティと利便さを拡大することが求められます。公共交通路線へのアクセスを改善し、勤務先へのサ=ビスを重点的に拡充することで、より多くの人々が通勤のための自家用車の利用を減らすことが出来ます。これと同時に毎日のラッシュアワーの渋滞の原因の一つとなっている、学校への自家用車での送り迎えも解決しなくてはなりません。

都市サービスと環境改善に活用できるはずの莫大な土地が現在、駐車場として使われています。新たな住宅開発における居住者用駐車スペースは戸当り1台以下に制限されるべきです。人々があえて自家用車を使い、駐車しようとするなら、そうした選択が環境に与えるコストが駐車料金に加算されるべきです。

主な提案
  • 効果の確実な道路のデザイン、より低い制限速度等、自動車交通を沈静化させる手だてを講じた「ホームゾーン」の導入。
  • 自動車交通の低減、歩行者・自転車・公共交通の利用増加の年次目標を定めた地域交通計画の法制化。
  • 今後10年間にわたり交通予算の65%以上を歩行者・自転車・公共交通に割り当てる。
  • 5年以内に適切な改善が認められない場合、全国のバス事業に財政援助を行う。
  • 新規の住宅開発では居住者用の駐車スペースの基準を戸当り1台以下とする。