アメリカ合衆国最大のレインフォレストを育てるという細かな雨の中、僕達はアジアに一番近いアメリカ本土の港、シアトル・タコマ空港に着陸した。「西風のため、定刻より20分程早く到着しましたが、入国検査官が到着するまで機内でお待ちください。」というアナウンスはすぐにアジア系の何ケ国語にも訳されてざわざわと機内を飛び交った。

日本語の解かるアシスタントと違い、入国検査官は「英語くらい喋れないと‥.]とでも言うように英語で審査をする。同じように英語で質問する税関の担当官に

日系ですか?と聞くと、
そうよ。

と歯切れの良い日本語が返ってきて、途端に愛想も良くなった。

混んだ時間になるとずいぶん待たされなくてはならないレンタカーのカウンターも、ガランとしている。時差ボケの頭と身体を休めるため、市内を抜けてマグノリアの住宅街へと車をころがした。

新興住宅地だけに現代風のデザインの建物が多く、隣のクイーンアンとは大分違う。アメリカの住宅地はそこが開発された時代の建築デザインをそのまま継承していることが多いようだ。建て替えるときにも周辺の建物デザインに配慮することが前提であり、クイーンアンのように「良い住宅地]として不動産価値が上がると、デザインに関しても建築協定がしっかりできることが多いのだろうと思う。



モダンな分譲住宅は新しい分譲地でないと見られない。


公園を抜けてチッテンデン水門へ来た。50がらみの黒人が釣糸を垂れている。すでに獲物が数枚ひもに下がっている。

釣れてるじゃないですか。
ま、朝からやってっから。
何ていう魚?
パーチだよ。

ふと見ると餌がすごい。形は日本でも使うゴカイみたいなヤツだが、ただ太さが尋常ではなかった。人間の指ほどもあるのだ。

アメリカンサイズって言うのかねえ。

と河合君と顔を見合わせてしまった。朝なので海から入ってくる船はレジャーボートよりも漁船の方が多いようだった。

道端の工事現場で屋根屋が日本瓦を葺こうとしているのに出会った。和風のデザインであるわけはなく、アメリカンスタイルの住宅に使おうというのである。梱包には高浜のメーカーの名前が記されていた。



アメリカンスタイルの住宅に三州瓦