教えられたとおりワシントン州の議事堂を見物した我々はメインストリートに戻ってセイフウエイに車を入れた。西海岸のどこに行ってもあるスーパーのチェーン店である。大きな街や、新しい店舗は巨大で、うちのガキどもが入れば目が点になりそうな造りをしているが、オリンピアの店はまだ遠鉄ストア程度の迫力であった。高速道路のインターの手前にGAS/ FOOD/LODGE としてあるFOODもこの手の店が増えていると思われる。

アメリカ人が二人で車にのっていると、スーパーで食い物を調速しては替わり番こに食べて寝ながら、何日でも何週間でも走り続けられるのではないかと思われる。

僕もセイフウエイかアルバートソンの看板があるとつい入ってしまう。セブンイレブンとサークルKの看板があってもつい入ってしまう。というのはチェーンストアの魔力というより、時速60マイルで走っていても、パターン認識で看板を読めば、棚に並んでいるものが分かってしまうからである。

食パン、ソーセージ、ハム、カップ入りのサラダ、ベジタブルエイト、それにビールの6缶パックを仕入れた。若いころデンバーで研究医をしていたというさるドクター直伝の「貧乏なアメリカ人」定食である。ユダヤ人の知人の多かったドクターはペーダルを好んでいたが、僕達は普通の食パンにした。

緯度の高いこの辺りでは10時から2時までが昼間、3時でたそがれという・感じである。運転を替わった河合君がせかされて西に走ると、一瞬夕焼けが見え、太平洋岸に出たころにはもう暗くなっていた。アバデイーンで一休み、デニーズに入ってコーヒーだけ飲む。夜の海岸を191マイル走ってアストリアに着くと、もう真っ暗なのにまだ7時半だった。

今宵の宿、クレストモーテルは暗くてよく見えないが、コロンビア川を望む高台に建つまだ新しそうな建物だ。車をフロントに停めて中に入ると、おばあちゃんが孫と店番をしていた。

「いくつだい。
「10才になるんですよ。」
「宿題やっちゃったのか。」
「うん。」
「いい子だからもう終わったよねえ。」

だめだこりゃ、ばあちゃんっこだ。ルイスアンドクラークが冬越しに使ったというクラツオップ砦のパンフをもらって部屋に引き上げる。