建築学科はインターナショナルスタイル華やかなりしころの作りで、蔦がからまって汚くなった建物に入っていた。講義内容、単位の取り方の説明などが、新学期らしく山積みされている。ついでに教室を覗いてみる。4・5人のグループに分かれて積み木を積んでいるので、何だろうと恩ったら、建築史の授業らしかった。講義を受けた各時代のスタイルを積み木で表現し、その特徴を説明しなさい。というものである。なるほどスタイルは言葉ではないのだから、このほうが覚えやすいだろう。学生もわいわい言いながら熱中している。
先に本屋を覗くことにする。建築書は割りと奥の方にあったが、さらに奥の棚には教科書が積まれている。新本と古本が両方ともある。古本は2-3割安く売られている。簡単なリサイクルだが、学生にとっては有り難いだろう。その分、すぐに売りたくなるような本しか書けない先生は、収入も少なくなる仕掛けだ。建築書の棚を男子学生が2、3人うろついているので捕まえる。
「保存建築を利用したまちなみ形成の本は無いかい。」
「あります、あります。今、授業で使ってるやつは本当に良い本だと思う。」
と教科書の棚を探してくれる。が、見当たらない。
「もう、売れちゃったんだな、きっと。」別のやつに
「ムーアのデザインはどうだい?」
するとこっちに向き直って姿勢をただし、面接試験のような調子で
「あの建物で最も不適切なことは隣接建物との動線の考え方です。ホール自体は良いのですが、法律学科の学生の動線はホー
ルのために逆に非常に分かりにくくなっていると思う。 ‥・」
とおっぱじめた。
「じゃ、デザインはいいから、スタイリングはどうだい。」
と聞くと、途端にくだけた感じになって
「他所じゃ分からないけど、ユージーンじゃ・・・、まあまあってとこかな。」
大きな本屋だけあって、各種統計の棚に例の神宮館式の暦も置いてあった。
外に出て屋台でメキシコ風ヤキトリを食おうとしたら人がいない。仕方なく「長さ1フィート、特大ホットドッグ」にした。たいしてうまくない。ムーアのデザインしたウイラメット・ホールは近代的なスタイルの建物に周りを囲まれている。
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