海外産業博物館 No.5


アイアンブリッジ峡谷博物館 The Ironbridge Gorge Museums ・ ブリスツヒル野外博物館 Blists Hill Victorian Town

ブリスツ・ヒル野外博物館

歴史の活きる博物館、19世紀のイギリスへタイムスリップ


石田正治  by ISHIDA Shoji


巻上機は、蒸気機関で今も動く 巻上機

 ブリスツ・ヒル野外博物館は、アイアンブリッジ峡谷博物館のひとつである。ブリスツ・ヒル製鉄所の広大な跡地を利用して、19世紀、ビクトリア時代の産業と生活を再現している。 博物館には、様々な施設が移築復元されている。鋳造工場、鍛造工場、印刷工房、造船所、鍛冶屋、錠前工房、銀行、学校、パン屋、薬屋、居酒屋などなど。公開されている施設は、特に歴史的に価値が高いものとは言えないが、なによりも称賛に価するのはかつてのモノづくりの技術を正確に再現していることである。すべての施設で、当時の機械が動き、当時の身なりで人が働いているのだ。博物館と聞けば、骨董品を並べて見せているような印象を持つ方もいるかも知れないが、この博物館では歴史が活きているのである。
 パン屋や薬屋の再現は、それほどにむずかしいことではないだろう。居酒屋のニュー・インはレストランになっていてここでは当時のビールが飲める。しかしながら鋳造工場の再現となるとその運営には相当の努力が必要であろう。まるで現代の工場見学をしているのと変わらない感覚である。多くの人は、博物館にいるということを忘れてしまうであろう。
 95年夏、私がブリスツ・ヒルを訪ねたのは三回目であった。何度来ても楽しく魅力溢れる博物館である。施設も年々増築されて増えていたが、博物館活動が人によって支えられていることを改めて思った次第である。
(いしだ しょうじ・愛知県立豊橋工業高等学校教諭)


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