海外産業博物館 NO.7


バーミンガム科学工業博物館  Museum of Science and Industry, Birmingham

蒸気機関は活きた教材

原理は動かして理解させる


石田正治  by ISHIDA Shoji


ワットの遺産である「スメスヴィク・エンジン」

 バーミンガムは、蒸気機関の発明者、ジェームス・ワットの工場があった町として知られている。そのバーミンガムの中心部、フェイズレイ運河の辺にバーミンガム科学工業博物館はある。
 館内に入ると、まず目にするのは大小様々な蒸気機関である。ワット縁の地にふさわしい展示である。しかもそれらの蒸気機関がすべて動く。だだ動かしているだけではない。本物の蒸気で動かして見せるのである。近づいてみると、その熱気が伝わってくる。博物館では、蒸気による運転を毎月、第1、第3水曜日に行っている。イギリスでは、最初に蒸気機関を蒸気で運転して見せたのがこの博物館である。
 技術の世界は、基本的に動くモノの世界である。本来動くモノを動くモノとして理解するめに、この博物館は格好の技術教育の教材を提供していると言えるだろう。またそれらは歴史的な遺産でもあるから、単に蒸気機関の構造や動く原理を学ぶということに留まらず、産業革命の原動力であったという歴史的意義も学ぶことであろう。
 博物館の目玉となる展示資料は多いが、ここでは産業遺産として重要な展示物をひとつ紹介しておこう。スメスヴィック・エンジン、バーミンガム運河の閘門の揚水用にワットが1778年、スメスヴィックに造った蒸気機関である。1891年まで使われ、1959年に博物館に寄贈された。これはエンジンと言うよりも構造物と形容すべきもので、高さは約12メートル、三階建ビル程の大きさの巨大なものだ。博物館員の話によれば、今でも動かすことができると言う。
→蒸気機関の上部

(中部産業遺産研究会事務局長、豊橋工業高校教諭・いしだ しょうじ)


※バーミンガム科学工業博物館は、1951年にNewhall 通りのエルキントン銀メッキ工業会社の建物を使用して開館した。博物館は1997年に閉館、そのコレクションの主要なものは、2001年からThinktankのBirmingham’s Science Museumで展示・公開された。その他の博物館資料とアーカイブは、博物館コレクションセンター(MCC)に保存されている。MCCの資料は、研究用に見学・閲覧することは可能とのことである。


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