海外産業博物館  NO.12


クォーリ・バンク・ミル  Quarry Bank Mill

ものづくりの技と歴史を学ぶ

工程順に実演で学ぶ


石田正治  by ISHIDA Shoji


ジェニー紡績機の学習

 クォーリ・バンク・ミルを訪ねたのは、95年夏、緑の牧場が広がるカントリーパークの中心部に博物館の駐車場があった。そこに自動車を預け、歩いて約10分、急斜面を下ると林の中にミル(紡績工場)はあった。 開館時刻より少し早く到着したので博物館付設のレストランで休んでいると、小学生らしき集団に出会った。まだ学校は夏休みではないようだ。博物館員の話では、学校の授業としてこの博物館に来ているとのことであった。今日は、この子供たちの授業を見ながら学校教育における博物館利用のあり方を考えてみたい。
 クォーリ・バンク・ミルは紡績工場であったので、ここでの学習テーマは「綿花から布地ができるまで」の技術とその歴史である。
 最初の学習は手紡ぎ、婦人が糸車を回すと手に握られた綿から一本の糸が生まれた。子供たちは、まるで手品を見ているような表情であった。
 糸ができると授業は次の工程に進む。木製の手織機のコーナーでは、織機の歴史と構造の解説、そしてここでも機織りの実演があった。
 その次は産業革命の時代の技術を学ぶ。ジェニー紡績機、ミュール紡績機など歴史的な機械を動かして見せる。手で糸をつくることと、機械が高速に糸を大量生産する様子の対比があざやかである。
 道具や機械、ただ置かれているものを見るだけではその本質的な理解は得られない。それは、人間が使うものであるからだ。熟練の技と労働は、その実演を見せることによって真に子供たちに理解される。クォーリ・バンク・ミルの授業は、その好例と言えよう。
(中部産業遺産研究会事務局長、豊橋工業高校教諭・石田正治)


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