海外産業博物館  NO.13


クォーリ・バンク・ミル  Quarry Bank Mill

教師用に「虎の巻」

−生徒向け複写シートも−


石田正治  by ISHIDA Shoji


初等教育指導書「ビクトリア時代の英国とクォーリ・バンク・ミル」

 繊維博物館クォーリ・バンク・ミルの授業風景を前回に紹介したが、今日は教師用虎の巻「リソース・ブック」を紹介しよう。「ビクトリア時代の英国とクォーリ・バンク・ミル」と言う書名の指導書である。私の手にあるのは、新しく編集されたばかりの初等教育を担う教師用のものである。 初等教育用ではあるが、その内容は豊富である。紡績工場の歴史、動力、繊維工場の労働環境、ビクトリア時代の生活環境、スタィル村の生活、と言ったように単に紡績技術や産業の歴史を語るだけでない。ミルで働く人々の生活、職場の労働環境をも視野に入れた、幅の広い、バラエティに富む学習教材となっている。 指導書には概説の他に、生徒が博物館学習に使うことのできるアクティビティ・シート、話の補助教材としてのリソース・シート、古い地図や建物の変遷図などのソース・シートが織り込まれている。厚手の紙が使われ、リングで綴じられている。これは、アクティビティ・シートやリソース・シー トを複写して授業に使えるように配慮しているからである。
 この指導書から私自身が学んだことがひとつある。工場は、百馬力の鉄製の巨大な水車が回っているのであるが、その動力は主軸から取り出しているのではなかった。軸は鉄製といっても鋳物であるから大出力には耐えられなかったのである。そこで、水車の外縁部に内歯車を取り付けて、そこから小歯車を介して動力を得るようにしたのであった。これにより、車軸は水車の重量を支えるだけでよくなり、鋳鉄で大形水車ができるようになったのである。この形式のものをサスペンション水車と呼ぶ。マンチェスターの水車大工、トーマス・ヒューズの発明である。
  (中部産業遺産研究会事務局長、豊橋工業高校教諭・石田正治)


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