海外産業博物館  NO.16


ヨーク国立鉄道博物館 National Railway Museum

鉄道遺産の宝庫

−栄光のSLたち−


石田正治  by ISHIDA Shoji


復元されたスティーブンソンのロケット号

 イングランド北部、古都ヨークにある鉄道博物館、鉄道遺産の宝庫で鉄道マニアならずとも技術の歴史に関心があれば一度は訪ねてみたいところだ。この博物館は、国立科学産業博物館の一部門で、姉妹館には、ブラッドフォードにある写真映像博物館、スインドンの航空科学博物館、ロンドンの科学博物館があり、後に紹介するロンドンの科学博物館はそのセンターとなっている。
 ヨークは、市域を古い城壁が取り囲み、町並みと石畳は中世のたたずまいを今に伝えている。その旧市街城壁の西側にヨークの中央駅があり、その西隣が鉄道博物館である。博物館が中央駅に隣接していることからもわかるように、かつては蒸気機関車の機関庫と操車場であった。
 展示室は、鉄道の技術をテーマとする大ホール、鉄道旅行をテーマとする南ホールに分かれている。大ホールの中央部にあるターンテーブル(転車台)は、1954年にスコットランドの技師ボイドとアナンが建設したもので、現地保存のオリジナルな施設である。ターン・テーブルの回りには、蒸気機関車としてスピード世界記録202.77キロメートルを樹立したマラード号、蒸気機関車時代の最後を飾ったイーブンニング・スター号、他にディーゼル機関車、電気機関車など22両の名機が並び、鉄道の発達過程を概観できる。秀逸なコレクションで本物の肌触りに魅力は尽きない。
 大ホールの展示で見逃してはならないものがひとつ、スティーブンソンが製作したロケット号である。先に紹介した最初の旅客鉄道マンチェスター・リバプール鉄道は、機関車を選定するために1829年、レインヒルで懸賞レースを開催した。このスピード競争に勝ったのがロケット号で、鉄道時代の先駆となった機関車である。鉄道博物館のロケット号は復元機であるが、ピストンの力を直接動輪に伝えるメカニズムや熱効率を高めるために伝熱面積を増やしたボイラなどスティーブンソンの工夫のあとがよく理解できるように内部構造を見せている。なお、本物はロンドンの科学博物館にある。
(中部産業遺産研究会事務局長、豊橋工業高校教諭・石田正治)


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