海外産業博物館  NO.18


クロムフォード・ミル Cromford Mill

初の水力紡績工場

−村全体の学習ツアーも−


石田正治  by ISHIDA Shoji


世界最初の水力紡績工場・クロムフォード・ミル

 イギリスの尾根、ペニン山脈の南側山麓のマットロックの谷をダーウェント川が流れている。この川の水力を利用する、世界最初の紡績工場(ミル)をクロムフォードの地に造ったのは、ランカシャー出身の商人リチャード・アークライトである。アークライトは、一七六九年に綿糸紡績機の特許を取得、二年後の七一年に水力利用の紡績工場建設に着手、以降一七九一年に付属施設を含む全工場が完成する。
 アークライトの紡績機は、水車で動かすために、ウォーター・フレームと呼ばれる。この実物は、先に紹介したマンチェスター科学産業博物館に展示されている。アークライトは、紡績機だけでなく、梳綿機(カード)も発明し、紡績の全工程を機械化した。すべての機械を中央の水車で動かせるようにして、工場システムを完成させたことは彼の大きな業績である。イギリスの綿工業はこのクロムフォード・ミルを出発点として一九世紀には世界の工場と呼ばれるまでに発展する。
クロムフォード・ミルの綿紡績は、一八四六年に中止され、工場は倉庫や染色場などに使われ後、長い間放置されたままであった。一九七九年に任意団体であるアークライト協会が工場と敷地を買収し、この歴史的な産業遺構は保存されることになった。
 工場施設の一部はすでに博物館やショップとして公開されているが、最初の歴史的工場は現在もなお復元作業中である。アークライト協会によれば、事業の最終目標は工場を博物館とし、見学者のための解説センターを設けること、その他の建物は学校関係の見学者のための宿泊施設にするとのこと。復元事業が完成すれば、第一級の産業博物館となり、教育活動もさらに充実したものとなるであろう。
 すでに、年間六千五百人もの生徒がこのクロムフォードを訪れている。協会では、生徒のために工場だけでなく、労働者の住宅や市場、工場専用の店舗、運河、アークライト邸など村内全体をフィールドとして産業革命時代の歴史と技術を学習するバリエーションに富んだガイドツァーとテキストを用意している。
(中部産業遺産研究会事務局長、豊橋工業高校教諭・石田正治)


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