海外産業博物館  NO.20


国立運河博物館 National Waterways Museum

倉庫に港湾遺産を保存

−子供の体験教室も併設−


石田正治  by ISHIDA Shoji


国立運河博物館はかつて穀物倉庫だった

  セバーン川の河口にあるグロスターは、1840年代、イギリス最大の小麦の貿易港であった。海外から集められた穀物は、ここで荷揚げされ、さらに運河を通して内陸部に運ばれた。
 町の中心部、グロスター港を取り囲むように赤レンガの穀物倉庫が立ち並ぶ。セバーン川とグロスター・シャープネス運河の接点がこのグロスターで、海外貿易と内陸物流の要であった。最盛期は一五の資本家の小麦倉庫と二つの船着き場があった。現在、町はそれらの穀物倉庫をはじめ、運河と閘門、埠頭、跳上げ橋など港湾施設全体を歴史的遺産として保存している。
 運河博物館はその倉庫群のひとつ、1873年に造られたラントニー倉庫の建物を整備して1988年に開館した。運河の歴史を主軸に、運河の構造と建設と保全の技術、運河に使われた動力船とその機関、倉庫内の荷役作業の様子などを展示。圧巻は、運河の断面と水門の展示で、その巨大な水門の壁面から水がしたたり落ちている様は臨場感にあふれる。また、トンネルの内壁や漏水点検のために潜水用具が発達する様子、あるいは単純と思われた倉庫内の荷役作業にもウインチや滑車、手鉤、秤などさまざまな道具が使われていたこと、二階から荷袋を下に降ろすにはらせんのスベリ台を使用していたことなど展示を通してよく理解できる。
 屋外の船着き場には蒸気浚渫船、コンクリート船、1944年建造の鋼鉄船サブリナ五号などが博物館の船として係留されている。
 倉庫の隣にある鍛冶と大工の工房も博物館の施設でここでは定期的に作業風景を再現して見せている。工房の隣がスクール・ワークショップ、子供達の体験学習室となっている。
(中部産業遺産研究会事務局長、豊橋工業高校教諭・石田正治)


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