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ALISHA『THE INNER VOICE』

▲オーセーイン『ニャーデカウデ』 レーベル不明(読めない) CDMTR-98040
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ここに収められた曲の大半について、それがビルマ産だとはぼくにはどうしても思えない。多くは日本の、あるいは欧米のヒット曲のカバーだろうと確信する。しかも、音は打ち込み主体。それでいながら、ビルマらしい微笑ましさにあふれた好盤だとこれを断じてしまうのは、声質と言語の賜物というやつだろうか。

実際、このオーセーインなる女性の声は得難く可憐だ。インドシナ半島で好まれる艶のある女声、これは言語とも関係してくるのだろうが、ほにゃら、ねっとり、べったり、べっちょりということでもある。彼女もその系列から外れるものではないが、それを超える軽やかさを有するところが並み居る歌い手とは一線を画す。この一点で、メースイすらもはや敵ではない。世界に通用するアジア声、そんなものがあるとしたら、それはこういう声、このオーセーインの声だろう。

しかも、うまい。
すでに発音し終えて余韻しか残らぬそこにすらこめられた情感が機能する。この点でも、メースイはすでに敵ではない。そして、おそらくはオリジナルとされる日本や欧米の歌い手たちでさえ。ぼくにはわかる。うたは作者のものでもなければ、最初に歌った人のものでももちろんないのだから。ただ惜しむらくは、音域が狭い。そうそう無敵というわけにはいかないのであった。

というわけで、ぼくのお気に入り。
2、3、4と続く3曲がなんといっても強力。2でまず思い知らされるうまさにおっ! そしてヨーデルばりに声が裏返った直後に漂う情感にぐっ! 3は奇矯なラップとの絡みにおおっ? 4は微妙な節回しを犠牲にすることなく突き進むノリのよさにおおおっ! 余韻の胸キュン度ならば9。特にスキャット部でぐぐぐっ!(この4と9は、デビュー時の周慧敏を彷彿とさせる声と曲調で迫る)。でもって、13での声の張りに再びおおっ! ううむ、得難い声だ、やっぱし。

無垢であるとたぶん勝手に信じていたビルマのポップスに、新しい風が吹き始めているらしい。それを呼ぶ女神の名はオーセーイン。覚えておいてほしい名だ。
(99/03/21) text by まるこめAboutMe!
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