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MYLENE FARMER『AINSI SOIT JE...』

▲MYLENE FARMER『AINSI SOIT JE...』  POLYDOR POCP 1001
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ファルメールだとは思いもしなかった。ファーマーだとばかり思っていた。だから、フレンチポップスのコーナーがちゃんと別にある店なのにもかかわらず、イギリスとアメリカだけが洋楽扱いされている棚を必死になって探していたのだ。

そうなのだ。 探している曲がMYLENE FARMERという女性のものであることを、どこかでぼくは目にしたはずだったのだ。その経緯は残念ながらまるで覚えていないが、とにかくぼくはファーマーというアメリカ人だと信じて疑うことをしなかった。だったら、MYLENEはなんと読んでいたかというと、ミ…ミレ…マイ…むにゃむにゃ、とかなんとかお茶を濁していたのだろう。その程度の語学力しかぼくにはない。

ひとしきり悩んだあげく、必ずしもそれは米国人の名前だとは限らないと悟ったぼくは、虱潰しに他のコーナーを見て回った末にようやくこれを、ミレーヌ・ファルメールの『AINSI SOIT JE...』を手に入れることができたのだった。

珍しくジャケ買いではなかった。ある1曲がなんとしても聴きたかった。それが「SANS CONTREFACON/サン・コントルファソン」。目覚まし代わりに鳴らしていた朝のFMから流れてきたのを聴いたのが最初だった。夢うつつなもんだから、英語なのかフランス語なのかも判別できず、というか日本語じゃないんだから英語にちがいなかろと、およそこのフォーラム(当時はまだなかったけど)の会員らしからぬ思いこみに走ってしまい、ただ魅惑的なメロディーだけを頭にこびりつかせていたのである。

というわけで、ぼくにとってのミレーヌ・ファルメールは「サン・コントルファソン」と限りなくイコールであり、アルバム『AINSI SOIT JE...』はそれが収録されているがゆえに貴重なのだ。この曲が、ぼくは好きで好きでたまらない。1回聴いただけで絶対に覚えてしまえるそのメロディー。単純にして明快。誰が歌ってもそれなりにさまになるにちがいない。これはまさにポップスの王道ではないか。何度反復されても飽きがこないわけである。

夢うつつに聴いたときは英語だろうと思ってしまった言葉は、これがなんでそう聞こえる?と自分を詰りたいほどにフランス語だ。当然のことながら。これがまた、なんとも耳に心地よい。一緒になって歌えないのは残念だが、英語ではこの雰囲気は出ないんじゃないかと思う。と同時に、英語圏ではけっして紡がれることのなかったこれは旋律ではないかとも思う。

要するに、フレンチポップス以外のなにものでもないわけですな。それもとびきり極上の。
(98/09/07) text by まるこめAboutMe!
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