BAR
FLOWER TRAVELLIN' BAND『SATORI』

■FLOWER TRAVELLIN' BAND『SATORI』WARNER MUSIC JAPAN WPCL-590

BAR
なんとまぁ古いモノを持ち出して。しかも場違いな。
とか思ってる人、いるだろうなぁ、絶対。……ぐふふ。

「日本語のロック」がキーワードになろうかという70年代初頭、英語であることにこだわったフラワー・トラベリン・バンドが日本、アメリカ、カナダで同時リリースしたのがこの作品。だけども、タイトルは『SATORI』つうぐらいで、禅に凝りはじめた欧米人の受けを狙ったのは明らかだし、しかも、5章立ての組曲のうち「PART 2」と「PART 5」のリズムとメロといったら、そりゃもうはっきり東洋を「売り」にしているわけで、あくまでも日本語にこだわりながら日本の風土にはない乾いた音を追求していったはっぴぃえんどとは実に対照的。

だもんで、どちらがより「日本のロック」たりえていたかというと、それはフラワーの方だったと思うわけ。カナダまで武者修行に出かけ、英語で歌いながらも、日の丸を背負って演奏していた彼らほど「日本のロック」を外へ向けて具現したバンドは今もってないんじゃないかと。

というような言葉をいくつ重ねるよりも、「PART 2」ひとつ聴いてもらった方が話は絶対に早い。ほれほれ、まずはこのドラミング。祭り太鼓みたいで血湧き肉踊ってくるじゃないの。で、続くギターがこれだもんねぇ。東洋からの響き。そう形容するしかないっしょ。

そこへJoe、後のジョー山中のあの非人間的なヴォーカル。 富士山をバックに日の丸立てて、神風に吹かれながら演奏しているような彼らが追分の世界に陥らなかったのは、この暴君が如きヴォーカルのなせる技。

こういうのはねぇ、タイとかビルマとかで絶対に受けると思うんですけどねぇ。欧米でだって、どんな日本のメガヒットよりも興味を持って聴いてもらえるだろうなと。立派なワールドミュージックとして機能しますよ、これ。
(99/02/01) text by まるこめAboutMe!
BAR

[聴かずに死ねるか] [N E X T]