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ガトーン『イープン・ユンピー』

■ガトーン『イープン・ユンピー』  LIGO AGCD 918

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カトーンとも言う。『ジープン・ユンピー』とも言われる。
外国語をカナに置き換えてみたところで、所詮この程度の近似値しか得られないのである。はぅあっ。

タイのロック・バンド。これは、その3枚め。一昔前の作品で、例によってなにを今さらだが、ガトーンの素晴らしさはいつまでも語り継がれなければいけない。
ぼくはそう思い定めていたりする。だから、こいつらのことは何度でも書く。おうとも。何度でも書いちゃる。同じことでも3年もブランクをおけば、初めての発言に等しいのだ、こういう場では。ふはははは。

東洋、それもインドシナ半島以外からは絶対に出てきそうにないフレーズを聴かせる、と今だから言える6曲め、ぼくにとってのガトーンはこの1曲に収斂する。ここにはガトーンのすべてがある。土着的なリズムに大味なギター、そしてなんとも猥雑で摩訶不思議な男女の掛け合い。それはあたかも、とてつもない質量を宿した小さなくすんだ原石。ひとたび封印が解かれるや、ほとばしるエネルギーははかり知れず、採光まさに無限。きっと太古から貯えられてきたものにちがいない。インドシナの地に貯めて、溜めて、矯められて、ようやく吹き出す時を得たのだ。

お手本などない。憧れのスターなどいない。他の誰のようにもなりたくない。
我々はガトーンである。メイド・イン・タイランドである。
そんな主張が聞こえてこないか?

アルバム全体は、しかし、そのような作りではけっしてない。タイに進出する日本企業に対する風刺だとされる1曲めは琴を模したイントロで迫りもするし、アフリカ、イギリス、アメリカといった国々の影響だのパロディだのは随所に散りばめられてもいる。バラエティは豊か。しかして、濃厚なタイ臭は消えず、田舎臭いといえば大いに臭い。洗練などとは程遠い。だが、それでこそのタイ・ロック、それでこそのガトーン。これでいいのだ。
(99/02/08) text by まるこめAboutMe!
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