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NUBIAN MUSIC『EL MAMBOO』

▲NUBIAN MUSIC『EL MAMBOO』 Sure 016
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ヌビアとはいったいどこかと地図を広げてみたら、エジプトとスーダンの国境あたりにヌビア砂漠というのがあるのを発見した。

『EL MAMBOO』。 南ヌビアの若手ミュージシャンたちが集まって、陽気にマンボしてみたら音頭になってしまいましたという楽しいオムニバス作品。これはもしかしたら、ぼくにとっての98年度の一番のお気に入りになってしまいそうでちょっと怖い。いや、別に心底恐れているわけではないんですけど。けっして、キワモノだのイロモノだと貶めているわけではないです。そ、そうとも。うわははは。

男性ヴォーカルのなんとイナセなことでしょう。イナセ。わかります? 漢字で書くと鯔背ですな。江戸日本橋の魚河岸の若者たちが鯔の背びれのような髷を結っていたことから、粋で威勢のいいさまをこう呼ぶようになったそうですが、これを粋で威勢がいいねぇ、ヌビアの兄さん、と言っちゃあしまりがないんで、ここはやはり、よっ、イナセだねぇと声かけるべきでしょう。

ホーンはあくまでも怪しくいかがわしく、絡みどころを心得た女性コーラスともあいまって、聴く者の腰は自然とくねくねと動き出す仕組み。ダンス・ミュージックとは本来こういうものをいうのであろうなぁと思います。お祭り広場だとか櫓の上だとかで演られたらたまりませんぜ、これ。

全9曲中、「Samira」というのが2組のミュージシャンによって取り上げられていますが、ということは、あちらではかなりポピュラーな曲なんでしょうか。他の大物によってヒットした曲だとか。まぁ、ヒットしたんだろうとは思われますね、この曲調なら。しかし、これがなんつうか、メロだけ追ってくとロカビリー全盛時代の、見事に日本語の歌詞が乗りそうな曲で、これまたなんだか楽しくなっちゃいます。「ヘイ、愛しのサミーラ、泣くのはおやめ」なんて、ぼかぁ一瞬にして作詞家になっちまいましたもの。それでいて、日本にはなさそうな声質でイナセに歌われ、リズムはアラブ特有のあの「クヮッ、クヮッ」ですから。奇妙な安心感と違和感のこれは同居ですな。

ま、テーマが日本でも親しまれてきたマンボですから、安心して聴けますわな。メロも異質なものはないし、先のロカビリーもどきといいおそらく万国共通かと思われます。で、ところどころサンタナだったり、トム・トム・クラブだったりするわけですが、それは逆で、彼らが世界に紹介してきたことのルーツがここヌビアにあったということなんでしょう、たぶん。自信ないですけど。はは。

とにかく、シアワセになりたい人は買いの一手ですぜ。
(98/11/01) text by まるこめAboutMe!
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[聴かずに死ねるか] [N E X T]