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シーサーズ『桑木の下でーびる』

▲シーサーズ『桑木の下でーびる』 満月レコード MR1001
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門柱にでも玄関にでも屋根にでも、どこかにシーサーを据えつけたいと思っていた。東急ハンズで小さなそれを見つけたときは、だから、ちょっとうれしかった。ついでにバリ島だかどこだかの魔除けの面も買ってきた。色合いこそちがえ、どちらも似たような顔をしている。狛犬なんかもそうだけど、唐獅子だとかバロンだとかシーサーだとか、もとは同じものなんだろうなぁ、きっと。

というわけで、シーサーズ。名前から想像できるように、基本は琉球の島唄だ。しかし、このふたりの女性は基本に忠実では全然ない。三線2本で富山の民謡を演ったり、小笠原の民謡を演ったり平気でする。でもって、それがひどく美しかったりする。加えて、自作の曲は摩訶不思議ときている。

その摩訶不思議なオリジナル、「かえる」。連想されるキャラは戸川純か山瀬まみ?背景を描くのはつげ義春か滝田ゆう?いつとも知れぬ時代の、どことも知れぬ場所に、シーサーズはぼくをいざなう。その先に今ひとつのオリジナル、その名もズバリ「シーサーズのテーマ」が待っている。気がつくと、ふたりの後ろに付き従って町内を練り歩いているぼくがいる。この曲が続く限りどこへでも、どこまでも行けそうな気が、本当にする。

一番の聴きどころは、しかし、なんといっても富山民謡の「といちんさ」だろう。この歌声の前では時間も、こちらの息の根さえもが止まってしまうかのようだ。拙い三線に拙い歌ながら、胸を打つなにものかがここには存在する。それは、美しいの一言では片づきそうもないし、けなげというのともちょっとちがう気がするが、とにもかくにも、聴いてよかったぁああああああああ。ぼかぁ、心の底からそう思った。

こういう瞬間を体験してしまうと、「聴かずに死ねるか」なんつうことも胸張って言えてしまうわけです。
(98/09/14) text by まるこめAboutMe!
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[聴かずに死ねるか] [N E X T]