東芝編で印象に残るのは、ベンチャーズ『パイク』と酒井司優子の『コンピューターおばあちゃん』の2曲。パイクは東芝を代表するテクノバンドであるヒカシューの代表曲のひとつだ。東芝編にヒカシューが収録されていないのは残念な限り。ベンチャーズがスカに挑戦するということで話題になった加藤和彦プロデュースのアルバム『カメレオン』に収録されているのが『パイク』だったのだ。リリース当時は、テケテケのベンチャーズがニューウエーブに挑戦!といった大仰な見出しが付いていたことを記憶している。
私にとっては、東芝編で、どこがテクノやねんと感じるひとつである。『コンピューターおばあちゃん』は、ニフティサーブのMIDI関係のフォーラムのDLでも見かけることの多い、NHK出身の名曲のひとつだろう。坂本龍一が編曲に、ドラム演奏にと活躍する坂本ファンなら知らぬ人はいないのではないだろうか。この曲を知ったのはNHKのみんなのうただった。生音のようなリズムマシンができたんだと、初めて聞いたときは思っていたが、坂本氏の演奏とはとても考えもつかなかった。
シンセピコピコ系サウンドとしてはテクノ歌謡の見本中の見本といって過言ではないだろう。NHKには(この場合JOAKとするのが適当だろう)、電子音楽スタジオというものが設備されていて、現代音楽の数々が制作されていたという。そんな背景を考えると、NHKが日本のテクノ音楽を引っ張ってきた面は見逃せない。身近なところでは坂本龍一をDJに起用したり、コズミック・インベンション、ヒカシュー、P−MODEL、プラスティックスがNHKの番組に出演していたとて、何ら不思議なことではなかったのだ。NHKにとっては学術的な色が濃い電子音楽の延長に、ポピュラー音楽としてのテクノがあっただけのことなのだろう。 |
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