テクノ歌謡タイトル
ビクター編
[テクノ歌謡シリーズ ビクター編 (P-VINE PCD-1489)
テクノ歌謡ビクター編
収録楽曲
1 俺は絶対テクニシャン/ツービート
2 センチ・メンタル・ボーイ/キララとウララ
3 BANG!BANG!ジンジン1up/チャイルズ
4 コズミック・サーフィン/コズミック・インベンション
5 哲学しよう(アルバムバージョン)/山田邦子
6 女王陛下のチェスゲーム/SPY
7 Love Sick/飯島真理
8 YAKIMOKI/コズミック・インベンション
9 プラチナム・ナイト/松田優作withEX
10 女ともだち/野宮真貴
11 あの娘のウェスタン・ストリート/THE NO COMMENTS
12 So What?/本間哲子 
13 パックンたまご!
   〜空からたまごが降ってきた/キララとウララ
14 火星と金星の陰謀/パッショナータ
15 ダーヴィッシュ・ダンス/THE NO COMMENTS
16 21世紀まで愛して/水谷麻里
ビクターといえば、蓄音機に耳を傾ける犬・ニッパーの商標でおなじみの老舗レコード会社。有名どころとしては灰田勝彦、フランク永井、橋幸夫、青江美奈、オックス、麻丘めぐみ、桜田淳子、田川陽介、ピンクレディー、リンリン・ランラン、最近だとSMAP、サザンオールスターズ、UA、広瀬香美、くるり、デビュー当時のアルフィーなどが思い浮かぶ。忘れちゃいけない、松本伊代、小泉今日子、野村義男&グッドバイ、酒井法子、森進一、林あさ美、まだまだいろいろ老舗は強い。
今回のビクター編を独断と偏見で下記のように分類してみた。異論もおありかと思うがご容赦願いたい。

その1 ツービート、チャイルズ、山田邦子のお笑い系
その2 キララとウララ、水谷麻里、コズミック・インベンションのアイドル系
その3 飯島真理、野宮真貴、本間哲子、
    SPY、THE NO COMMENTSのいわゆるアーティスト系
その4 松田優作、パッショナータの企画系


野宮真貴と水谷麻里は資生堂シャワーコロン系としても分類可能だ。
なんと1枚で4つのパターンが楽しめる凄いアルバムが、このビクター編だろう。電子楽器であるシンセサイザーサウンドがどの楽曲にも溢れていて、歌謡曲の老舗ならではテクノ歌謡の看板に偽りがない。
歌謡曲とはいえテクノという限りは伴奏はオーケストラのように大人数編成ではいけない。あくまでも少人数、理想はクラフトワークの4人、YMOにサポートのギター、キーボード、オペレーターの入った6人くらいが理想だ。リズムやビートを制御するのはローランドのMC系シーケンサー、NECのPC8801だともっと嬉しい。今回のビクター編は、伴奏がスカスカだが、それが今日の隆盛を築くまでのテクノの足跡を感じさせてくれる。では、ここで私自身にとって主な楽曲にふれてみる。
俺は絶対テクニシャンは今をときめく映画監督北野武ことビートたけしの持ち歌。東京おとぼけCatsを従えてハイテンションで歌いまくる。当時、ビートたけしはニッポン放送のオールナイトニッポンでレギュラーを持っていて、TBS−TVの人気番組『ザ・ベストテン』に出たかったらしく(今から思えば多分洒落だったんだろうけど)番組中でリクエストハガキを出してくれと連呼していた。その結果ザ・ベストテンのハガキリクエスト部門では堂々の上位10位に入ったのだが、レコード売上など他のチャートでの成績が芳しくなく、番組出演はならなかった。
コズミック・インベンションはNHK−TVの『レッツゴーヤング』にレギュラー出演していた。YAKIMOKIを歌っていたのが印象的だったが、反面彼らの持つ楽器に嫉妬したものだ。いや、とにかく自分より遥かに若い中学生がレコードデビューするわ、高そうな楽器を持っているわで、まともに聞くことをしなかったバンドのひとつである。だからレコードを買おうと思っていたのに、結局買わなかったんだ。こうしてテクノ歌謡シリーズで出会うことができて嬉しい。
水谷麻里 水谷麻里は、サンミュージック所属だった。過去形であるのは理由がある。既に引退しているからだ。彼女と、投身自殺を図り世を去った故・岡田有希子は同じサンミュージックの先輩後輩にあたる。岡田が先輩で、水谷が後輩だ。1986年春に起きた衝撃的な岡田の自殺は、後追いする若者が続出するなど社会問題にも発展した。水谷のデビューは、岡田の自殺で時期が繰り上がったようだ、いや、彼女の穴を埋めるべく必然となってしまった。

デビュー曲の『21世紀まで愛して』は、先に触れた資生堂シャンプーのCMソングとなり、水谷のファーストアルバム『なかよし』のトップチューンである『地上に降りた天使』は映画の主題歌となり、自身も出演(ただし主演ではない)を果たしている。『なかよし』には松本隆作詞、細野春臣作曲、小西康陽編曲の『パステルの雨』が収録されており、ノンスタンダード時代のピチカートを髣髴とさせるこの曲は、名曲の誉れが高いが、佐伯健三作詞、村松邦男作曲、小林信吾作曲の『ウ・ラ・ラ革命』も捨てがたい。

しかし、その後同じサンミュージック/ビクターから酒井法子がデビューしてしまう。酒井のデビュー曲は、これもテクノ歌謡に形容しておかしくない「オトコのこになりたい」。水谷は法子には負けたくないと、雑誌等で語っていたが・・・。

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【テクノ歌謡ビクター編 番外】
ビクター番外編として個人的に入れてみたい楽曲を選んでみた。
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伊藤さやか ◎天使と悪魔<ナンパされたい編>/SAYAKA(伊藤さやか)
 SV−7219 1982年発売

どうしてこの曲が、このビクター編に入っていないのか不思議な一曲だ。
レコードジャケットのクレジットを見てもMC−8、プロフィット5などテクノらしい楽器陣。なんといってもリズムマシンは、TR808というおまけ付き。
B面のオ・ネ・ガ・イ スーパーコンピューターは、松本伊代の「センチメンタルジャーニー」、倉沢淳美の「プロフィール」などと同様の自己紹介ソング。CP/Mで動作させたトーキングマシーンまで登場する実にテクノな逸品だ。
伊藤さやかは後に大村憲二プロデュースでミニアルバムを発表し、その後ロックに転向する。ビクターを離れTDKコアの第一弾アーティストとして移籍し、伊藤サヤカと改名し「マイゼネレーション」を発表する。ビクター時代は、アニメ「さすがの猿飛」の主題歌をヒットさせた。
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小泉今日子 ◎まっ赤な女の子/小泉今日子
 SV−7301 1983年発売

ロシア民謡風の「春風の誘惑」を最後に、小泉今日子はいわゆる可愛い系のアイドルから決別する。売れないことに業を煮やした小泉本人が、可愛いぶりっ子を演じるのに疲れたというのがその理由とされているという。
髪の毛をばっさり切り落としボーイッシュに変身した第一弾が「まっ赤な女の子」だ。作詞に康珍化、作曲に筒美京平、そして編曲は佐久間正英。
佐久間といえば古くはBOOWY、最近ではGLAYなどのプロデュースを手掛けテクノとしては同じビクターのプラスティックスのメンバーとして、また伝説プログレのバンド四人囃子のベースプレイヤーとして活躍した人だ。
今聞けば、そうも思わないがイントロのシンセサウンドに腰を抜かしてしまうほどの衝撃を受けた、コーラスのボコーダーに眠るのを忘れてしまった「あのアイドルがテクノを歌うなんて・・・」。
アーティスト指向の強い活動をする現在の小泉の礎となった一曲といえるだろう。
あんみつ姫名義で出した「クライマックスご一緒に」も、テクノ歌謡としては捨てがたい。
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松本伊代 ◎月下美人/松本伊代
 SV−9062 1985年10月5日発売

松本隆作詞、細野春臣作曲、鷺巣詩朗編曲という豪華な作品。
細野作品としては同時期に松田聖子の「ピンクのモーツアルト/ガラスのプリズム」もある。
フルートとハープが美しく絡み合う、実に豪華なイントロから始まる。ストリングスに女声コーラスも実にウエットで良い。
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[C ON T EN T S] [東芝/ポリドール編]