第190回 社楽の会報告    第189回へ    第191回へ
                                           
報告者  土 井
2003年6月5日(金)布袋北学供にて、第190回社楽の会を開催しました。参加者(勤務校)を紹介しましす。
土井(大口北部中)、高橋先生(門弟山小)、大島先生(古知野中)、奥村先生(岩南小)、斎木先生(犬南中)、天野先生(大西小)、馬場先生(木曽川中)、早川先生(江北中)、勝村先生(犬山中)、高木先生(犬山中)、川井先生(犬南小)、浅井先生(五条川小)、野沢先生(柏森小)、添田先生(大南小)、池邑さんの15名でした。

☆ 土井より、今回紹介したものの目次です。番号をクリックしてください。

  水野孝一氏講演会
 メディアリテラシー教育研究会中部支部
  エネルギー&環境学習フォーラム
 Web紹介
 教育関連情報
  MM紹介
  研究会紹介
 ワールド・ウォッチ 

 水野孝一氏講演会
 
 6月1日に町民会館で「夢を形に」と題して講演会を行いました。
 水野氏の人間の大きさは驚異的です。さらにその行動力、決断力、人を束ねる力・巻き込む力、人脈、企画力、先見性・・・・どれをとってもすばらしく、これだけの人物を他に挙げろと言われても、知る中でも思い当たりません。そして、このような人物を育てるのが、これからの教育の役割だと思います。
  たとえば・・・・
 名古屋市の協力がどうしても得られない。みなさんならどう問題解決しますか?
 水野さんは、名古屋市長の行きつけの理容店で市長が顔を剃ってもらっている間に仲間とその両脇に座り、
散髪してもらいながら思いを伝えたそうです。
  企業をまわって寄付金を集めてまわっても全然集まらない。そんなときみなさんはどうしますか?
  彼は、マスコミに登場する経済アナリストを放送局の出口で捕まえて、「どまつり」をやったときの経済効果を計算してもらい、それを報道してもらいました。経済効果40数億円という数字が世に出たとたん、企業からの寄付依頼が殺到したそうです。
 今日の講演では、このような例をいろいろと聞くことができました。イベントを成功させるのは「人・もの・金」です。どまつり計画途上で出た問題点を、彼は次々に問題解決をしてしまいます。その能力こそが、これからの変化の激しい社会に必要な能力だと思うのです。
  夢を形に・・・・
  それは、何も特別なことではなく、工夫と努力の積み上げなのです。

 メディアリテラシー教育研究会中部支部
 日本テレビプロデューサーの小山さんに話をうかがいました。別紙で紹介します

 エネルギー&環境教育フォーラム
 5月24日に行われた、エネルギー&環境学習フォーラム ― 研究交流会 in 名古屋 ―の報告です。
 午前中は山田 綾氏(愛知教育大)のワークショップ等が行われました。アクティビティ「大豆・油から見える世界」「つくる人・食べる人」というテーマで,廃油のリサイクル,そして実際に菜種から油を絞る実習などを経験しました。廃油のリサイクルに関しては滋賀県愛東町の取り組みが非常に参考になります。
 午後は有田和正氏の講演と,シンポジウムでした。
 有田氏の「エネルギーは電力やガス,石油だけではない。衣食住すべてがエネルギーであるということを気づかせること」「そのような目に見えないものをどのようにして見えるようにするかがポイント」という提言がありました。
 具体的には「今着ているもの,食べているもの,使っているもの,すべてエネルギーの固まりである」「人が1日を生きるには2000kcalが必要,そのエネルギーは100wの電球を1日中点灯させるエネルギーに等しい」「1uの植物は約3kgの二酸化炭素を吸収する。人間一人が排出する二酸化炭素は?全人類が排出する量を森林が吸収するためにはどれほどの森林が必要か」など,数値化することで考えやすく,かつ飛びつきやすくするということです。
 シンポジウムでは,環境やエネルギー学習では「大切にしよう」とか「守ろう」という子どもなりの結論が先に見えてしまう。これを防ぐために,複数の価値観に出会わせ,その中で自己決定させるという学習の構築を目指しているという静岡県の取り組み,「人間生活を豊かにすることを考えるエネルギー・環境教育であるべき」という三重県の取り組み,「楽しい学習だけで終わってはならない。学校知と生活知との一致を目指す」という長野県の取り組みが印象的でした。
 Web紹介
(1)理科ネットワーク
 このシステムは、科学技術・理科教育のために開発されたデジタル教材を、教育利用に限定して著作権処理し、学校の授業で自由に使っていただくことを目的としています。利用者登録ができるのは、学校の先生です。提供するコンテンツの一例、利用規約などの詳しいことは、ここ
 
(2)中学5教科教材(Word版・一太郎版)のご案内
  @ 中間・期末の達人:FdData
   全国の中学の中間・期末試験で実際に出された試験問題を掲載。
  A 教材の達人:FdText
   中学5教科(英数国社理)の要点と問題。Word版と一太郎版。
   すでに購入された方のために無償バージョンアップを実施中。 http://www.fdtext.com/txt/index.html 
  B 暗記の達人:FdPlay2
   中学英語,社会,理科を一問一答方式でホームページ上で学習。
   中間期末試験や入試対策に最適。毎月1回学習内容を更新。
       http://www.fdtext.com/ply/index.html 
 
(2)校内ネットワーク活用ガイドブック【文部科学省】
  導入方法や事例、さらに近未来の学校のIT環境など
(3) IT授業の実践例のサイト開設 文部科学省
 2005年にすべての教員がITを使った授業を出来るようにすることを目標に掲げている文部科学省は、ITを活用した授業の実践例を紹介するウェブサイト「“IT授業”実践ナビ」を公開した。
 文部科学省が02年3月にまとめた調査では、公立の小中高校の教員で実際にITを授業に使えるのは47.4%だった。同省はこれを05年に100%に引き上げることを目標に掲げ、IT研修を実施しているが、授業に生かすには、実践的な知識が必要だ。同省の検討会議でも、ITを活用したことのない教員、経験の少ない教員に授業の実体を知らせることが必要と指摘された。
 授業の事例を公開している教育機関、団体や自治体はあるが、文章をベースにした詳細な授業案やITを巧みに使った先進的なものが多く、ITになじんでいない教員にはハードルが高かった。
 そこで「“IT授業”実践ナビ」は写真や動画を使いながら、各教科ごとにITを活用した指導の内容、方法、留意点を紹介している。特に動画では、ソフトウエアの機能や使い方など技術的なことより、実際の授業の様子をビデオで撮影し、どういう場面でどのようにITが生かされているかを実感させ、初心者でも「使ってみたい」と思えるようにしている。
 実践事例では小中高校と特別支援教育校の計42例を掲載。ITを使った授業の効果、授業を行うための工夫などの説明が載っている。
【“IT授業”実践ナビ】http://www.nicer.go.jp/itnavi/ 
 
(4)防災教育に有効な情報 
●内閣府「防災情報のページ」 http://www.bousai.go.jp/ 
●防災に役立つリンク集(消防科学総合センターHP内)
●消防科学総合センター    http://www.isad.or.jp/cgi-bin/hp/index.cgi  
●四国の 災害・渇水、情報   http://www.skr.mlit.go.jp/ 
●土砂災害          http://www.sabo.or.jp/      
 
(5)「伝次郎のカレンダー」衣替え
 衣替えにまつわる歴史を簡単にまとめてある。「平安中期のころには、宮中の年中行事のひとつとして定着」歴史ある行事である事に感心。
 
(6)ウールマーク・オフィシャルホームページ「衣替え3原則」
 衣替え時の収納について。「汚れを落とす」など当たり前のものから、「防虫剤は4種類に分類され、違う種類のものを一緒に使うとシミになる」など、家事に力を入れていない人は知らないような情報まで。
 教育関連情報
(1)小中学生の学力調査結果(国立教育政策研究所)
 文部科学省はこのほど、小中学生を対象とした学力調査の分析結果を公表した。調査結果は、国立教育政策研究所のホームページに掲載。
参照:『平成13年度小中学校教育課程実施状況調査教科別報告書』を掲載
【国立教育政策研究所】http://www.nier.go.jp/kaihatsu/jissihoukoku/index.html 
 
(2) 文部科学省は5月15日、中央教育審議会を開き、今後の初等中等教育改革の推進方策について諮問した。中央教育審議会では、初等中等教育の教育課程及び指導の充実・改善方策についてと、義務教育など学校教育に係る諸制度の在り方について、審議する。
参照:第31回中央教育審議会総会【文部科学省】
 
(3)教員出身でない者の校長が全国67人 / 文部科学省
 文部科学省はさきごろ、4月1日付けの都道府県教育委員会等における教員出身でない者の校長任用実績について、発表した。教員出身でない者の校長は、全国67人、うち民間人が58人となっている。
参照:教員出身でない者の校長任用実績(平成15年4月1日現在)について
 
(4)2学期制の成果を公表(仙台市)
 平成14年度から小中学校などで2学期制を導入している仙台市はこのほど、「2学期制等新教育課程の実施状況について調査結果のまとめ」を発表した。調査結果によると、各学校がそれぞれの実態を踏まえ、2学期制をスムーズに導入、教育課程の編成や実施などに取り組んでいることがうかがえる、という。
参照:「2学期制等新教育課程の実施状況について調査結果のまとめ(概略)」を掲載【仙台市】
 
(5)奈良県教委が一般向けメールマガジン発行
 奈良県が都道府県教委レベルでは初めての試みとしてメールマガジンを発行するそうです。読者対象は教職員ではなく一般です。「E―夢(いいゆめ)はっしん!」と名付けられ,6月2日の創刊。
 毎月1日と15日の2回発行で,県教委の業務内容や現在の課題や考え方,方向性などを紹介。学校での新しい取り組み,県内の教育的話題,催し物や意見募集などの情報,県教委課長らによるコラムなどが掲載されます。「E―夢はっしん!」は、Eメールと教育(Education)の頭文字Eを取り,いい夢の実現に向けて発進したいとの思いを込めたそうです。
 発行目標は5000。県教委教育企画課は「教育に関する情報を親しみやすく、わかりやすい形で提供したい」としています。 http://www.pref.nara.jp/kyoiku/  奈良県教育委員会
(6)文部科学省はこのほど、「21世紀の特殊教育の在り方について」の報告を受け、特別支援教育の取り組みについてのホームページを開設した。14年度調査によると、学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能自閉症等、学習や生活の面で特別な教育的支援を必要とする児童生徒数については、文部科学省が平成14年に実施した「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」の結果では、約6%程度の割合で通常の学級に在籍している可能性があるという。
参照:特別支援教育について【文部科学省】http://www.mext.go.jp 
 
(7)教員特有の手当て見直しを(東京都)
 東京都はこのほど、教員特有の手当等について見直しを含め検討を行うことを目的とした、教員の給与制度検討委員会を設置した。これは、国立大学の独立行政法人化に伴い、東京都公立学校教育職員の給与を平成16年4月から条例で定めることとなるため。
参照:教員の給与制度検討委員会(第一次)【東京都】http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/buka/jinji/kyuyo.htm 
☆★☆コメント☆★☆
 個人的には賛成。調整手当はなくなるかわりに、当然時間外手当がつく。試算すれば分かるが、時間外手当だけでかなりの高額になるだろう。きっと、その段階でこの議論は「現状維持」の結論になりそうな気がする。 
(8)求む、表現力・過程考察・コミュニケーション力・多面的判断・科学思考
 東京都教育委員会は、平成15年度の東京都立高等学校入学者選抜受験者の学力分析を行った。分析の結果、都教委では、国語は「適切に自分の考えなどを表現する力」、数学は「過程を考察したり表現したりする力」、英語は「音声による実践的コミュニケーション能力」、社会は「資料に基づき多面的・多角的に考え、判断する力」、理科は「科学的に調べる態度や科学的な思考力」の育成がそれぞれ求められる、との見解に至ったとしている。
 
(9)小規模校がテレビ会議システム使い、合同授業(新潟)
 光ファイバーの超高速ネットワークを利用したテレビ会議システムを通じて、他校との交流授業に取り組む試みが小千谷市内で始まった。市内35か所の公共施設と20の小中学校を結ぶ地域イントラネットが稼働し始めたのは今年4月。
 
(10)元暴走族の少年らがボランティアで落書き消し(栃木)
 元暴走族の少年らが参加して、栃木市内で落書きを消すボランティアが行われた。栃木署や栃木地区職場警察連絡協議会などが呼びかけたもので、元暴走族の少年や警察官、少年指導員など約60人が参加。
 
(11)摂南大学が公的資格を単位認定する制度導入
 摂南大学(大阪府寝屋川市)は今年度から、学生が取得した公的資格に応じて単位を認定する「公的資格の単位認定制度」を導入した。同大学は教育目的として「実践力の育成」を掲げており、実務を重視した教育の一環として、学生の資格取得を支援する。全学部が対象となる。【大学通信】
 単位認定されるのは、TOEIC、基本情報技術者、初級システムアドミニストレータなど23資格。学部・学科ごとに資格の種類が定められ、それぞれ2〜8単位が与えられる。法、国際言語文化、工、薬学部は在学中の全学生、経営情報学部は2002年度以降の入学者に適用する。
 こうした資格を取得すると、各学部の科目区分に応じて、基礎科目または専門科目の単位として認められる。例えば初級システムアドミニストレータは、工学部都市環境システム工学科で専門科目の「情報処理演習1(必修)・2(選択)」として2単位が認定される。入学前に取得した資格も、一部を除いて単位が認定されるが、学部ごとに単位数の上限が定められている。
 同大では昨年12月に、資格取得の実績向上を目指して公的資格取得推進委員会を設立。また、授業とは別に、公的資格の取得やスキルアップを支援するエクステンション講座を開講している。専門学校などから講師を招き、受講料は専門学校の約3分の1となる講座もあって、資格取得に挑戦しやすい環境が整っている。
【摂南大学】http://www.setsunan.ac.jp/ 【国公私立大学入試の詳細/大学通信】 http://www.univpress.co.jp/ 
 MM紹介 
(1)日刊・小学校教師用ニュースマガジン 1164   06/03(火) 
 編集・発行 蔵満逸司 wahaha@po.synapse.ne.jp  読者 6592人 
連載 “面白半分”セレクション 第35回
     成績と呼べば                佐々木彰   assoonas@chokai.ne.jp 
 新学習指導要領が実施されてから、「学力低下」の懸念が様々なところで語られている。文部科学省が平成14年1月17日に出した「学びのすすめ」の中でも学力低下の懸念についてと、それに応じた学力向上対策についてが述べられている。http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/01/f_020107.htm 
 また、私の住む地域でも「学力向上」が地域の教育の最重点課題とされ、学力向上推進委員会なるものが各地で作られている。
 この「学力」という言葉がくせものである。
 何をさして「学力」と呼んでいるのかが分かりにくく、教育関係者の混乱を招く原因となっている。
 本来、新しい学習指導要領が目指していたのは、次のようなものである。
 完全学校週5日制の下、各学校が「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開し、児童に豊かな人間性や自ら学び自ら考える力などの[生きる力]の育成を図ることを基本的なねらいとする。
 このことについては、文部科学省のこのページに詳述されているので、ご参照いただきたい。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/youryou/111/f_020101.htm 
 これが広い意味での「学力」と呼べるだろう。
 新学習指導要領が目指す教育のひとつの目玉として生まれたのが「総合的な学習の時間」である。これについては、うんちく講座No.238「総合的な学習の時間?に答える」で触れているが、要は「世の中ときちんと向かい合い、周りの人々と共存していく人間を育てる」のがねらいである。
 新しい教育が目指すものを簡潔にまとめると、
 ○ 時代の変化に対応して、新しい知識や技能を自ら得ることができる力(生涯学習力)
 ○ 社会の中で、他者を思いやり共存していける態度(社会性)
 の2つになるのではないだろうか。要するに「人間性」を育てることなのである。(教育基本法第1条にも教育の目的として「人格の完成」が謳われている)
 ところが、一般に言われている「学力低下論」は、人間性のレベルでは語られていない。
 いわゆるテストの成績のことである。
 「日本の児童生徒の算数・数学の力は世界で何番目」とか、「我が地域の平均点は、全国平均を3点上回っている」というような視点で語られている。または、「小数のかけ算の計算力が10年前と比較して落ちてきている」というような言い方もされる。
 これは、前述した「人間性としての学力」と同じ視点で語ることはできない。
 私としては、どちらの視点も大切なことだと考える。
 人間性を育てることは、時代がどう変わろうとも教育の根本になることだと思う。
 私は「教育は感化である」と考えている。松下村塾の吉田松陰や、札幌農学校のクラーク博士のように歴史に残る人物を輩出するとはいかないにしても、大人になった教え子たちが「今日の自分があるのは先生の影響が大きい」と思ってくれるような教師でありたいものである。(自分としては全く自信がないが‥‥)
 教え子が卒業後何十年たっても年賀状をくれるとか、結婚披露宴に恩師として招待してくれるとかいうことは、ある意味で教師の教育への評価なのではないだろうか。まあ、それだけで判断できるのではないのだが、教職を何十年やっても、年賀状もほとんどこないとか、結婚披露宴に一度も呼ばれたことがないとなると、当時の指導がどうだったのか心配になってくる。
 しかし、教師は教室で人生論を語るのが仕事ではない。
 児童生徒の人間性を育てるのは、教師の子供への接し方によるものである。これは、新しい学習指導要領の趣旨をきちんと理解し、「総合的な学習の時間」などの指導を正しいかたちで行えば、いっそう効果が上がるものだと思う。
 ただ、教師の日々の指導のほとんどは、教科の学習指導であり、そこでは、知識や技能の習得が主な目標となる。これがちゃんと行えなければ、給料をもらう仕事としてはなりたたない。親御さんから大切な子供をあずかって指導をしている我々が「子供に教えた勉強の内容をちゃんと定着させられなかった」というのであれば、子供にも保護者にも申し訳がない。
 昔の教育と変わったのは、昔は「今、教えていることをきちんと身につければ、一生それが役に立つから、しっかり覚えなさい」というものであったのに対して、今は「今、勉強していることは、もしかしたら将来、役立たずな古いものになるかもしれない。でも、今、勉強しているように、自分の頭で考えるやり方をしっかり身につければ、大人になってから出会ういろいろな新しいことにも、同じやり方で対応できるから、頭の使い方を身につけるんだよ」という立場になったことである。
 ただ覚えさせればよいという指導から、他の学習内容にも転移するような力を育てる指導に変わったのだから、指導方法にも工夫と改善が必要とされる。そのためには「詰め込み式」の指導よりも時間がかかる。それで「学習内容の精選と削減」が行われたのが、今回の教育改革である。
 ただ、教育改革の効果が検証されるには時間がかかる。「子供時代に習得した『学び方』が大人になっても生きる」というのがねらいなのだから、その成果は今の子供たちが大人になってみないとわからない。
 しかし、「今教えている学習内容を使って、将来も生きる力を育てる」というときに、「将来も生きる力を育てる」ために、「今教えてる学習内容」がちゃんと定着していないというのでは、どうしようもない。
 「将来も生きる力が身に付いているかどうか」はわからないにしても、とりあえずは「今教えている学習内容」が定着していなければならない。
 「今日(あるいは今年)教えた学習内容がちゃんと定着しているか」という評価が「成績」である。
 最初に述べた「人間性」が育っているかどうかは、数十年もたたないと評価ができないが、成績は即時に評価ができるはずである。この「成績」が下がっているようでは、新しい教育はやめたほうがよいだろう。
 巷で言われる「学力低下論」は、成績の低下を心配するものである。
 子供の幸せのための教育であるから、成績低下はどんな理由があろうとも許されるものではない。教師は、指導している全ての子供の成績を向上させるのが本務である。
 学習の定着度を評価するテストは適宜行うべきである。その結果が良くなかったとすれば、指導法に改善を加えたり、補充の指導をしたりしなければならない。ただ、そのテストの成績によって、すぐに学力が上がったとか下がったとか言うのは近視眼的に思える。
 企業では経営の改善を図るために、一定期間に到達すべき目標を決め、それに向けて努力をする。例えば「今年度上半期の販売額を前年度比で10%向上させる」などのようなものである。
 これを教育に例えれば、「企業力」が「学力」にあたり、「販売額」が「成績」にあたるだろう。社長が「企業力を向上させよう!」とあいまいな命令を出すだけでは経営の改善は図れない。「販売額を増大させよう!」という具体的な目標が必要である。
 教育現場でも、「学力は育てるもの」「成績は向上させるもの」と明確に意識した上で日々の教育活動を行ったほうがよいだろう。
 もう少し具体的にするならば、「学力」という言葉はできるだけ使わず、「人間性を育てる」ことを教育活動の長期目標とし、これまで「学力向上推進委員会」などと呼んでいたものを「成績向上推進委員会」のように改称したほうがよい。これだけでも現在の教育現場での混乱はかなり解消するのではないだろうか(^^;)
 念押しのようになるが、新しい教育がめざすものは、「知識から知恵へ」ということである。(「知識より知恵」ではない)
 今やっている学習内容についての知識理解・技能だけでなく、将来も生きてはたらく学び方を育てなければならなくなっただけ、学校教育は難しくなった。
 「学力を育てる」という中身には、前述したように「生涯学習力」や「社会性」といった「人間性」を育てることが含まれる。そこをきちんと押さえないまま、テストの点数の上下だけを学力の低下を云々するのは妥当ではない。
 教育現場ではよく「見える学力」「見えない学力」などという表現が使われるが、これはうまい表現ではない。かえって本質が見えなくなってしまう(^^;)
 私としては、定義があいまいな「学力」という言葉はできるだけ使わず、「人間性を育てる」「成績を向上させる」というはっきりした表現を使うことを提唱したい。
 しつこいようだが、どんな学習指導を行ったとしても、成績が低下するのが容認されないことはもちろんである。 <03.05.19>
□関連ホームページ□ http://www2.justnet.ne.jp/~assoonas/WELCOME.HTM 
  
 研究会紹介
教育セミナー関西2003
教育ルネサンス−教え・学び・育ちの原点から−
  教育問題は対症療法では解決しません。教育セミナー関西では、国の教育改革の動きに対応しながら21世紀の教育のあり方を考えてきましたが、8回目を迎えた今回は、教育の本質を語り、教育の原点としての基礎・基本である学力、子どもの育ち、教師、家庭・地域などを問う中で、新しい方向を参加者とともに探り、提言として発信したいと思います。
日 時●平成15年8月2日(土)・3日(日)(9:00受付、9:30開会、16:30終了予定)
会 場●大阪国際会議場(グランキューブ大阪)大阪市北区中之島5-3-51 TEL:06-4803-5555
受講料●10,500円(資料代含む・税込)
(1)ドイツの教育制度とミュンヘン日本人学校
□□中世の面影を残す緑豊かな街
 ヨーロッパのほぼ中央に位置するミュンヘン。南方のアルプスに至る地域には多くの美しい森や湖があり、街のほぼ中心部には、アルプスを源流とするイザール川が南北に流れ、中世の古い街並みを美しく際だたせている。市内には、エングリッシュガルテンをはじめ緑豊かな公園やスポーツ施設が点在し、市民の憩いの場となっている。 
 またミュンヘンはさまざまな「顔」を持っている。有名な美術館、博物館、オペラ劇場等を擁する「芸術の都」、国内最大級の大学や研究機関、ハイテク産業の本拠地等「学術都市」「産業都市」としての顔などである。また、ミュンヘンといえばビール。毎年9月中旬から開催されるビール祭り「オクトバーフェスト」は、世界最大級の民族祭りとして、世界中から700万人以上の人が訪れる。
□□ドイツの教育制度
 ドイツには文部科学省に相当する国家規模の行政機関はなく、各州が教育・学術に関する基本的な権限を有する。そのため州ごとに教育制度上の多少の違いがある。学校制度は4年制の基礎学校(グルントシューレ)の上にハウプトシューレ、レアルシューレ、ギムナジウムの3つが接続する。1960年には、さらに総合制学校が設置された。
 ハウプトシューレは、5年制の中等教育学校で、修了後は就職して職業訓練を受ける。レアルシューレは、就職して職業訓練を受けるほか上級専門学校、専門大学へ進学する道が開けており、ギムナジウムへの転校も可能である。ギムナジウムは、大学進学を目的とする9年制の中等教育学校であり、アビトゥアに合格すれば大学入学資格を得ることができる。
□□ドイツに生活するよさを生かして
 ミュンヘン日本人学校の大きな特色の1つは、外国語教育である。小学部は週6時間のドイツ語、中学部は週4時間のドイツ語と2時間の英会話を行っている。「生きる力」をはぐくみ国際性豊かな子どもの育成を願って「心をときめかせ進んで学習する子どもを目指して〜ドイツに生活するよさを生かして〜」というテーマを掲げ、3年間にわたって研究を進めてきている。ドイツにある学校という特色を生かし、ドイツ語や英語学習を活用し、児童生徒が主体的に取り組めるよう体験的な学習を多く取り入れた学習活動を展開している。
 小学部1・2年では、現地校との交流を定期的に行い相互理解・異文化理解を深めている。3・4年では、貯水場や警察署見学、老人ホーム訪問を行い、ドイツ語を生かして地域理解に努めている。5・6年および中学部では、体験的な活動を多く取り入れた宿泊学習を実施している。また、中学部はインターナショナルスクールと書道、日本の遊び、授業への参加等を通して相互理解と親睦(しんぼく)を深めている。このほかに、5年生以上を対象に2泊3日でスキー学習を実施している。
□□児童生徒数
 ●小=89人 ●中=18人【ミュンヘン日本人学校】mailto:jismkyoshi@doitsu.de
 
(2)ベトナムの教育制度とホーチミン日本人学校
□□エネルギッシュな街
 ベトナムは、インドシナ半島東側に位置するS字型の国。南北に細長い地形、背骨のように国土を貫く山脈、平野に多くの人口が密集し水田を耕す生活、そして中国の影響を受けながら独自に築いたことばと文化、はしで食事をする習慣、仏教と儒教に基づく価値観等何か日本によく似ている点を多く有している。
 ホーチミンは、ベトナム戦争が終結し解放される1975年までは「サイゴン」と呼ばれていたベトナム最大の商業都市である。雨季と乾季はあるが四季はない。もっとも寒いときでさえ26度という常夏の地である。街はサイゴン川の西側に開けており、かつて「プチ・パリ」とも称えられた美しい街並みは、ここ数年急激な変貌を遂げている。市場経済を軸とした自由競争は、ますます街に活力を与えている。
□□ベトナムの教育制度
 ベトナムの教育制度は、5・4・3・4制で、日本の小学校、中学校にあたる年数が少々異なっている。義務教育は小学校の5年間だけである。かつて義務教育は原則無償だったが、最近は学費の徴収がある。また、公立、半公立、民立、私立と、4つの形態の学校が存在する。
 小学校教育では、「読み書きそろばん(算術)」重視で、ベトナム語と算数の授業が多い。学校は午前部と午後部の2部制をとっているところがほとんどである。また、大学進学率が7パーセント程度のベトナムでは、大卒はエリートとみなされる。
□□明るく元気なホーチミンっ子
 朝7時半(早い子どもは7時)。バイクであふれる道路をかき分け、スクールバスが喧騒(けんそう)の真っただ中のホーチミンの街の風を切って走る。バスの中は、朝とはいえ元気な仲間たちのにぎやかな会話がはずむ。30分ほどすると郊外の緑豊かな風景にさま変わりする。ホーチミン日本人学校は、こうした田園の中の自然環境豊かなところに位置する。
 「シンチャオ(こんにちは)!」。警備員や用務員などのベトナム人スタッフとの元気なあいさつで1日が始まる。ベトナム人からは、「ホーチミン探険」と名づけた総合的な学習でいろいろと教えていただくことが多い。ベトナム語はもちろんのこと、ベトナムの遊び、バインミー(ベトナム風サンドイッチ)やホー(ベトナム風うどん)づくりなどの料理、ノンと呼ばれる帽子づくり等々の講師となっていただいている。このような自然なふれあいのなかで現地理解学習が進められている。
□□児童生徒数
 ●小=51人 ●中=9人【ホーチミン日本人学校】mailto:jshcmcvn@hcm.vnn.vn
http://www.j-schoolhcm.net          (海外子女教育振興財団発行『海外子女教育』より)
 

      問い合わせは 土井謙次  syaraku@tcp-ip.or.jp