┃2┃『指導と評価』2003年7月号 のご案内 図書文化ホームページ
特集 文部科学省学力調査を読んで
平成13年度小中学校教育課程実施状況調査について
・・・ 国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部長 西尾 典眞
(要旨)
★国立教育政策研究所教育課程研究センターは、平成13年度小中学校教育課程実施状況調査について、昨年12月の結果概要に引き続き、本年5月、教科別の分析報告書を公表した。
★本調査は、学習指導要領(平成元年告示分)に示された各教科の目標や内容に照らした学習の実現状況を学年全体の集団のものとして把握・分析し、今後の学校における指導の改善に資することをその趣旨としている。
★結果概要では以下の点が示された。
1.あらかじめ、結果を評価するための規準として定めた設定通過率との比較結果から、調査を実施した延べ23教科のうち、20教科については、学習の実現状況は全体としてほぼおおむね良好といえる。
2.社会や算数・数学の小学校第5学年から中学校第2学年までなど10教科では、前回を有意に下回ると考えられる問題数が過半数を占めるといった状況がみられる。
★教科別分析では、内容や領域、評価の観点毎に共通的に見出せる特徴を踏まえながら、例えば、小学校国語においては、相手や目的などに応じて自分の考え方を明確にして文章を構成する力を育成することが必要というように、指導上の改善点を指摘している。これらを参考にした学校での取り組みが求められる。
学力調査を読む −学力生態学の提案−・・・ お茶の水女子大学教授 耳塚 寛明
(要旨)
★透明性の高い調査結果の公表など、今回の教育課程実施状況調査には評価すべき点が多い。
★しかし、ここまでの文部科学省による分析は、学校現場を中心としたミクロな改善に資する目的に偏り、学習指導要領自体の見直しや、教育課程行政のあり方を問い直すマクロな観点を欠く。構造的問題や行政的責任を棚上げにしたまま、現場の奮闘努力を要求することになりかねない。
★文部科学省調査は、その調査設計に由来する限界を持つ。必要なのは、「学力の生態学」である。第一に子どもたちの学力形成を規定する諸要因を仮説的に構築して、それらの要因に関する情報を蒐集すること。第二に、地域や家庭的背景による「社会的格差」の視点をもつことが不可欠である。
意識調査についての分析と考察 ・・・筑波大学助教授 桜井 茂男
(要旨)
★小中学生の8割以上は「勉強は大切だ」と思い、6割から7割は「勉強すればよい成績がとれる」と思っている。
★教科ごとに勉強が好きかどうかをたずねると、小中学生の4割以上は好きだと肯定的な回答をする。
★授業の理解度は教科ごとに異なるが、小学生の6割以上、中学生の5割程度はほぼ理解していると回答する。
★学力との関係では、勉強が好きで(学習意欲があって)、インターネットで情報を集めるような中学生は、学力が高い傾向が見られた。担任教師が積極的に授業行動を行っているクラスの中学生も、学力が高い傾向が見られた。
文部科学省学力調査の活かし方・・・筑波大学助教授 服部 環
(要旨)
★「平成13年度小中学校教育課程実施状況調査」の結果について、学力調査(ペーパーテスト)を中心にまとめた。
★専門家が事前に設定した通過率と実際の通過率とを比較して、報告書は一部の教科を除いて「おおむね良好」としているが、平均通過率が平均設定通過率を超えたのは23教科のうち10教科である。
★前回の調査結果と比較して、通過率が上昇した問題も多いが、低下した問題も多い。特に算数と数学の低下が目立つ。
★素データが公開されたとして、その利用法の一つを提案した。また、学力経年的変化を調べた研究があることを紹介した。
■「図書文化ホームページ」■より転載 (伸)
・・kyositu.comニュース【小学校教育総合情報誌】・・■■■ .....2003-07-14<MON> [vol.439]....より
7 EduMail)))【ワールド・ウォッチ】イラン イランの教育制度とテヘラン日本人学校
□□人のつながり、時のつながり
テヘラン日本人学校はイラン・イスラム共和国の首都テヘランに位置している。乾いた砂漠の街というイメージがあると思うが、じつはそうではない。3000メートルを超えるアルボルズ山脈からの雪解け水が豊富なため、意外に緑豊かな都市である。
人々の多くはイスラム教を信仰し、その教義は絶対的なものである。生活と宗教が密接に結びついている点が、日本とは大きく異なる。神の啓示を生活の指針とし、家族のつながりを大切なものと考えている。日本人が忘れかけている大切なものをイラン人の生活のなかに見つけることができる。
□□イランの教育制度
イランの学校制度は5・3・3制で、大学入学にはさらに1年の就学が必要である。宗教教育、危機管理教育の実施や理数科教育の充実、中学での第三外国語必修などが特徴といえる。また、すべての学年に進級・進学テストがある。これは、2科目以上で落第点をとると学校に通うことができないという厳しいものである。
中学1年の社会科では、「家族のあり方」について1年間勉強する。イラン人が家族を大切にし、週末の公園が家族連れでにぎわうのはこのためかもしれない。
□□あらたな歴史への一歩
ここ数年のイラン政府の柔軟化政策は、テヘラン日本人学校の教育活動にも大きな影響をもたらした。ハタミ大統領の提唱する「文明の対話」は、イラン教育界の重い扉をも開いた。これまで禁じられていた現地校との文化交流に始まり、各国の外国人学校との出会いは、本校にとって本格的な交流活動の第一歩となった。また、市中の公の施設も見学できるようになり、イランの文化に直接触れる機会を持つことができるまでになった。
同校では、現地理解教育の一環として、小学部の1・2年生が、町探険を行っている。今年は、スケッチや自分が撮った写真で近在の公園を紹介し、ガイドブックを作成した。小学部3年生以上を対象にした宿泊学習では、400年前の都イスファハンを訪ね、現地の文化や人々の生活に着目し、それを写真で表現する学習活動を行った。そして写真展「私が見つめたイスファハン」を開催し、大人とは視点の異なる写真に、参観者からは多くの賞賛の声をいただくことができた。
□□児童生徒数 ●小=16人 ●中=5人
(海外子女教育振興財団発行『海外子女教育』より)
8 お勧め新刊書籍ニュース(57) 週刊・教師用新刊書籍ニュース■NO.75より転載
『先生のためのスクールカウンセラー200%活用術』熊谷恵子編/図書文化社/2300円
相談室にこもってのカウンセリングという印象が強いスクールカウンセラーだが、教師と上手に組むともっと効果的。大がかりな取り組みではなく、ちょっとしたことで効果が得られる、スクールカウンセラーを生かすノウハウ集
『育てるカウンセリングによる教室課題対応全書1サインを発している学級』品田笑子・田島聡・斉藤優編集/国分康孝・国分久子監修/図書文化社/1900円
学級は日々小さなサインを発している。これにどう対応するかは、学級担任が最も頻繁に直面し、手腕の問われる課題である。「学級クライシス」に至る前の対応へのヒントを多数示し、問題解決を支援する。
『育てるカウンセリングによる教室課題対応全書2 学級クライシス』河村茂雄・大友秀人・藤村一夫編集(監修、出版社、価格、以下同)
学級クライシスへの対応策を焦点に当て、教師が今すぐできることを提唱。学習権を保障、傷つきを防止して新しいルールを再構築し、信頼と安心の人間関係を回復し手段を立て直すという原理と進め方を子細に網羅する。
『育てるカウンセリングによる教室課題対応全書5 いじめ』
米田 薫・岸田幸弘・八巻寛治編集
いじめとは、他者の「幸福になる権利」を不当に奪う行為であり、決して許されるものではない。発生をくい止め、集団全体で対応と防止に取り組むためのヒューマニスティックな思想と確かに効果を生む方法を提示する
『育てるカウンセリングによる教室課題対応全書7 教室で気になる子』
教師が日々子どもたちに接していてちょっと気になる時の対応をきっかけにして、日常的なかかわりを意図的な教育につなげていくための具体策を探る。
.『育てるカウンセリングによる教室課題対応全書8 学習に苦戦する子』
思った成果を上げられず勉強に苦戦している子どもは多い。彼らの苦戦の要因に働きかけて、援助を進めていくための方策を探る
『育てるカウンセリングによる教室課題対応全書9 教室で行う特別支援教育』
たいていのクラスにLDやAD/HD、高機能自閉症などの軽度発達障害を示す子がいる。行動や障害の特色に応じた対応をイラスト入りで紹介する
『育てるカウンセリングによる教室課題対応全書10 保護者との対応』
教師と保護者は、子どもを育てる同じチームの一員であるにもかかわらず十分に連携することはなかなか難しい。協力して子どもの教育にあたる態勢づくりと、実際の問題解決の方法を示す。
『絶対評価時代のテストの作り方 子どもの力を伸ばす』鈴木節也著/学陽書房/1800円
テストは誰のためにあるのか? 定期テストを廃止し、絶対評価の導入をいち早く実践した著者が、絶対評価・観点別評価等新しい制度に対応したテスト作成方法を説く。実例も多数収録
『学ぶ力と意欲を育てる60のいい話 子どもをやる気にさせるコツ』笹田哲夫著/学事出版/1600円
『子どもを伸ばすほめ方叱り方51のヒント子育てがもっと楽しくなる本』中井俊已著/学陽書房/1400円
「ほめて育てるのが子育ての基本」と考える著者が、「ほめ方叱り方のヒント」を、珠玉の言葉で綴る大きな見出し、温かいイラスト、一文一改行と、新しいスタイルで提示する
『インターネットと総合学習 (シリーズ・インターネットと教育3)』
浅井和行編著・大隅紀和監修/黎明書房/2400円
総合学習で教師の多くはあまりよく考えないでインターネットを使ってきたのではないのか。総合学習の実践を行なう際に、インターネットを教師が子どもに与えるのではなく、子どもが活用できる
ようにする教育実践を提案する
■週刊・教師用新刊書籍ニュース■NO.75より転載