いつも良質の情報を配信してくれるお薦めのメルマガである。今回は、「灌漑」が取り扱われているので紹介したい。
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日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』(中高MM)第796号 2003年10月28日・火曜日発行
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■「環境問題について」(8) 枝廣 淳子(千葉県)
( 前半略 )
平凡社「世界大百科事典」の「灌漑」の定義にはこのように書いてあります。
「農作物を栽培するにあたって必要な水を供給し,土地の農業的生産力を永続的に高めるために,水を耕地に組織的に導き,行き届いた管理のもとに地域的に配分することをいう。もっと簡単にいえば,農作物のために人工的に圃場(ほじよう)へ水を供給することである。作物の生育に必要な水分補給,すなわち干ばつ防止が灌漑の主目的であって,降水量の少ない地域や,たとえ降水量が潤沢でも時期的に作物生育上不足することがある地域において灌漑が行われる」
「灌漑面積」もその1つとして、かなり前から毎年データが載っています。この本の2002〜2003年版から、いくつか数字を紹介します。
・世界の灌漑面積(1999年)は2億7400万ヘクタール
・これは前年比1.1%増
・しかし、一人あたりの灌漑面積は1978年のピーク以来減っており、0.046ヘクタール。
・アジアは世界の灌漑面積の70%を占めている。
・中国が5400万ヘクタール、インドが5700万ヘクタール。2ヶ国で世界合計の41%を占める。
・アジアでは灌漑面積が増加しているが、他の地域は横ばい、またはヨーロッパやオセアニアのように減少している。
・灌漑農地での単位面積あたりの生産量は、降雨依存型農地の2倍に達することもある。世界の灌漑地は膳のウチの18%に過ぎないが、世界の農作物の約40%、穀物の60%を生産している。
・世界の灌漑効率(灌漑した水量のうち、作物が生育するために使った割合)は、平均43%しかない。
・主な理由は、灌漑農地の90%が、湛水灌漑(水田のように農地の全面に水を張る)か、畝間灌漑(畝と畝のあいだに水を張る)だからである。
・灌漑効率を改善すれば、土地と水の生産性を両方とも高めることができる。
・たとえば、テキサス州のハイプレーンズ地域で用いられている散水支管自走式低圧スプリンクラーの灌漑効率は80〜95%。
・食物の根へ直接水をやる点滴灌漑の灌漑効率は95%にも達する。
・現在、世界の淡水取水量の70%が農業用水として使われている。今後、水不足が広がるにつれて、また工業用水や都市用水の需要が高まるにつれて、灌漑に使える水はますます減っていくと考えられるので、水効率のよい灌漑技術が重要になってくる。
灌漑も含めて、水の問題を詳細に幅広く取り上げた本として、『水不足が世界を脅かす』(サンドラ・ポステル著・家の光協会刊 1900円+税)があります。
サンドラ・ポステルさんは、レスター・ブラウン氏の研究仲間で、以前はワールドウォッチ研究所にも関わっていました。その後、水を専門とする自分の研究所を設立しましたが、その後もレスターとよく情報のや
りとりをしているようです。
ワールドウォッチジャパンのHPに、この本の紹介があります。
「日本語版へ寄せて」と第1章 21世紀のキーワードは「水」がこのHPから読めます。灌漑の起こりや、灌漑が文明勃興につながったこと、同時に、奴隷や軍国主義・戦争、土壌の劣化(塩害など)にもつながっていることがわかります。塩害は世界的に大きな問題となっています。
ところで、上記の「地球環境データブック」の灌漑面積の項を読んだとき、「田んぼは湛水灌漑なので、灌漑効率が悪い」という悪い印象を持ちましたが、ちょっと待てよ、と。
田んぼは確かに灌漑効率という側面で見ると効率が悪いのですが、田んぼの役割は稲に水をやるだけではありませんよね。田んぼは、森林と同じように、「緑のダム」の役割も果たしています。まさに「水を湛えている」からこそ、保水や治水の機能を果たしているのですね。
また、水田に湛えられた水はゆっくりと地下にしみこんでいき、地下水となります。田んぼがなかったら、雨水はいっきょに流れ出て、洪水を起こす一方、地下水は補給されなくなって、川はすぐに干上がるようになってしまうでしょう。また、水田は土砂崩れを防ぐ役割も果たしています。
棚田など、段々になっている田んぼは特にわかりやすいと思いますが、田んぼは用水路から採り入れた水を使い切ってしまうわけではなく、次の田んぼ、次の田んぼへと水を回していきます。
私がお世話になっている新潟県安塚町の農家では、そうやって山の上の田んぼから田んぼへと流れてきた水が、最後には、家の前の小川に流れ(この小川にはカワニナがごろごろしていました。季節になるとホタルがいっぱい飛ぶそうです)、それから池に流れ込んでいました。池ではコイを飼っています(食用)。「田んぼに農薬をまいたら、コイが死んじゃう。そんなことはしない」とおっしゃっていました。「ここではつながりが見えるんだなぁ」と思ったことを覚えています。
そして、田んぼに湛えられた水は、涼しい風や美しい風景を作り出します。灌漑効率という指標では測れませんが、「田毎(たごと)の月」という風景と言葉があって、日本はいいなぁ!と思います。
(1)【新潟】11月21日(金) <上越市立大手町小学校>
文部科学省学力向上フロンティア事業指定校・2年次中間発表会
(2)第8回 New Education Expo 2003 in 名古屋 セミナー・展示会のご案内
毎年教育関係のお客様から大好評をいただいております「New Education Expo」を今年はさらにグレードアップして開催いたします。セミナー・展示とも教育を取り巻く最新トレンドと実践事例を中心に、圧倒的なメニューを取り揃えて皆様のご来場を心よりお待ちしております。
主催: New Education Expo 実行委員会
会期:2003年11月26日(水)〜27日(木) 9:30〜18:00
場所:名古屋市中小企業振興会館(吹上ホール)(名古屋市千種区吹上2−6−3)
お問合せ窓口:NewEducationExpo実行委員会事務局
expo@uchida.co.jp Tel:03-5634-6397/Fax:03-5634-4088
参加お申込み方法:Web申込受付開始 10月25日(土)
(3)IT化でここまで変わる!学校と地域!
〜情報共有で、児童・生徒・教師・家庭の心をつなぐ〜
授業が変わる!学校が開かれる!
平成15年12月5日(金)10:00〜17:00 岐阜県糸貫町立糸貫中学校