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(1)− 教育情報 Magazine/ある小学校教師の独り言 Vol.118より
2学期制の試み ― 私の勤務校での取り組み ―「思うまま書き連ねてみました!」
私の勤務校は今年度4月から2学期制を導入しました。このことについてさまざまな問い合わせがありました。私は教務主任という立場からそれらに答えてきました。その内容を思うまま書き連ねてみました。
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今,学校教育では,ゆとりをもって一人ひとりの個性を生かす授業を展開する中で,すべての子どもたちが基礎・基本を確実に習得することが求められている。しかし,昨年度導入された学校週5日制の中,授業時数は大きく削減されており,世間では学力低下が声高に叫ばれている。私たちには,こういった問題に対し,保護者の理解と協力を得ながら,きちんと応えていくことが求められている。これを達成させていくために必要な条件整備が2学期制の導入だったのである。
本校では,「基礎・基本の学力をすべての子につけたい」という教師集団の願いから,さまざまなことに取り組んできた。例をあげると「週時程内に特設された補充学習(わかりたいむ)」「夏休みの自由登校日(夏休み版わかりたいむ)」「モジュール時間割」「毎月の学校参観日」などがこれにあたる。順を追ってまとめると,
・12年度実施 …… 「学校参観日」「自分でつくる夏休み」開始
・13年度実施 …… 「わかりたいむ」開始
…… 「評価規準」と「評価基準」の作成
…… 「教育課程」の見直し(年間授業日数・時数,年間指導計画,日課表など)
・14年度実施 …… 「夏休み版わかりたいむ」の開始
…… 「モジュール時間割」の開始
…… 「評価規準」と「評価基準」の見直し
…… 「保護者用評価基準」の配布開始
…… 「児童自己評価表」の作成,実施
…… 「指導と評価の一体化」の検討開始
14年度,絶対評価導入にあたり,日々の指導のメインとして検討を始めたのが―指導と評価の一体 化―だった。これを進める上で,学期,学期の縛りにとらわれず,1年間を長いスパンでとらえること ができる2学期制はうってつけだったのである。
・15年度 …… 「2学期制」の導入
…… 「指導と評価の一体化」の研究的取り組み開始
以上のような経過を経た上での2学期制スタートである。このような取り組みがあったため,2学期制導入にあたっての大きな混乱は見られなかった。導入への基盤づくりができていたということになる。
なお,実施にあたっては,PTAの諸会合での説明,及び学校通信や学年・学級通信などで理解を求めてきた。
3学期制をふり返ってみると次のような問題点があげられる。
・ 学びのとぎれが多い
4月に学級を立ち上げ,落ち着いた学習状態ができた頃にはすでに通知表作成に取りかかかる。2学期も行事の合間に授業を進めている状態で,12月には通知表に忙殺される。3学期は言うに及ばない。このようなぶつ切り学期では,学びの連続性というリズムを作ることはできない
・ 評価のスパンが短い
絶対評価導入,指導要領最低基準などを考えると,わかるまでじっくり指導することが求められるようになってきている。求められている評価を達成させるには3学期制の学期スパンは短すぎる。
・ 実指導時数(学習として成立する時数)が少ない
3学期制では,学期末には実施時数あわせに苦慮したり,通知表作成のためにテストが連続したりなど,満足できる授業の実施が困難な状況が見られた。
また,2学期制のメリットとして,
・ ゆとりを持って指導できる
6月末から夏休み前まで,11月末から冬休み前まで,この期間もじっくり指導に取り組むことができる。ここで生まれる教師の気持ちのゆとりを子どもたちに還元することができる。
・ 「指導と評価の一体化」が効果的に展開できる
長いスパンで評価可能となることで「指導と評価の一体化」を推進することができる。また,そのことにより,保護者に短いサイクルでのきめ細かい評価情報を提供することもできる。
以上のように,本校にとって,必要に迫られた結果の2学期制導入であった。「はじめに2学期制ありき。では何ができるか?」ではなく「このことをやりたい。そこで2学期制を」という図式である。単に流行だから,という理由で2学期制を導入する学校はないと思うが,導入にあたっては,必要かつ十分な根拠が必要である。よく言われる「授業時数が増えるから」という理由での導入は,あたらない。なぜなら,それほど大差ないからである。私たちは2学期制の導入と「指導と評価の一体化」は表裏一体の関係で,車の両輪として考えて推進していくべきであると考えている。
夏休みが1学期の中に組み込まれるような工夫が必要不可欠になってくるが,これについては以下のように位置づけた。
・「夏休み版わかりたいむ」
学習相談や総合的な学習の個別相談/学習指導だけでなく,追究活動の個別支援
・「自分でつくる夏休み」
長期休業でなければできない継続的な取り組み/総合的な学習への取り組み
・事前,事後の指導
個別の事前指導,個人懇談会での保護者との相談,休み明けの事後評価
評価とは,指導計画に基づき,児童の学習している過程を重視し,身についた資質や能力などを具体的な事実を通して継続的に,かつ適切に看取っていくことである。どんな場合も学習においては,計画Plan→実践Do→評価See→計画Planという流れで,すべての児童に目標の達成を目指した指導が展開されている。つまり,評価とは教科目標の実現状況をみると同時に,教師の指導計画・指導方法等が適切であったかどうかを反省し,系統的に学習指導の改善に生かすために行うべきものである。このように,指導と評価とは別物ではなく,指導に生かす評価を進めることが重要なのである。
さらに,評価は児童にとって,自らの学習状況を知り,自分を見つめ直すきっかけとなり,その後の学習意欲を高めるという目的もある。評価活動を評価のための評価に終わらせることなく,教師にとっては指導の改善に,児童にとっては自らの学習の改善に役立てることが重要である。
このような授業を展開していくためには,子どもも教師もゆとりを持って,じっくり学習に取り組めるような教育課程を編成することが求められる。学期,学期の縛りにとらわれず,1年間を長いスパンでとらえることができる2学期制はたいへん好都合である。
これを進めていく上で,いくつか整備しておくべきことがらがある。
1 ゆとりある教育課程を編成する。
○ 学期の縛り(7月・12月)にとらわれ授業展開
・ 教師が時間的にも精神的にも余裕を持って学習に取り組み,どの子にも「学力」をつけることが可能。
・ 長いスパンでのゆとりを持った適切な評価が可能となる。
・ 子どもの学習している様子,身についた資質や能力などを具体的な事実を通して継続的に,かつ適切に評価する。
・ 指導の結果を評価し,指導内容や方法の改善を行い,次の指導に生かすことができる。
・ 評価結果の蓄積から,評価規準(基準)や年間指導計画,教育課程の改善を図る。
○ 個に応じた指導が可能な体制づくり
評価結果に基づき,個に応じた指導を展開する。
・ 少人数指導の推進
少ない人数ならではの教材や指導法の工夫
・ 「わかりたいむ」の充実
実施内容 ……… ぜひともつけたい力(基礎・基本)
指導方法 ……… どんな指導法で〈例:学年解体習熟度別編制での個別指導など〉
教材等の工夫改善 ……… どんな教材を使って〈例:ドリル,進級テストなど〉
その他の留意事項 ……… 児童の希望選択制
○ 15分モジュール時間割の導入
・ 必要に応じてモジュールを用い,柔軟かつ効果的に学習を進める。
・ 例えば,すぐに補充学習や個別指導を実施したい,反復練習を必要とする内容を帯タイムで実施し たいなど,モジュールを用い,柔軟かつ効果的に学習を進める。
○ 学びの連続を図る長期休業
・ 「夏休み版わかりたいむ」
学習相談や総合的な学習の個別相談
学習指導だけでなく,追究活動の個別支援
・ 「自分でつくる夏休み」
長期休業でなければできない継続的な取り組み
総合的な学習への取り組み
・ 事前,事後の指導
個別の事前指導,個人懇談会での保護者との相談,事後評価
2 評価活動を核とした授業づくり
○ 毎時間の授業を充実したものにする。
○ 「指導と評価の一体化」に基づいた授業を推進する。
○ 教師の評価・評定のための評価から指導に生かす評価への転換
○ 単元を単位とした授業構想を立てる。
○ 教師の評価活動と児童の自己評価を授業改善に生かす。
教師(児童への評価と自己の授業の評価)と児童の毎時間の授業評価
○ 短いスパンでの評価結果を家庭に知らせる。
○ 児童の自己評価を大切にする。
3 家庭との連携
○ 保護者用評価基準と児童自己評価表での報告
○ 7月と12月の個人懇談会と4月と2月の学級懇談会
○ 月1回の学校参観日
―「指導と評価の一体化」を目指した授業の構想―
1 評価活動を中心においた単元づくり
目標の実現を目指し,以下のような一連の活動を展開する。
1)適切な教材を設定する。(多くの場合は教科書)
2)レディネス調査を実施する。〈第1次評価〉
3)指導法を工夫する。
4)評価基準を点検する。
5)指導計画を作成する。
6)授業を実践する。
毎時間の評価〈第2次評価〉を繰り返し,以後の指導法を見直す。
7)単元終了時の評価する。〈第3次評価〉
8)その後,補充(発展)学習を実施すると同時に,指導法や評価基準の見直しをす
る。〈第4次評価〉
子どもたちの学習の様子を正しく評価し「努力を要する」と判断された子への補充学習を行ったり,「十分に達成した」と判断された子への発展学習を行うなど,個に応じた指導を実施する
2 重視したい児童の自己評価
〇 児童自己評価カード(単元ごとに実施)
次のような目的で自己評価を行う。
・児童に学習の見通しをもたせたり,意欲付けをする。
・児童の自己評価能力そのものの育成を図る。
・教師の指導の反省とする。
・教師の評価の参考資料とする。
そのためには,自己評価が可能となる授業を実施しなければならない。目的意識と見通しをはっきり持たせ, どう学習すればよいのかという展望を持たせる
〈単元導入時〉学習前に,この単元では何をどのように学習し,どんな力をつけるのかガイダンスを実施する。
〈本時〉この時間のめあては何なのか。何ができるようになればよいのか。つまずいたときどうすればよいのか。
〈本時終了時〉今日のめあてが達成できたかどうかを自己評価する。
自己評価に慣れるまで時間がかかるが,以上のような授業を積み重ねることで,次第に正しく自己評価できるようになってくる。
学習前に「学習ステップ表」などを配付し,自分はどこで困っているのかを正しく理解させ,子ども自身が納得した上で習熟度別グループを編制するなど,自己評価能力を高めることは学習意欲の高揚にも役立つ。
自己評価表には担任と保護者の所見欄を設ける。児童が自己評価したのち,担任が所見を記入し,家庭に持ち帰る。そして保護者にひと言書いていただき,担任に提出する。単元終了ごとに行われるこのサイクルで,保護者は学習の様子を把握することが可能となる。
【自己評価表の流れ】
〈児 童〉単元終了後,自己評価表記入 → 自分の学習をふり返る。
↓
〈教 師〉「先生から」を記入 → 個々の自己評価をチェックし,ことばかけ
をする。
↓
〈保護者〉「おうちの方から」を記入 → 学習の様子を理解してもらう。
↓
〈教 師〉保存,通知表と共に家庭へ → 個の指導と評価・評定に活用する。
3 保護者への情報提供
〇 保護者用評価基準の作成(保護者の理解と協力を得るために)
月に1回,学年だよりの裏面に単元別に掲載する。
・この単元ではどういう力がつけばよいのか?
・それをどういう観点から判断すればよいのか?
・目標が達成されなかった場合はどうすればよいのか?
以上のような内容を専門用語を避け,できるだけ簡潔,かつ具体的に記述する。ごた ごた書いたのでは読んでもらえない。
〇 児童自己評価表
自己評価後,教師の所見を記入し,家庭へ持ち帰り,学習の様子を知ってもらう。
〇学校参観日
月1回の学校公開日を設定し,丸一日授業を公開し,授業の実際を自由に見ていただく。
4 二学期制との関連
二学期制は「指導と評価の一体化」を円滑に推進していくための状況整備としてきわめて有効である。きめ細かい評価活動を進める上で,7月と12月の学期の縛りは大きなネックとなる。ゆとりを持って授業に打ち込める状況整備が求められる。
さらに,保護者用評価基準や児童の自己評価表などの短いスパンでの情報提供は,通知表が一回少ない分の埋め合わせをしてなお余りある。むしろ,保護者はこのような細かな情報を数多く入手することを求めていると言えよう。
(2)日刊『中・高校教師用ニュースマガジン』(中高MM)第889号
■【新規】「オーストラリア便り」壷坂宣也 オベロンハイスクール
◆ 「人事」
日本では最近、教育委員会主導の人事の他に、校長に少し権限が与えられたり、京都市のように教師の方から希望を出せるようにもなってきま した。私が現在働いているオーストラリアは州によって、学校の人事の
あり方が異なるのですが、今日はその中で私の勤務校があるヴィクトリア州の学校の人事についてお話ししたいと思います。
ヴィクトリア州にある公立学校では、職員の欠員がでた際、最低二つの新聞(州全域で販売されている新聞と地方のみの新聞)に求人広告を出すことが義務付けられています。(また、ヴィクトリア州の教育委員のームページから公立学校の全ての求人情報を常時閲覧できます。)
そこには学校名、教科、担当学年、契約期間、週の勤務時間、連絡先、担当者名などが載せられ、学校に連絡するとさらに詳しい内容の書かれた書類が送られてきます。そして、希望者は履歴書(履歴書の中にはそ
の人をよく知る信頼のできる三名の人の名前と連絡先も記します。
大学生の場合は担当教授と教育実習校の担当者で経験者は教科主任や校長などがそれにあたります。)と希望の意志や自身を売り込むための手紙と学校からの送られてきた書類の中になる質問事項に答えた書類を送
らなければなりません。
質問事項は例えば、「あなたの典型的な中学1年生の授業の一例を示しなさい。」「あなたはクラスの中でどのようにコンピューターを活用しますか。」「あなたの教師としての一番大切にしていることは何ですか
。」など、様々な分野から10個ほど記されています。
学校側は書類選考をする際に校長だけではなく、教科主任や教頭とも話し合うことが多く、選考の際には書類に記された出願者を知る人に電話をかけ、より多くの情報を集めます。その後書類選考をパスした3人に
面接をします。
その際も校長だけが立ち会うのではなく、教頭や教科の担当者も面接に参加し、全員が同じ割合で質問をします。一般的に大卒の新卒者は仕事を取ることが難しく、契約期間の短い仕事や競争の少ない田舎の学校で
仕事をとることが多く、そこで、経験を積んでから、希望する町や契約期間の長い仕事を手にする傾向があります。
また、校長の選考の人事となると、選考の際に教頭、学校の職員(事務職も含む。)の代表者数名に保護者代表者、生徒の代表や教育委員会からの職員も加わります。実力のある人を選ぶために極力コネやしがらみ
にとらわれない様になっています。
三年前に私の働いている学校の近くの公立高校(ほとんどの学校が中高一貫教育)で、新しい校長を公募した際、その学校生え抜きの教頭も含め、数あるベテラン教員の申込者の中から、なんと見知らぬ34歳の女性
が校長に選ばれました。
日本では教員の採用人数が減り、年々各学校の職員の平均年齢が上がっていっているので、34歳の教員というのは若手教員の部類に入れられるのが最近の実情です。年功序列や経験の長さを重要視する風潮がまだま
だ残っている日本ではまず34歳という年齢で校長として認められることはないと言っていいのではないでしょうか。もちろん、その校長は、今、その学校で実力を発揮しています。
また、もう一つの例を挙げますと、私の勤務校で日本の学年主任にあたる役職を公募した際、26歳の他校の男性教員がその仕事を射止めました。その男性はその時点で教員経験はわずか3年でしたから、最初は他の職員も半信半疑で彼を観察していましたが、彼は奇想天外な発想とその情熱で学校に新しい風を吹き込み、ベテランの職員達をアッと言わせました。
日本の学校で学年主任の担当者を選ぶ場合は必ずその学校で何年かの経験がある者の中から選びます。外部のしかも学年主任を一度も経験したことのない他校から転勤予定の若い教師にそのチャンスを与えるなど、全く考えられないことです。
たかが人事といっても、日本とオーストラリアでかなりの違いがあることを分かって頂ければ幸いです。