第212回 社楽の会報告    第211回へ    第213回へ
                                           
報告者  土 井
2004年7月1日(木)布袋北学供にて社楽の会を開催しました。参加者(勤務校)を紹介しましす。
土井(大口北部中)、早川先生(江南北中)、馬場先生(木曽川中)、斉木先生(犬南中)、高木先生(犬山中)、勝村先生(楽田小)、奥村先生(岩南小)、天野先生(大西小)、佐々先生(布袋北小)、池邑さんの10名でした。

☆ 土井より、今回紹介したものの目次です。番号をクリックしてください。

 株主総会リポート
高校入試で世界地理はどう変わったか? その2

 便利Web特集
 教育関連情報
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株主総会リポート
 中学校では授業で「株式会社」のしくみについて学習し、株主総会についても教えます。しかし、これまで一度も出席したことはありませんでした。そこで、2学期の授業に備えて一度見ておきたいと思い立ち、実際に出席したリポートを紹介します。
J社株主総会参加リポート
 時は6月23日、名古屋のホテルへ向かう。入り口前には労組が横断幕、ビラ配り。
 雰囲気は、日教組の全国教研集会に似ている。2回の会場まで、両側をずらりと社員が並んでいる。テレビカメラもあるが、中継するわけではない。
 カメラ、ビデオカメラはもちろん手荷物も持ち込みできない。
 受付で事前に郵送されてきた「議決権行使書」を提示すると、受付表がもらえ、バーコードが貼られる。そして会場に入る。
 会場は入り口から見て左端がいわゆる演壇。一段高くなって、中央に議長席、その両側にそれぞれ8名ずつの役員の名前が貼ってある。向かって左手が社長、その隣が副社長。向かって右は会長だ。その後ろにも席がつくってある。
 株主の席にあたるフロアの部分は、横に40列、前後に50列。場所によってはもっと横が多く、計2,000名分を超える椅子が並んでいる。所々に発言する場所もつくってある。
 もうすでに、最前列2列と中央部5〜6列は不自然に埋まっている。
 後でわかったことだが、その人達がいわゆる社員株主。ラフな姿が目立つ。
 株主席は、男性がほとんど。7〜8割がネクタイにスーツ。
 会場両側には、社員がずらり。耳にイヤホンを付けて、鋭い目つきで見回している。ホテル入り口から会場まで、社員が列をつくって並び、手荷物は預けなければならない。当然、カメラ、ビデオ、テープレコーダーの持ち込みはできない。
 いわゆる総会屋はもう姿を消したのか、全く見あたらない。
 正面には、「○○○○○○株式会社第17回定時株主総会」と書かれた看板がある。
 社長が登壇。
 「議長を務めさせていただきます。」「はい」
 議長がいちいち言う度に、まるで練習したように「はい」という返事がある。小学校1年生の授業を思い出す。例の前に陣取った社員株主の人たちだ。
 はじめに、事務局より、株主の数などの紹介、監査報告があり、いよいよ営業報告。副社長がパソコンで作成したプレゼンを見ながら営業の概況を報告した。
 ここでのポイントが「貸借対照表」と「損益計算書」である。この見方を理解することが、会社の経理を理解する第一歩である。
 「決算書の見方」というサイトがわかりやすい。 http://www.jusnet.co.jp/business/kessan.html 
 ここから質疑が始まった。後は口頭で・・・・

 高校入試で世界地理はどう変わったか? その2
 指導要領が変わって、世界地理の扱いは網羅的から、一部重点型に変わった。その趣旨はわかるが、教科書によって、さらには学校、社会科教師によって扱う国が異なるのは高校入試の問題の作成者にはたまらない。
 この春行われた問題はどうだったのか、前回に続いて検証したい。
 
18 石川県
 赤道の問題。赤道が通る大陸の略図を書く。採点が大変だ。
 説明に当てはまる国の記号と国名を書く問題。ノルウェー、モンゴル、ケニア、イタリアが聞かれた。次が、タイを例に目的の資料を選ぶ問題。そして、オーストラリアの人口の多いところを気温と降水量から考える問題。記述になれていないとできない。
 → ケニアの位置には参った。他に、ナイジェリア、サウジアラビア、ドイツなど。地図に見慣れていないと苦しい。
19 福井県
 ここも工夫が見られる。「太郎さんが〜」のパターンで、時差(8県目)、移民と書かせる、国を選びその国の宗教を書かせる、緯度経度、その後統計問題
 → 手応え十分の問題だ。資料問題で、必要な項目を聞いたものは見たことがない。
20 山梨県
 地域学習と日本、世界を融合した問題。世界では、説明文から国を選ぶ問題。ここでも時差が問われている。次に、日本、南アフリカ、オーストラリア、アメリカ、中国、アルゼンチンの中でのランキング表から自動車の生産量順を選ばせるもの。地図から国を選び国名を書くもの
 → 問題に工夫が見られる。答えがすぐに出るものではなく、
21 長野県
 山梨県同様融合問題。会話の内容から国を地図で選ばせている。世界地理にかかわるものは他に貿易があるだけ。日本と世界のバランスが偏っている。
 → 世界地理がほとんど出ていないのは、これからの傾向か?
22 岐阜県
 地図問題。略地図に描かれていないところ、地図中の距離を計算する問題。
 地図中の仮装国の問題はおもしろい。人口と人口密度から面積を計算する問題、グラフから人口構成の推移・産業構造の変化を読み取る問題があった。なかなか難しい。
 → 仮装国の問題は、暗記中心の学習ではできない。逆に基本的なことが理解できていればできる良問といえよう。
23 静岡県
 記述式として定評のある静岡県。ここでは具体的に紹介する。
 アフリカ北部に斜線が引いていある地図で、「斜線部はアフリカ大陸におけるある気候帯の分布の様子を示している。斜線部が示す気候帯の名称を書きなさい。」と、乾燥帯と書かせようとしている。
 次に、鉄、石炭、原油の産地が記号で示されている地図より、原油の記号を選ぶ問題。そして、日本の鉄と石炭の輸入第1位の国を地図から選ぶ問題。数少ない記号選択の問題だ。
 次が説明問題。「グラフ6は1971年の日本の貿易額の品目別割合を示している。グラフからわかる、当時の日本の貿易の特徴を簡単に書きなさい。」
 次が、自動車の燃費と冷蔵庫の消費電力のグラフから「原油価格の上昇に対し、日本では、エネルギーに関して、どのような取り組みが進められたのか、書きなさい」
 → 説明問題はどちらも簡単ではない。しかし、知識がなくても、考えれば何とかなる。ひごろから考えて書く習慣を授業の中でつけることが重要だ。
24 愛知県
《Aグループ》歴史7問、日本地理4問、世界地理4問より2問選択、公民7問の計20問。かつては地理7問、公民6問であったが、選択問題の影響のためか問題数が変化した。
 世界地理は、冷帯と乾燥帯、小麦と米の栽培地域の図から1問ずつ、タイの輸出入の表からタイの説明を選ぶもの、国内総生産・穀物生産量・観光客数の表よりフランス・ドイツ・スウェーデンを区別するもの。
 → 全体としてはかなり出題傾向が変化した。従来の知識偏重から、思考力を問う問題が増加した。
世界地理に関しても AならB、ではなく、AならBだからC のようにもう一ひねりしてある問題が増えた。よい傾向である。
《Bグループ》出題数は同じ。世界地理では、旅行ルートの地図から説明文・気候帯を選ぶもの、アメリカ横断の様子の説明を選ぶもの、時差の問題。
 → Aグループと同様、これまでとは大きく異なる。アイデア豊かな良問である。
25 三重県
 時差、メルカトルと正距方位図を見ながら正しい説明を選ぶもの、アフリカの国境線が直線である理由を論述、インドと日本の比較表から正しい説明を選ぶもの、オゾン層破壊物質、アメリカ合衆国の農業の特徴
 
 便利Web特集
(1)キッズ平城遷都1300年 http://www.pref.nara.jp/1300/kids/ 
 奈良県の平城遷都1300年記念事業準備室はこのほど、遷都1300年を迎えることの意義や奈良の歴史・文化などを紹介した小学生向けのホームページを開設した。
 未来、過去、共通の3メニューに分けて構成。未来メニューでは、記念事業を詳しく紹介したほか、「記念事業キミならどうする」と子供たちからの意見を募集。出てきた意見の中から、おもしろいものをピックアップして掲載する。平城京エリアを中心とした現代の奈良の道路と現存する社寺を紹介し、平城京の条里制の区割りを再現した。
 
(2)インターネットにかかわるコミュニケーションの指導の充実
 全国連合小学校長会の角田元良会長は6月4日、「佐世保市立小学校での児童殺害事件」に関する全連小としての対応について発表した。アピールでは、子ども一人一人を見守り見抜く目をもった対応の推進、インターネットにかかわるコミュニケーションの指導の充実など7項目を各校での徹底を指示した。
参照:全連小の主張;「佐世保市立小学校での児童殺害事件」に関する全連小としての対応について【全国連合小学校長会】http://www.zenrensho.jp/11-3_2.htm 
 
(3)平成16年版交通安全白書(全文)【内閣府】
http://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h16kou_haku/index.html 
 昨年の道路交通事故による死者数は7,702人と昭和32年以来46年ぶりに7千人台まで減少
 
(4)「参院選」に関するサイト
 参院選の投票日が、7月11日に決まりましたね。今月24日の公示を前に、続々といろんな人たちが立候補を表明しています。今回の争点は、年金やイラク(多国籍軍)問題になりそうですが、さて、どんな結果になるのやら……。「だれに入れても一緒」などと言わず、サイトなどでも情報収集して投票に臨みましょう!
☆参議院   http://www.sangiin.go.jp/ 
オフィシャルサイト。これまでの歩みや現在の活動状況など。キッズページもあり。
☆参議院インターネット審議中継 http://www.webtv.sangiin.go.jp/
審議のライブ中継だけでなく、過去の中継も日付や発言などから検索して見られる。
☆参議院法制局  http://houseikyoku.sangiin.go.jp/ 
参議銀議員の立法活動を補佐。議員提出法律案情報の検索、法制執務コラム集など。
☆Yahoo!ニュース - 2004年参院選 http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/house_of_councillors_election/
今年の参院選に関する最新情報を随時更新。ニュース、社説、コラム、解説と充実。
☆Election  http://www.election.co.jp/ 
選挙情報専門サイト。オンライン世論調査、データベース、突撃取材など興味深い。
☆行政(GYOSEI) http://www.gyosei.ne.jp/ 
全国自治体や政党、議員などのHPリンク集。選挙に向け、各政党の主張はここから。
 
(5)Eスクエア・アドバンスのホームページ http://www.cec.or.jp/e2a/ 
 
(6)教職員の懲戒処分の基準を制定(栃木県)
 栃木県教育委員会はこのほど、教職員を対象とした懲戒処分の基準を制定した。また、平成14年に制定した懲戒処分公表基準の一部を改正も行った。懲戒処分の基準では、非違行為と具体的処分内容を明記している。
http://www.pref.tochigi.jp/kyouiku/tyokai/top.htm 
 
(7)「夏の健康」に関するサイト■
 夏本番!までにはもう少しありますが、既にジメッとした暑さに体調を崩されている方もいるのでは? 夏はつい油断しがちですが、夏風邪を始めとする病気、そして事故も多いですね。特に子どもや高齢者には注意したいもの。正しい知識で予防をし、元気に夏を乗りきりましょう!
☆夏を乗り切る!ミネラル補給http://www.health.ne.jp/theme/index.html 
日本人に不足しがちなミネラル。消費量が増える夏は特に注意。上手に補給しよう。
☆夏バテ対策:薬と健康おくすりナビhttp://www.okusurinavi.com/bate_0307/ 
日常簡単に実践できる、具体的な予防法・解消法で、つら〜い夏バテにさようなら。
☆ドクターQ&A 気をつけたい食あたり・食中毒
http://www.selfdoctor.net/q_and_a/q_a.html 
死に至る危険もある食あたりや食中毒。正しい知識で予防を。応急処置方法なども。
☆東京消防庁<7月の防災キャンペーンテーマ>
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/camp/2002/camp0207.htm 
水や花火による事故についての発生状況、事例、予防法、遊び方のポイント等解説。
☆Dr.赤ひげ.com 子供の健康 http://www.drakahige.com/FAMILY/CHILD/ 
子供の健康について実に幅広く解説。子供の健康SOSに「夏に多い子供の病気」あり。
☆COOKPAD http://www.cookpad.com/main.cfm?Go=recipe&Page=result&KID=29 
夏のレシピがズラ〜リ。どれも簡単なのがうれしい。これで夏を元気に乗りきろう。
 
(8)バイオマス燃料専用車の開発
地球温暖化防止の観点から、化石燃料を使用せず「カーボンニュートラル」の特性を有しているバイオマス燃料を使用した自動車の開発が、平成18年3月を目標に進められる。既存のディーゼル車と同程度の燃費と出力性能を保ちながら、窒素酸化物や粒子状物質の排出を新長期規制値の1/2〜1/4以下に削減。http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/09/090628_.html 
 
(9)33語の外来語言い換えの提案(国立国語研究所)
 国立国語研究所「外来語」委員会は6月29日、「外来語」言い換え提案の中間発表を行った。今回は、「スキル」「ユニバーサルデザイン」など33語の外来語の言い換えについて提案した。提案内容について、7月29日まで幅広い意見を募集している。
http://www.kokken.go.jp/public/gairaigo/Teian3_tyuukan/index.html 
 教育関連情報
(1)学級がうまく機能しないが86学級(埼玉県)
 埼玉県教育委員会はこのほど、公立小学校における「学級がうまく機能しない状況」の実態を調査結果を発表した。うまく機能しない学級は81校、86学級で、全体の0.68%を占める。学級数は前年度より増加している。
http://prosv.pref.saitama.jp/scripts/news/news.exe?mode=ref&yy=2004&mm=6&seq=199 
☆★☆コメント☆★☆
 このような調査は必ずしも実態を反映しない。ただ、長い目で見た場合、数字の推移は意味を持ってくる。ともかく、教育委員会にとっては表に出したくないこのような数字を公表したことに敬意を表したい。
 「学級がうまく機能しない」がいわゆる学級崩壊を意味するとしたら、この数字は実態とはほど遠いのではないだろうか。表に出したくない気持ちは理解できるが、個人的には事実を受け止めることから改善が始まると思っている。こうして数字に出した学校の勇気を讃えつつ、今後の健闘を祈りたい。
 
(2)不登校への対応と学校の取組について(国立教育政策研究所)
 国立教育政策研究所はこのほど、生徒指導資料第2集「不登校への対応と学校の取組について −小学校・中学校編−」をホームページに掲載した。同資料では、不登校について考え方、どのように対応するか、魅力ある学校づくりへの取組などに言及している。
http://www.nier.go.jp/shido/hutoukou2/honbun.htm 
☆★☆コメント☆★☆
 不登校に特効薬はない。よく原因とされることはきっかけに過ぎず、多くの場合はもっと複雑な要因がある。そのため、改善のための方法も個々に異なり、それが特効薬はないといわれる所以である。
 ここには12の事例が紹介されている。これらの方法を参考にしつつも、本人・親と向き合い、アイデアを生み出すしかないのが不登校の指導だ。アイデアを生み出すための参考としては、価値のある資料である。
 
(3)青少年と携帯電話に関する調査研究(警察庁)
 中学生では非行少年の方が携帯電話所持している割合が高いー警察庁がこのほど発表した「青少年の意識・行動と携帯電話に関する調査研究」の結果、明らかになった。高校生では、携帯電話の通話料のためアルバイトした者が非行が顕著に多い。
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen16/keitaityousa.pdf 
☆★☆コメント☆★☆
 携帯電話について、非行少年と一般少年を調査して比較している。明らかに非行少年の使用率が高く、携帯電話が仲間づくり、社会からの逃避のためのツールとして使われていることがわかる。
 ただ、携帯電話そのものが悪いわけではないことは確認しておきたい。それだけ便利であり、使い方によっては大きな力になりうるものである。大きな力になるように、知恵を使っていきたい。
 
(4)配置ミス判明し、担任が突然不在に 
 愛知県の小学校で、教員が県の定めた基準より1人多く配置されていることがこのほど、分かった。このため同県教委と同市教委は、1学期途中の7月1日付で2年生の担任の女性教諭を、市内の他の小学校へ異動させることを決定。同小では、教務主任が担任を兼ねる緊急対策をとる方針。
 同小は全校児童32人の小規模校。1・2年はそれぞれ1クラスずつの単式学級で、3・4年と5・6年はそれぞれ、2学年で1学級の複式学級をとっている。県の教員定数の「配当基準」は、単式の2学級の児童数が計9人以上の場合、専科教員1人を配置することを定めている。1・2年でこの要件を満たした同小は昨年度まで、専科教員1人の配置を受け、校長、教頭を含めた計8人が指導に当たっていた。
 ところが県教委が今年5月に確認したところ、今年度は1・2年生の合計が基準未満の8人に減少していたにもかかわらず、専科教員の配置を受けており、その女性教諭が担任として2年生を受け持っていることが判明した。
 これを受け、県・市両教委は、女性教諭の他の小学校への異動を決定。校長は6月18日に開いた保護者説明会で謝罪し、兼務では忙しすぎるため教員OBに授業のフォローを依頼することなどの対策を説明した。
 同県教委の担当者は「県・市両教委のチェックミス。教育上、年間を通じて担任を続けてほしかったが、基準に従うしかない」と責任を認め、同市教委は「県のコメント通り」と説明を避けている。
☆★☆コメント☆★☆
 内容についてコメントする立場にないが、関係の方々のご苦労を思うと心が痛む。「自分がその立場ならどうしただろう?」とつい考えてしまう。
 人間、ある程度までのミスは仕方がない。大切なのは、そのミスをどう処理したかであろう。今回の場合、気づいた時点でどう対処するか。この記事にあるように、学期の途中でもあくまで筋を通したことは英断だと思う。が、そこに至るまでに大きな苦しみがあったであろうことは十分に想像できる。
 
 メルマガ紹介
(1) Vol.135 ──────────────────────── 2004/ 6.20(SUN)◆
          教育情報 Magazine/ある小学校教師の独り言

 いつも紹介している島原先生のメルマガである。島原先生の教育論はどれも秀逸であるが、なかでも評価関係は特に参考になる。今回の「自己評価」もわかりやすい表現の短い文章のなかに、自己評価ポイントが述べられている。わかりやすい文が書ける人が本当にわかっている人だ。
 
 これからの評価に欠かせない「自己評価」
 子どもたちに学力をつけるための手だてとして「指導と評価の一体化」がさかんに叫ばれています。このことについて私が「教材開発誌」7月号に書いたものを掲載します。まずはお読みください。
 ……………………………………………………………………………………………………
 評価には三つの側面がある。A.教師がする子どもの評価,B.子どもがする自分(たち)の評価,C.教師がする教師の評価、以上3つである。「指導と評価の一体化」と言った場合の評価は、これら3つの評価が一体となって実施されなくてはならない。
 A.の評価(いわゆる成績をつけるための評価)のみを中心視する教師は未だ多い。B.は子どもたちの自己評価、相互評価であり、C.は教師の自己評価である。
 子どもの学習状況の評価は、学習目標の到達状況をとらえる( A)と同時に、指導方法が適切であったかどうかをチェックし、指導の改善に生かさねばならない( C)。
 また、実施するにあたっては、長いサイクル(単元ごと)と短いサイクル(毎時間)の評価を考えねばならない。毎時間の学習指導において、子どもたちの学習状況を細かく見取り、その時間の目標に到達できなかったと判断される子には適切な補充指導を行う、また、本時の自分の指導はこれでよかったのかをふり返るなど、以後の指導に生かす評価を行うことが授業を改善し、そして授業の力量を高めていく。
 また、B.の児童の自己(相互)評価も大切にしたい。評価は教師だけがするものではない。児童にとっては、自らの学習状況を知り自分を見つめ直すきっかけとなり、その後の学習意欲を高めるという目的もある。
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 この3つの評価で,もっとも重要視したいのはB.の児童の自己(相互)評価である,と最近考えるようになりました。
 教師が子どもを評価して,力がついたかどうかを判断し,目標を達成できなかった子に対して手当をします。これが評価の側面の1つです。
 しかし,目標を達成できたかできなかったかを,子ども自身が適切に評価できればこれに勝る評価はないと思うのです。これができれば「授業改善」という評価の2つ目のねらいも満たすことができます。
 このためには,子どもが自己評価できる授業をする必要があります。もっとも簡便な方法は「授業開始時に今日の学習のめあてを知らせ,終了時にふり返らせる」というものです。私はこれを実際にやっていますが,継続して実践するとかなりの自己評価力がつきます。時間がかかると言われる方には,挙手ですませる方法もあります。たったこれだけのことですが,まずはやってみることです。
 参考までに,大阪教育大の田中博之氏の「総合的な学習における自己評価力」についての考え方を紹介します。
 ……………………………………………………………………………………………………
 自己評価力には次のような8つの下位能力が含まれていなければならない。これは課題設定から友達との相互評価や自己改善まで含めた広義の定義づけになっている。
 □ 自分の学習課題を適切に設定することができる。
 □ 自己成長課題を適切に設定することができる。
 □ 既成の観点にしたがって自分の学習成果を評価することができる。
 □ 自己設定した観点にしたがって自己の成長を評価することができる。
 □ 自分の長所や学習成果をより伸ばすための方法を考えることができる。
 □ 自分の短所や学習の不十分な点を改善する方法を考えることができる。
 □ 他者からの評価を参考にして客観的な自己評価をすることができる。
 □ 自分の得意なことや自信が持てることについて自覚することができる。
 この定義の中に、課題設定を入れたのは、自分の問題解決や自己成長にとって何が適切な課題であるのかを判断する力も評価力であると考えたからである。また、学習成果という用語は、必ずしも学年や単元の終了時というように考えずに、単元途中での中間評価も設定可能であるから、常に過程にあるものというようにみなすことが大切である。
 このような下位能力が明らかになることによって、それぞれの力を、総合的な学習の各単元において、さまざまなシートやカード、そしてビデオカメラやコンピュータなどのメディアを用いて意図的・計画的に育成することができるようになるのである。
 
(2)   ☆〜☆ わかりやすい! 歴史用語解説  ☆〜☆

 「大場佳代の楽しくヒストリー」のメルマガ。歴史の用語が毎回ワンポイントでわかりやすく説明されている。バックナンバーを読むこともできる。私は、授業中にもよく使うサイトである。
 
=第326回= 士族反乱(しぞくはんらん)<明治時代>
士族反乱とは、1874年〜1878年に、新政府の政策に不満をもつ士族が起こした反乱のことです。
 
明治維新後、武士の特権は、次々に剥奪されていきました。徴兵制が施行され、秩禄処分が進行する中、大多数の士族は、軍人や官僚にもなれず、将来への不安からくる不平不満を持っていました。
この不満を解消するため、朝鮮侵略に士族を活用しようと、征韓論が強くなっていきます。しかし、1873年、政府内部で、征韓論が敗れ、西郷隆盛や板垣退助などが下野すると、不平士族が結党し、組織的な政府批判行動を取り始めるようになりました。
まず、1874年に、佐賀では、征韓論に敗れ下野した元司法卿の「江藤新平」を擁し「佐賀の乱」が起こりましたが、大久保利通らの政府軍はこれを徹底的に鎮圧し、呼応する動きを抑えました。
しかし、1876年に廃刀令が出され、更に最終的な秩禄処分が行われると、収入を失った士族の怒りは頂点に達し、熊本県で「神風連の乱」、福岡県で「秋月の乱」、山口県で「萩の乱」と立て続けに反乱が起きました。
密接な連絡をとった連続蜂起でなかったため個別に鎮圧されましたが、翌1877年、西郷隆盛ら鹿児島県士族による「西南戦争」が起きました。
この反乱が終結後、士族反乱は終息に向かい、1878年、大久保利通が暗殺された「紀尾井坂の変」が最後となりました。以後、政府に対する抵抗は、自由民権運動に移っていくことになります。
★ホームページ★ 是非遊びに来てね!バックナンバーもあるよ!
          http://www.pat.hi-ho.ne.jp/hirosilk/   
 
(3)よみうり教育メール        発行日:2004.06.29(vol.928)
                    発行者:読売新聞社    http://www.yomiuri.co.jp/ 

 教育は讀賣か毎日。メルマガも良い意味で競っている。よみうり教育メールのウリは「相談コーナー」。いつも「自分ならどう答えるか?」と考えてから専門家の回答を読むことにしている。そうするとあらたな発見があり、自分の考えのいたらなさを自覚できる。ただ、時々、「現実はそう甘くはないぞ」と思う回答もあるが・・・  
 
=相談コーナー= 不登校の中1長男
【相談】
◆中学1年の長男が不登校気味です。小学5年ごろから不登校が始まり、6年では欠席日数が60日を超えました。母親に暴力をふるったり、家の物を壊したりするなど家庭内暴力もあります。勉強の不足を補う意味で、1週間に1回家庭教師をつけています。これはなんとか続けていますが、今後どうしたらいいかアドバイスをお願いします。 ―――自営業、男性
【回答】
札幌自由が丘学園代表 亀貝一義
●不登校の問題を考えることは、同時に教育と学校について考えることになります。子育てとか人間の成長といったテーマにも通じる問題だとつくづく思います。文部科学省も言っているのですが、目標は、児童生徒の社会的自立に向けて支援することです。
 考えて欲しいことは、お子さんの家庭内での行為についてです。子供たちは、「自分を分かって欲しい」という悲痛な叫びである場合が多いのです。あるいは愛を求めていると言っていいかも知れません。本当に暴れたいとか他人を傷つけたいと思っているのではありません。話を聞いてあげ、一緒に何かをすることを考えてみて下さい。外食、スポーツ、自然に触れる、何かのテーマについて話し合うなど、いろいろあると思います。
 教育は、子供に対して有効なことを要求することと、子供の今を受け入れることの2つを必須の要件にします。この要求と受容のかかわりが教育の本質だと思います。ただ、子供の今日の事情の下で、ある時には受容だけが表にたつし、ある時には厳しく要求することもあるでしょう。不登校の子供に対応する場合の主要な面は受容だと思います。
それを前提として何をいつどういう方法で要求するか、最低のものは何かを考えてみて下さい。
 いくつかの確認事項を記せば、1人ひとり成長のスピードも道筋も皆違うことです。
「みんな違ってみんないい」のです。そしてダメなことは、父親の使命として「世の中のつらさを知らせてやる」という行為です。「こんなことでくじけてはだめじゃないか。
花も嵐も踏み越える意気込みを持て」と言っても、無意味です。気長に構えて下さい。「どのくらいの期間待てばいいでしょうか」とも聞かれますが、それもわかりません。しかし、それほど長期間ではありません。不登校が早い時に始まれば、それを克服するのも早いはずです。家庭教師をお子さんが拒否しないのであればそれは大事にしてあげてください。
回答者 かめがい・かずよし。私立高教諭(社会科)を退職後、1990年から札幌自由が丘教育センター専従役員。不登校の児童、生徒のための居場所、学びの場所として93年11月にフリースクール「札幌自由が丘学園」を開設、運営にあたる。専門は不登校、中退、進路指導など。
 

      問い合わせは 土井謙次  syaraku@tcp-ip.or.jp