(1)M M M * No.179] 2008年5月23日発行
連載 「数え方、はじめの一歩」 その5
―魚市場で探そう! いろいろな魚介類の数え方― 中央大学 准教授 飯田 朝子
今回は魚介類の数え方を取り上げてみましょう。水族館に行くと、水槽の中を泳ぐ魚たちは「1匹、2匹」と数えます。しかし、ひとたび水揚げされて魚市場に並ぶと、さまざまな数え方が出てきます。
市場に並ぶ魚類は、一般的には「1尾(いちび)、2尾(にび)」と数えます。これは魚に尾があるからです。サンマやタチウオなどの細長い形の魚は「1本、2本」とも数えます。ヒラメやカレイ、タイは平面的な形をしているので「枚」、干物にするために開いた魚も平面的ゆえ「1枚、2枚」です。
イカは「1杯、2杯」と数えます。これはワタ(内蔵)を除いたイカの胴体の部分が盃(さかずき)に似た形をしているためだと言われています。イカ徳利(とっくり)やイカ飯は、イカの胴部の空洞を器として利用していますね。ホタルイカのように、内蔵も一緒に食べる小型のイカは「1個」と数えます。アワビもカニも「1杯」と数えますが、これはアワビの殻やカニの甲羅(こうら)が器のような形をしているためです。
カニの数え方は地域によって多少異なり、北海道ではカニを「1尾、2尾」と数える地域もあります。尾がないカニをなぜこう数えるのか不思議ですが、カニには“ふんどし”と呼ばれる腹節(ふくせつ)があり、その形が尾に見えることからこの数え方を使うとする俗説があります。
アサリやサザエなどの貝類は「1個、2個」と数えますが、シジミ程度の大きさになると「粒」でも数えます。ホタテは形が平面的なので「1枚、2枚」と数えます。しかし、ホタテには「玉」という数え方もあるのをご存知ですか?
そう、貝柱の数え方です。丸くてみずみずしい貝柱を玉になぞらえて「1玉、2玉」。ですから、市場では「殻付き」や「貝柱」と言い分けなくても、「ホタテ1枚」なら殻付きのホタテ、「ホタテ1玉」なら貝柱を、それぞれ指していることが数え方を手掛かりに分かるのです。
タラコは「1腹(ひとはら)、2腹(ふたはら)」と数えます。「腹」は、メスが1回の産卵で産む卵のひとまとまりを表します。タラコ1腹は卵塊2本分、スケソウダラの1回の産卵分の卵の量です。もしタラコを1本だけ買いたいなら「タラコ1本ください。」ではなく「半腹(はんはら)ください。」と言います。
ニシンの卵・カズノコには「1羽(ひとはね)、2羽(ふたはね)」という数え方があります。黄色いカズノコを、鳥の羽に見立てた洒落た数え方です。魚市場に行く機会がありましたら、ぜひ魚介類の数え方にも注目してみてください。
(2)田中宇の国際ニュース解説 2008年6月1日 http://tanakanews.com/
★自衛隊機中国派遣中止を解読する
中国の四川大地震の被災地に救援物資を運ぶのに自衛隊の輸送機を使う日中間の計画が、実施直前に中止された。中国派遣は、自衛隊が、極悪イメージの旧日本軍とは違うことを中国の人々に宣伝できるものだったが、実現しなかった。
日本では「自衛隊機を使った救援物資の輸送は中国政府が要請してきたことなのに、中国内部で反対意見が多いのでやっぱり止めてくれと言ってくるとは、なんて失礼な奴らなんだ。やっぱり中国人は信用できないね」といった感じの世論になっている。中国では「中国政府は自衛隊機の派遣を頼んでない(来たいなら来てもよいとしか言ってない)のに、日本のマスコミは中国が要請したかのように歪曲して報道した」と報じられている。
自衛隊機派遣中止について考察するにはまず、この間の経緯を見ながら、誰が頼んで誰が反対したのかを考える必要がある。5月12日に四川大地震が起きた直後、日本政府は中国政府に、物資や資金の援助、救助隊の派遣と並んで、要請があれば自衛隊機の派遣もできると提案していた。中国は、日本からの提案に沿って、最初は物資と資金の援助を日本に頼み、次は救助隊の派遣を頼んできた。
そして第三弾の要請として中国側は5月28日に、不足しているテントなどの救援物資の援助を日本側に頼み、物資を日本から中国に運ぶために自衛隊機を飛来させてもかまわないと言ってきた。翌5月29日、福田内閣は中国政府との話がまとまりしだい、自衛隊機を派遣することを決めた。
しかし、同日の北京での日中の会合では話がまとまらず、翌5月30日、福田内閣は「中国の国内で自衛隊機の派遣に対する慎重論があるので、今回は自衛隊機を使わず、民間機で送ることにした」と発表した。中国政府が自衛隊機派遣に反対してきたのではなく、日本政府が独自に中国国内の反対意見について勘案した結果、派遣を見合わせることにしたという説明だ。
(2)裁判員制度メールマガジン 第13号 2008年5月28日発行
「特 集」 裁判員豆知識
今回は,裁判員制度が日本独自の制度であるということについてお話したいと思います。
国民が司法に参加する制度というと,アメリカなどで行われている「陪審制度」やドイツなどで行われている「参審制度」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
では,裁判員制度は,これらの制度とどう違うのでしょう。
陪審制度は,事件ごとに無作為に選ばれた陪審員が,被告人が有罪か無罪かの判断(事実認定)を行う制度です。有罪とされた場合にどのような刑にするか(量刑)は,裁判官が決めます。
参審制度は,裁判官と法律家以外から選ばれた参審員が一緒になって裁判を行う制度です。国によって異なりますが,たとえば,ドイツでは,参審員は,5年の任期制で,かつ,議会の同意を得て参審員候補者名簿が作成されるなど,いわばパートタイムの裁判官に近い存在です。
裁判員制度は,裁判官と法律家ではない裁判員が一緒に判断を行う点では参審制度と共通しますが,裁判員が事件ごとに無作為に選任され,より多様な国民の感覚や視点を裁判に反映しようとする点で参審制度とは異なります。
他方,裁判員は,事件ごとに選任される点では陪審員と同じですが,事実認定だけでなく,量刑判断も行う点で陪審制度と異なります。
このように,裁判員制度は,事件ごとに無作為に選任された裁判員が裁判官と一つのチームを組んで,事実認定と量刑の両方の判断を行うという,陪審制度・参審制度とは全く異なる,日本独自の制度だということができます。