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報告者  土 井
 2009年1月22日(木)布袋北学習等供用施設にて社楽の会を開催しました。参加者(勤務校)を紹介しましす。
参加者は,土井(岩南中),高木先生,大野先生(犬山中),尾関先生(岩倉市教委),大島先生,柴田先生(草井小),奥村先生(岩南小),早川先生,木本先生,吉村先生,仲井先生(江北中),小澤先生(扶東小),野口先生(城東中),野沢先生(宮田中),織田先生(扶桑中),天野先生(大口町教委),高橋先生(曽野小)の17名でした。

 今日は高橋先生により曽野小の研究中間報告について解説していただきました。。
 
 土井が提案したものです。番号をクリックしてください。

   魚住先生のお話
 資料集部会の今年度の実践から期待すること
  拙稿紹介
  略語カード
  役立ちWeb特集  
  教育関連情報    
  MM紹介
8 曽野小学校研究中間報告

 魚住先生のお話
 附属名古屋中学校で行われた冬季研修会での魚住先生のお話をまとめてみました。

 今は、1929年以来の危機、いやそれ以上の危機だ。前回との違いは、情報が発達し、世界が相互に依存の関係にあること。このようなときこそ社会科の出番である。社会科は、平穏な時代には重視されないものだ。
 社会科は、社会とかかわる中で生きる力を授ける教科である。鋭敏に時代の要請、課題に答える必要がある。
 1912年にアメリカで社会科が公認されたのは、海外からの意味の急増に対して、いかにアメリカ国民とするかというニーズがあったから。
 1929年の大恐慌では、それまでのよきアメリカ人ではだめ。1/4が失業する時代、小さくても、課題を処理して生き抜く力、いわゆる問題解決学習が、目の前の問題にいかに対応するかという課題に応えるために誕生した。
 第二次大戦後には、ソ連が人工衛星を打ち上げたいわゆるスプートニクショックで、それまでの経験主義教育から科学的な知識の積み上げを重視し、教科の構造性を打ち出す系統学習の方向へと教育の方向を大きく変えた。社会科が社会科学ととらえられ、科学的なものの見方・考え方の育成を重視するようになった。
 アメリカは、今でも社会科の全国組織がある。ホテルを借り切り全国大会を行うほどで、理論と実践の2冊の専門誌をつくっている。それに比べて日本は小さい。
 今のようにたいへんな時代だから、社会科は期待を受ける可能性が大きくなる。生きる力というより生き抜く力をつけ、社会に主体的にかかわる子どもたちを育ててほしい。そして、多様化、すなわち社会の変化に対応できるサバイバルの力をつけていってほしい
  
 
 
 資料集部会の今年度の実践から期待すること
 
 
 小学校では、バイタリティあふれる指導とダイナミックな展開で、従来から丹葉地区が得意としてきたスケール感の大きな実践であった。 中学校では、今回のテーマを正面から忠実にとらえた研究らしい実践で、きちっと論証すれば学会へ持って行けそうな高いレベルであった。
 課題としては次の点を挙げたい。 
 〈 言葉のおさえ 〉
 たとえば「習得」「活用」「探究」をどうとらえるか?
 我々が定義に使えるのは「学校教育法」等の法令、もしくは法令を根拠にしている「学習指導要領」のみである。独自の用語を定義するにしても、法令等の解釈からはみ出るものであってはならない。
 それでは、「習得」「探究」は?
学校教育法 第30条
  生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、 れらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない 
 ここで学力が定義されて、ここから「学習指導要領」でさらに詳述された。
 「小学校学習指導要領 総則」では、「習得」「活用」「探究」は次のように使われている。
  習得;37回、活用;95回、探究;23回登場する。
 「習得、活用」は30条のように使われ、「探究」は次のようにかかれている。
 「各教科での習得や活用と総合的な学習の時間を中心とした探究は,…」 
 「中学校学習指導要領 総則」では習得;38回、活用;92回、探究;24回。同様の使われ方である。

「小学校社会科解説」習得;7回、活用;193回、探究;2回
探究は、以前の「中教審答申」の引用の中で使われているにすぎない。
「中学校社会科解説」習得;33回、活用;144回、 探究;30回
 小学校と異なり、「探究」は学習のまとめとしての活動に使われている。 
 「社会科のまとめとして内容の(4)のイを設け,課題を探究させる際に,対立と合意,効率と公正などの見方や考え方を活用させるようにした。」
 
 「習得」は、広辞苑では「習って会得すること、習って覚えること」とあり、文脈上この意味で使われていることは明らかである。
 問題は「活用」である。「知識・技能を活用して思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくむ」
=活用とは「思考力・判断力・表現力を育むために、知識・技能を効果的に用いること」という意味になる。それでは、具体的にはどう用いるのか?例えば次のように書かれている。
 習得した知識を活用して,社会的事象について考えたことを説明させたり,自分の意見をまとめさせたりすることにより,思考力,判断力,表現力等を養うこと。また,考えさせる場合には,資料を読み取らせて解釈させたり,議論などを行って考えを深めさせたりするなどの工夫をすること。(中学校社会科解説P.148) 
 @「社会的事象について考えたことを説明させたり,自分の意見をまとめさせたりする
 A 考えさせる場合には、「資料を読み取らせて解釈させたり,議論などを行って考えを深めさせたりする
 ここだけでも、「活用」の姿が見えてくる。こうして、こうして丹念に「指導要領」「解説」を読み解く必要があろう。丹葉独自に言葉を定義するのは、その後の活動になる。

 〈 実践から一般化へ 〉
 川井先生は、大部屋P.3の中で、「グラフ資料の読み取り方」の視点を明示し、グラフから事実認識を深める具体的な方法を児童に教えている。おそらく、ここで身につけた方法で、他のグラフを読み取ることができるであろう。
 同様に、例えば「2万5千分の一の地図の読み取り方」や「校区の地図の読み取らせ方」も一般化できればと考える。
 このように、実践の中から、他の資料等で使える方法を明らかにして、一般化したい。

 〈 事実認識・関係認識を育てるための資料の使い方と発問 〉
 上に書いたのは、「事実認識」のための方法である。さらに、写真資料や年表などからも、読み取りの技術を指導したい。
 それでは「関係認識」を育てるにはどうしたらよいのか。資料をどう使い、どのように発問したらよいのか、具体例を出しある程度一般化できるとよい。

 拙稿紹介
  『社会科教育2月号』「中学公民 手づくり教材資料開発のオモシロ例」
ここでは、カードを用いた活用法、模擬裁判、模擬選挙を紹介しました。
 

 略語カード
    上の「中学公民 手づくり教材資料開発のオモシロ例」で紹介した「略語カード」です。

 役立ちWeb特集 
(1)職業調べに役立つサイト
  ○ 職業図鑑:職業検索サイトで、進路に関する情報が満載です。450種の職業が掲載されて   います。   http://www.aaaaaa.co.jp/job/ 
  
  ○ 未来の仕事を探せ!:いろいろな職業について丁寧に説明されています。
(2)平成20年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果について
(3)セルロースを分解するだけでなく燃料まで一気に分解する菌
  真菌「グリオクラディウム・ロゼウム(Gliocladium roseum)」
        生物多様性は醸造発酵産業に尽きる
 

6  教育関連情報
(1)力を測るテスト開発 ―社会科思考力テスト研究会
日本教育新聞1月19日号「思考力・判断力・表現力の育成」
 新聞記事と、財団から送っていただいた冊子『思考力・判断力を問う中学校社会科テスト問題の開発研究』を紹介しました。とても興味深く読むことができます。
 日本教材文化研究財団  http://www.jfecr.or.jp/ 

 
 MM紹介
(1)田中宇の国際ニュース解説 2009年1月20日 http://tanakanews.com/ 
★回復困難なアメリカ経済
 いよいよ、待ちに待ったオバマ政権の就任だ。米国民、そして日本を含む世界の多くの人々が、オバマが大統領なれば、米国はブッシュ前政権時代の失敗した状態から立ち直り、再び超大国にふさわしい経済力や信頼性を取り戻すだろうと期待している。
 しかしここ数日、米英発のメディアの記事をネットで読んでいる私は、そんな期待に冷や水を浴びせかける指摘にいくつも出くわした。私は「オバマは米国の覇権衰退を見届ける(軟着陸させる)政権になるだろう」という昨年来の自分の予測を、改めて思わざるを得なかった。
 たとえば、米経済学者で国連で世界経済改革を担当しているジョセフ・スティグリッツは、オバマが予定している8千億ドル規模の景気刺激策について、1月15日のFT紙に「景気対策の総額の4割近くは減税政策だが、米国民の受給年金が減り、失業やローン破綻が増えているときに減税しても、それによって増えた手取り所得は消費に回りにくい(貯金や借金返済に回るだけ)」などと、政策効果を疑問視する論文を載せた。消費が増えないと景気対策にならない。
 スティグリッツは、人気者のオバマを批判せず、すべてをブッシュ政権のせいにして逃げを打ちつつ、次のように書いている。景気対策としての減税は昨年2月にも行われたが、減税総額のうちの半分以下しか、消費に回らなかった。最貧層に対する減税だけは効果があるが、それはまだ政策に入っていない。法人税も減税対象だが、赤字企業は納税しないので減税効果がない。過去5年間に払った法人税の総額を減税対象にすることが検討されているが、赤字補填の資金は新規投資に回りにくく、景気対策にならない。銀行界は救済策としての減税を望んでいるが、減税は公金投入よりも透明性がなく、どこがどれだけ救済されたか見えにくい。
▼国債返済不能で国力衰退
 スティグリッツは、景気浮揚効果の薄い減税は財政赤字を増やし、すでにGDPの8%を超えている財政赤字がさらに急増してしまうとも警告している。財政赤字の急増を放置すると、どうなるか。それは、最近読んだ別の論文に書いてあった。
 「大国の興亡」など覇権の歴史分析で知られる米政治学者ポール・ケネディは1月14日のウォールストリート・ジャーナル紙に「財政赤字の急増が続くと、今後何年かの間に、米政府は国債発行による借金を返せなくなり、国力衰退につながる」「米国衰退の主因は、異常に巨額な財政赤字と経常赤字(双子の赤字)だ。国家経済規模と比べた場合の米国の赤字率は、すでに破綻しているアイスランドや発展途上国と同じだ」という主旨の論文「米国の力は衰退中」を載せた。彼は以前から米国の衰退を予測し、右派から「衰退主義者」(declinist)と揶揄されてきた。今回の論文の結論部分でも、それを自虐的に自称している。
 ケネディによると、米政界は景気回復を優先するあまり、財政赤字の急増を放置し、オバマにも追加支出せよと圧力がかかっており、非効率で間違った財政の大盤振る舞いに陥りそうだ。財政出動策の効率について、米国内の誰も把握していないのも危険だ。今の米国の財政赤字増はあまりに急速で、40年間の大国興亡史の研究を経た彼の目から見ても、前代未聞の速さだという。今年の前半ぐらいは、株式投資から逃避する資金が国債に乗り換えるので、米国債はよく売れるだろうが、鋭い分析者はすでに、今後発行する米国債(オバマ・ボンド)は売れゆきが悪いと予測している。米国債を中国に買ってもらわねばならない事態そのものが、米国の衰退を象徴している、と彼は書いている。
 米国経済の儲け頭だった金融界は、もう以前の姿には戻れないという指摘も、1月16日に最大手のシティグループが分割を決めた直後のニューヨークタイムスに「金融界の姿は変わる」という記事として出た。
(以下略 見出しのみ掲載)
▼幽霊銀行が歩き回るウォール街
▼欧州の経済難で崩壊しそうな欧米軍アフガン占領
 この記事はウェブサイトにも載せました。 http://tanakanews.com/090120economy.htm 
☆★☆ コメント ☆★☆
 いつも楽しみにしてる「田中宇の国際ニュース解説」。今回も興味深い。
 世界中がオバマ大統領人気で盛り上がっている。これまでとは違い、イラク撤退や温暖化対策など、大きな期待も十分わかる。しかし、こと経済に関しては、大統領が替わったから解決するような問題とは思えない。水をさすようだが、期待過剰はオバマ氏自身を傷つける。このあたりはさすがに田中宇氏は冷静に読んでいる。
 日本の総理を党選挙の頃は持ち上げ、いざ総理になると徹底的にたたく日本のマスコミのような姿勢ではなく、批判的に見るチェック機能も必要だが、提案機能、応援機能も必要だ。そのバランスのとれた情報の中から、読者(有権者)が自分で選択する。それが大人の社会ではないのか。

8  曽野小学校研究中間報告
    高橋先生に説明してもらいましょう。


  問い合わせは 土井謙次  syaraku@tcp-ip.or.jp