1 愛知教育大学附属名古屋小学校社会科分科会助言メモ
助言者として依頼された助言のために、事前に準備しておいたメモを紹介します。
当日は、授業を見て、この中から抜粋し、また新たに加えて話しました。
第3年3組 社会科 男17名 女20名 計37名
小学校社会科第3学年及び第4学年の目標と内容より
(1)地域の産業や消費生活の様子,人々の健康な生活や良好な生活環境及び安全を守るための諸活動について理解できるようにし,地域社会の一員としての自覚をもつようにする。
(2)地域の地理的環境,人々の生活の変化や地域の発展に尽くした先人の働きについて理解できるようにし,地域社会に対する誇りと愛情を育てるようにする。
(3)地域における社会的事象を観察,調査するとともに,地図や各種の具体的資料を効果的に活用し,地域社会の社会的事象の特色や相互の関連などについて考える力,調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにする。 ↑
→ 比較思考・関連思考
【 感 想 】
理論 横文字や造語が氾濫する中、わかりやすい言葉で伝えようとしている姿勢がよい。
社会科の王道である問題解決的な学習スタイルであることにも安心。
最近、知識を効率よく伝えようとする授業が多い。
社会科は、自分の生活(社会)を改善できる人間の育成をねらっている。
=公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養う。
そのためには、問題解決の場が必要。
【 展開の時間 】
展開が、5分、15分、15分、10分 に分かれていた。
5分は「いただきます。」「知りたい、考えた」と思えばよいので、シンプル&インパクトでよい。
途中は食べる。
最後の10分は、「ごちそうさま。」何がおいしかったのか、コーヒーでも飲みながら振り返る世界。
【 社会科は活用型教科 】
○ 社会科は授業づくりの自由度が他の教科に比べて高い。
ゆえに活用型の教科といえる。だからこそ、専門的な力量が必要。
「小学校学習指導要領 社会科 解説」
P1〜P107の本文中に、「習得」が8回、「活用」が193回、「探究」が2回出てくる。「活用」は社会科がダントツに多い。本来、社会科は「活用型」の教科。「探究」は事実上、ゼロ。
「小学校学習指導要領 国語科 解説」「習得」が10回、「活用」48回、「探究」が2回
「小学校学習指導要領 算数科 解説」習得3+1 活用 53回+88 探究 3+1
「小学校学習指導要領 理科 解説」習得4 活用 59 探究7
【 評価が変わった 】
評価が変わった。
「思考・判断」が「思考・判断・表現」
「技能・表現」が「技能」
これは、言語活動の重視の結果。
資料活用の技能は、「表現」がとれたので、より情報収集の比重が増す。
考えて判断したことを、短い言葉で表現させたい。
【 生活科と社会科 】
生活科と社会科は具体と抽象
ある学校では、3年生で グーグル 航空写真とMAPを併用。クリックで地図に変わる。児童は理解していた。航空写真 → 絵地図 → 地図 は抽象化の過程
生活科:地域にある事象は、どこに何があり、自分とどう関わっているか
社会科:事象から地域全体を理解、視野を広げ、地域に対する誇りや愛情を育てる
新教育課程・実施に向けての参考資料 「小学校社会」
「古くからの建造物」が加えられ、「方位や主な地図記号」を扱うこと。単元「学校の周り」は、これからの社会科学習の目次的な役割を与えられるものであり、生活科との違いは地理的にとらえること(面としてとらえる)ことにある。「古くからの建造物」は歴史(時間的な見方)の置き石として調べさせるもの
【 考えの再構築 】
考えの再構築
対立を超えた合意形成・優先順位を求めている。
その判断基準は「効率と公正」
文部科学省の政策評価の観点
1.必要性、 2.効率性、 3.有効性、 4.公平性、 5.優先性、 6.相当性
本来、「考えを再構築」→ 対立を超えた合意形成
活用 優先順位を付ける その基準 公平・効率
その意味で、再構築の場が16時間の最後にあるのは無理がないか?
【 「みんなの課題」の視点 】
@ 施設 A 住宅 B 交通 でよいのか? 他にも出そうである。
ひょっとして、○ 歴史的 ・ 前には何があったの?
なぜこんなに広いの?
古くからあるものは何? が出たら?
1997年 三菱重工名古屋工場にナゴヤドーム
2006年 JT名古屋工場の跡地にイオン
指導要領に「古くからの建物」が追加された 八幡神社(200m北)H11年に鉄筋。
南には上野天満宮、永光院
○ 自然 ・ 矢田川、河川敷、茶屋ヶ坂公園
大幸(だいこう)公園、
○ 学校 ・ 附属中、矢田中、名古屋中高校、至学館高校など
○ 施設 ・ 鍋谷上野浄水場(名古屋市最初の浄水場 大正3年)
・ 守山自衛隊、三菱電機の工場 1924年 関東大震災の翌年
確か、大幸(だいこう)球場が1981年まで、ナゴヤドームの東側にあった。
3つの視点を、3つにまとめる価値はあったのか?
多様な見方を、狭くしたのではないか?
【 観察力 】
小学校:観察・資料活用の技能 中学校:資料活用の技能
小学校の「観察」が重要
観察は?(「解説」P.20)
1 ありのままに、2 数や量に着目、3 観点に基づいて、4 他の事象と対比
5 諸条件と関連づけて
・「違い」二つを比べる
・「変化」一つの変化を比べる
・「特徴」知を総動員する。
Q 実際の見学には、どんな視点を与えたのか?その前にどれだけ種を蒔いたのか?
または、生活科でどこまで見学しているのか?
感想:指導案を見る限り、子どもたちの地域への愛情が感じられないが…。
まちの「ひみつ探し」「まち自慢」を見つけると、誇りと愛情につながる。教師が、まちが好きかどうか?
【 工夫・努力 】
☆ 社会科は、人々の「工夫(知恵)や努力(汗)」がテーマ。大前提であって結論ではない。
共通視点と言うには安易すぎないか?すべてに当てはまる。
どんな工夫・努力をしているかを探って、その中で原理・原則を見つける。
【 社会科は人 】
☆ 社会科は人をからめたい。顔が見える社会科だ。3回の法則というのがある。3回出会うと、 心理的距離が近くなる。それが、郷土への愛情につながる。
・見学で説明を聞いた人がいれば、その顔写真を貼って上手く利用する。
「北には鈴木さんがいる○○がある。」
【 目標の書き方に疑問 】
○ 「本時の目標」では、手段と目的を混同している。
授業の本質は学力の向上
授業前に比べて、この時間で向上すべきことは何か。それをここに書いてほしい。
内容を具体的に書くべき。
・ 関心・態度の対象は社会事象であり、授業ではない。
【 比較と関連 】
社会的思考には5つあるが
中学年の思考は比較思考と関連思考。
比較思考 同じカテゴリーの中で共通点・相違点を比べる カブトとクワガタ
関連思考 違うカテゴリーのものでつながりを調べる クワガタとクヌギの木
紀要文章中の「関連づける」は関連思考ではない。
あくまでも社会事象と社会事象を関連づけること。
比較思考は、特徴を明らかにできる。
【 3つの視点をどう再構築するか 】
・ 3つの視点、赤 青、黄 を交流させると「赤、青、黄がありました」になるのはだめ。単なる事実認識。紫や 緑、だいだいになって「関連づけたことになる」
・ 関連づけるには方法がある。
そこに、「図示」と「なぜ、どうして」という「発問」が登場する
施設
この線を考える。赤と青なら、紫のような答えを。
そして、3本の線をまとめる
住む 交通
【 虫の目・鳥の目 】 分析・総合
中学年は総合が難しい → 虫の目を鍛えたい。
総合は抽象化 観察力
@ 学校の校舎の向きは? 有数の文教地区。
A 黒板の方角は決まっている?
B 神社はどっち向き? だいたい南向き。東大寺は?南向き
狛犬は、東側が阿形(口をあいている)で西側が吽形というのが多い。
靖国神社は東北東。
公認野球規則には「本塁から投手板を経て二塁に向かう線は、東北東に向かっていることを理想とする」と書いてある、と。
自由の女神は、南南東
C 衛星放送のアンテナ 南西
しかし、テレビのアンテナは、名古屋はテレビ塔に向いている。
D 長母寺(ちょうぼじ)
1179(治承3)年に山田重忠が創建したお寺で、重要無形民俗文化財に指定されている、太夫が扇子を持って祝詞を唱え、才蔵たちが鼓を叩いて合いの手を入れたり、三味線などの楽器を演奏する舞台芸「尾張万歳」の発祥の地。
【 振り返りの場 】
○ 授業の本質は、学力の向上。
前と後で向上的に変容していること。
今日で、何をつかんだのか。自分の言葉で振り返らせたい。メタ認知をさせたい。
2 教師力アップセミナー 赤坂真二氏−2− ブログより
前回に続きます。
例で紹介したT君は、何のためにナイフを持ったのでしょうか?
大都会からの転校生でいじめやからかいの対象になっていた彼が、ナイフを見せたことで仲間として受け入れられ、彼自身の居場所ができたのです。
以後、授業妨害をする側に回りました。
原因と共に、彼の目的が見えてきました。
そこで必要なのが「勇気づけ」なのです。

−1−で紹介しましたが、アドラー心理学では、技法として「勇気づけ」を重視します。
子どもたちのさまざまな問題行動は、勇気をくじかれた状態と考えます。
勇気づけにより、適切な行動の意欲が生まれ、適切な言動が生まれ、共同体とつながるようになるのです。
勇気づけ(傾聴、アサーションなど)により、潜在能力が掘り起こされ、自尊心につながり、共同体感覚が生まれるのです。
T君の場合、構わず授業を始めたことが転機となりました。
不適切な行動には注目しないのです。
その一方で、わずかに見せた適切な行動に対して注目し、彼の居場所を変えていくのです。
こうして、人とつながる方法を教えていきます。

講演の中で、赤坂先生はオペラント学習の話をされました。
オペラント学習とは?
オペラントは「施す」ということです。
オペラント学習は、「施す何か=オペラント」によって、ある行動が出現する頻度が変化することです。
よく、箱に入ったネズミの実験で説明されています。
レバーを押すと餌が出てくる装置の箱に、ネズミを入れます。たまたまレバーを押したネズミは、餌を得ることができました。すると、レバー押し行動は、徐々に増えていきます。学習したのです。
この餌のことを、「強化子」と呼びます。
すなわち、「勇気づけ」という強化子により、「適切な行動」を増やしていこうというものです。
学級づくりの診断にQ-Uを活用しているところが増えてきました。
『楽しい学校生活を送るためのアンケート』というもので、多くのデータから裏付けられた優れものです。
Q-UのHPから、その説明を引用してみます。
Q-Uでがわかること
子ども個人と、学級集団の情報から、不登校、いじめ、学級崩壊などの問題に対応するデータが得られます。
・不登校になる可能性の高い子どもはいないか
・いじめ被害を受けている可能性の高い子どもはいないか
・各領域で意欲が低下している子どもはいないか
・学級崩壊に至る可能性はないか
・学級集団の雰囲気はどうか
以上のような、情報が得られます。
アンケートの結果を集約すると、次のような表に表すことができます。

それぞれのカテゴリの簡単な説明は下記の通りです。
<学級生活満足群>
学級内に自分の居場所があり、学校生活を意欲的に送っている児童・生徒
<非承認群>
いじめや悪ふざけを受けてはいないが、学級内で認められることが少ない児童・生徒
<侵害行為認知群>
他の児童となんらかのトラブルがある可能性が高い児童・生徒
<学級生活不満足群>
耐えられないいじめや悪ふざけをうけているか、非常に不安傾向が強い児童・生徒。特に要支援群の児童・生徒はその傾向がさらに強く早急な支援が必要。
以上が引用です。

おおよそ、右上に固まっていれば、問題が少ないクラスということになります。
さて、赤坂先生のクラスは、最初はどうであったか?
比較的、学級生活への意欲は高いが人間関係でトラブルを持っている子や被害者意識の強い子、自己中心的な子が多いことがわかります。
また、学級がおもしろくない子も少なくありません。
このQ-Uを開発した河村茂雄先生は「学級づくりで、集団も学力も伸びる」と断言しています。
その「集団が伸びる」とは何が伸びるのでしょうか?

赤坂先生は次のように考えています。
「良好な人間関係」を作るのは大切だが、それがゴールではない。
トラブルが起こっても、自分たちの力で解決していこうとする「自治」を目指すべきだと。
「教育基本法」の第一条に「教育の目的」がかかれています。
そこには公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画しとあります。
「良好な人間関係」の先には、「社会の形成者」の育成というゴールがあるのです。
では、具体的にどうするか?
集団づくりのゴールを「自治」に置いた赤坂学級。その方法が「クラス会議」なのです。

新学習指導要領 中学校社会科には、次のように書かれています。(引用)
公民的分野では,現代社会の理解を一層深めることを重視して,人間は本来社会的存在であることを踏まえ,社会生活における物事の決定の仕方やきまりの意義について考え,現代社会をとらえるための見方や考え方の基礎として,対立と合意,効率と公正などについて理解する学習を取り入れた。
これは、教育基本法 第2条三 の次の条文がベースにあります。
正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
その手法が対話であり、価値観を共有しない人と共存する技術なのです。

この具体的な実践が「クラス会議」なのです。
クラス会議は次の流れで行います。
1週間しか縛りがないのが優れものです。
クラス会議で決まったことは、実際にやってみて、1週間後には見直しが行われます。
さらに、クラスの問題は多数決で、個人の問題は個人の判断に委ねられます。
さて、どんなことを話し合うのでしょう。
例えば・・・

子どもらしい、たわいもないことです。
こうして、みんなで決めて、みんなで実践し、みんなで見直す経験が、民主国家の構成員を育てていくのです。
さて、こうして育てた赤坂学級のQ-Uはどうなったのでしょうか?
さすがです。
これまで、赤坂真二先生の講演内容を紹介してきました。
本物は、ユーモアたっぷりで、時間があっという間に過ぎていきます。
興味を持たれた方は、ぜひ本物の赤坂先生に触れてください。
3 「平成22年度における子ども手当の支給に関する法律」等の施行と学校給食費の未納問題への対応について
4 証券市場の仕組みと役割
5月22日に行われた、金融経済教育研究会 赤峰 信 講習会の報告をします。
いきなり問題です。
仮にトヨタ自動車の株を買ったとします。その金はどこへいく?
みなさんどう思いますか?
何人かに聞いてみたら、ほとんどが「トヨタ自動車」という答えでした。
しかし、トヨタ自動車には1円も行きません。
エッ、なぜ?
と思った人は、先へ進んでください。
そもそも企業が資金を集めるにはどうするのか?
銀行からお金を借ります。ただし、担保が必要となります。

そこで、株式を発行し、投資家からの資金を集めるのです。
それが株式会社です。
その仲介を行うのが、証券会社です。
よく、「株式を公開し、広く資金を集める会社」と説明されていますが、それは誤りです。
全国に120万社ある中で、株式を上場(公開)しているのは3,700社だけです。
知られた中では、サントリーやJTB,竹中工務店などは非上場会社です。
株式会社のメリットは?

1 投資金額を小さくする:多くの人が投資しやすくします。
2 会社が倒産しても、投資した金額以上の責任はありません。:有限責任といいます。
3 いつでも売ることができます。
株主にはいろいろな権利が与えられます
株式会社が、初めて、または追加して株式を発行して現金を得るのが発行市場です。ここで株を買ったお金は、会社に入ります。
しかし、株式が上場され、証券取引所(流通市場)で買った株のお金は誰の所にはいるか?
もちろん、売った人のものになるわけです。
続きます。この続きはブログで見てください。
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