(1)kyositu.comニュース【小学校教育総合情報誌】
.....2011-05-23<MON> [vol.1045]....
┃2┃梶田叡一先生の教育コラム
学校の役割、教師の役割 1 ぶんけい web site
環太平洋大学 学長
中央教育審議会教育課程部会委員(前副会長・前部会長)
(1)教師は教えるプロ
いまの学校の動きを話したいと思います。小学校は、今春(H23年4月)から教科書がすべて変わります。中学校は来年H24年の春から変わります。ただし、理科と算数、数学は2年前から新しい内容になっています。H20年1月に中教審答申を出して、3月に幼稚園・小学校・中学校については正式に新しい学習指導要領になりました。
高校については、H21年に学習指導要領が変わりました。
今回の学習指導要領の改訂は、10年に1度の定期的な内容変更だと思わないでください。これまでは減らすばかりでしたが、30年ぶりに中身が大きく増え、レベルが上がりました。ただ、これでもまだ十分ではありません。中国や韓国や台湾やベトナムなどに負けています。「子どもたちは勉強ばかりでかわいそうだ」と言い続けているうちに、日本の子どもたちの学力レベルは、アジアの中で胸を張れるレベルではなくなってしまいました。ほかのアジア諸国の方
がずっと進んでいるのです。
さらに、20年ぶりに教育の姿勢を変えました。「責任をもって子どもたちに力をつける教育」にしようということです。昔の日本の教育はそうした姿勢でしたが、いつの間にか、子どもにすべてを任せておけばよいという考え方に変わってしまいました。例えば、「指導ではなく、支援だ」とか、「がんばれと言っちゃいけない」とか、「努力という言葉は禁句だ」などというバカなことを言ってきたのです。「がんばれ」といわなければ、子どもは育ちません。
努力をしなくては人間伸びようがないのです。
□□□この続きは
「学校用教材」−「梶田叡一先生の教育コラム」でご覧ください□□□
(2) 思考を促す社会科授業(3)
ー思考を促す発問の条件[2]ー
千葉真/一関市立一関小学校
「思考を促す発問」第二の条件は、「考えることはできるが、簡単に答えは出ない」というような「揺さぶり」をかけることです。
「揺さぶり」には様々な方法がありますが、今回は以下の二点を紹介します。
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(1)二者択一で考えるもの
(2)自分たちの生活に立ち返って考えられるもの
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深い社会的事象を追究する問いに、当てずっぽうで正解できる子は多くありません。しかし、二者択一で提示すれば、どの子も予想をする事ができます。このように解決の手がかりを提示し、その理由を考える事で全員の思考を促すことができると考えます。
具体的な授業場面(6年生歴史単元:室町時代『金閣と銀閣』)
で説明をします。金閣と銀閣の両方を扱った後、このように発問しました。
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みなさんは、金閣と銀閣どちらに住みたいですか?
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やんちゃ君を筆頭に、最初は金閣派が優勢です。ピカピカの金箔に囲まれた贅沢な生活をイメージするようです。しかし、話し合いを深めていくと、その優劣が拮抗してきます。金閣は落ち着かないという意見も多く出てくるのです。
そこですかさず、補助発問を出します。
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「そこに(自分が)一生住む」と仮定して考えてごらんなさい
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自分たちの生活に立ち返り、揺さぶります。すると話し合いの中で子ども達は、「銀閣のほうが良い」と言うようになりました。銀閣は障子、ふすまなど、現代日本の住宅様式の原点でもあります。
その価値に触れる事で、銀閣が作られた室町時代から現代に繋がる文化の重要性について認識できました。結果、本時の大本命である「書院造」「日本文化の良さ」に迫っていくことが可能となったのです。
「銀閣の建築様式は現代の私たちの生活様式につながっているのですよ」と、ただ解説するのは簡単です。しかしそれだけでは定着がおぼつきません。揺さぶりにより児童の思考を促しながら「書院造」についておさえていくことで、理解及び学力定着面で確かな効果を得た場面となりました。
(3)メールマガジン「学びのしかけプロジェクト」
1 活動中心の授業における「めあて」の特徴
「ハイブリッド」編集委員 福島県・本宮市立糠沢小学校 阿部 隆幸
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5年。社会科の授業。わたしは今、協同学習の考え方に立った授業を行っている。
授業開始時、めあてを確認する。
例えば「長良川、揖斐川、木曽川という言葉を使って輪中を説明できる」である。
子どもたちは4人班になり、中央に机大のホワイトボードを置く。教科書や資料集、地図帳などを駆使し、班で話し合いながら「輪中」を説明できる材料をホワイトボードに書いていく。
「長良川、揖斐川、木曽川って何て読むの?」
「長良川、揖斐川、木曽川って日本のどのあたりにあるのさ」
「輪中そのものの意味がわかんない」
「教科書のこの部分に書いてあるよ」
「なになに?三角州?またわからないのが出てきた」
「辞書で調べてみたよ」
「何かさ、川の高さよりも低い土地があるらしいよ。教科書は図で説明している。」
「へえっ。その図をさ、ホワイトボードに書き写してみてよ。◯◯ちゃん。イラスト上手だし」
基本的に教師(わたし)は、班の話し合い活動を見守り、ニコニコしながら教室をうろつき回るか、全体に気づいてほしい内容がある班で話されている時は「へえぇっ、三角州かぁ。始めて聞いたなぁ。輪中を説明するのに大切な言葉かもしれないなぁ」などと素知らぬ顔でみんなに伝わるようにつぶやいて歩く程度である。
その後、授業終わり10分前程度になると、本当に説明できるようになったか確かめるために、友達同士で説明し合う。最後に本時の学習についての振り返りを書いて授業を終える。
このような活動中心の授業の「めあて」の特徴は何か。
大きく3つある。
第一に、めあてが(行動)評価に直結する。めあては「できるようになること」が掲げられることが多い。つまり「めあて」ができること、それが「評価」になる。例えば、上の事例だと「長良川、揖斐川、木曽川という言葉を使って輪中を説明できたか」がそのまま評価となる。評価を考えていくとめあて設定がやりやすい。
第二に、めあては最初から最後まで変更しない。活動中心の授業は、子どもたちの活動が中心である。授業途中でめあてが変更する場合、教師が一斉に説明するなどの「変更手続き」が必要となる。そうなると活動中心の授業では混乱する。今までの学習活動が無駄になる場合があるからだ。
基本的に活動中心の授業では授業(単元)終わりまでめあての変更はしない。授業(単元)の終わりまでを見越しためあて設定が必要になる。
第三に、めあてに達成したかどうかを自分で判断できる。友達と関わりながら学習を進めていくのが活動中心の授業である。それにはある程度めあてに到達したかどうかを自分たちで判断できるめあてでなければならない。そうしないと、教師の顔色などをうかがうことになる。
以上、活動中心の授業の「めあて」の特徴を書いた。しかし、考えてみれば説明中心の授業でもこれらの特徴が組み込まれていて困ることはない。
むしろ、子どもたちは見通しを持って学習できるよさを実感できる。活動中心の授業の特徴と思われることを取り出して、説明中心の授業を考えてみると新しい視点で説明中心の授業を構成できる可能性がある。
両者を対立させるのではなく、特徴を取り出して吸収してみることを提案してみたい。
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