第348回 社楽の会報告    第347回へ     第349回へ   TOPへ
                                                           
報告者  土 井

 2011年5月19日(木)布袋北学習等供用施設にて社楽の会を開催しました。
 参加者(勤務校)は,土井(江南市教委)、早川先生、服部先生、森藤先生(藤里小)、吉田先生(古知野中)、奥村先生(岩南小)、高橋先生(岩倉市教委)、坪内先生(岩倉中)、鈴木先生(城東中)、天野先生(大南小)、岩井先生(岩北小)、馬場先生(宮田中)、松田先生(曽野小)、阿部先生(江西中)、小沢先生(扶東小)、柴田先生(草井小)、大野先生(犬山中)、池邑さんの17名です。
 

 土井が提案したものを紹介します。 
1  教師力アップセミナー 野口信行先生 
お役立ち資料
  写楽の正体は!?−NHKスペシャル− ブログより
  拙稿紹介「子どもに語る“憲法の話”」
 役立ちWeb特集  
教育関連情報   
MM紹介

 教師力アップセミナー 野口信行先生
 平成23年度 教師力アップセミナー 第1回 野中 信行先生  平成23年5月14日
 テーマ 日常授業のレベルアップをしよう 〜「味噌汁・ご飯」授業の実践〜
 内容を別紙で紹介しました。
 次回は、ピアサポートコーディネーターの石垣則昭先生です。

 お役立ち資料
 5月1日から19日までの資料を紹介します。(これまでと重なるものがあるかも?)
(1)「特別支援学級・通級による指導の教育課程の手引き」/宮崎県教育研修センター
http://mkkc.miyazaki-c.ed.jp/tokubetsu/h22tokubetushiengakkyu_tukyu_kyoukamokuhyou_naiyou.pdf 
 
(2)教科指導における小・中・高連携の在り方に関する研究/鹿児島県総合教育センター
 http://www.edu.pref.kagoshima.jp/research/result/kiyou/nennjibetu/h20/h21-kyouka/top.html  
 
(3)「生徒指導・学級経営上の課題への取組−県内の公立小・中学校の実践に学ぶ−」島根県教育センター
  http://www.pref.shimane.lg.jp/matsue_ec/chousa_kenkyu/21nendo.data/H22_soudan2.1.pdf 
 
(4)『校内研究・研修ハンドブック』 島根県教育センター
 http://www.pref.shimane.lg.jp/matsue_ec/chousa_kenkyu/20nendo.data/kounai_kenshu_handobook.pdf 
  増補版  http://www.pref.shimane.lg.jp/matsue_ec/chousa_kenkyu/21nendo.data/nasu.pdf 
 
(5)子どもたちに「生きる力」をはぐくむ 学習評価ガイドブック/岡山県総合教育センター  http://www.edu-ctr.pref.okayama.jp/chousa/kiyou/h22/10-01sho.pdf 
 
(6)発達障害児指導事例集/和歌山県教育委員会
 http://www.wakayama-edc.big-u.jp/tokusi/jirei2009.pdf 
(7)PISA型読解力向上のための実践指導資料集/和歌山県教育委員会
 http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/500200/pisa2007.pdf 
 
(8)平成21年度研究紀要/和歌山県教育センター学びの丘
  http://www.wakayama-edc.big-u.jp/kenkyukiyo21/kenkyukiyo_top.htm 
国際的な読解力を中心とした言語力の育成に関する実証的研究  ―思考力・判断力・表現力等の育成― (33.5MB)
活用力の向上を目指した算数科学習指導に関する実証的研究 (8.99MB)
表現力・思考力の向上を目指した理科学習指導に関する実証的研究 (8.85MB)
外国語活動の効果的な指導に関する実証的研究  ―『英語ノート』及びICT教材を活用した授業モデルの構築― (8.77MB)    その他
 
(9)「授業力向上のための校内研修に関する調査・研究」 −いま、中学校が動き出すとき−高知県教育センター
 http://www.pref.kochi.lg.jp/uploaded/life/10834_15503_misc.pdf 
 
(10)北海道の「教育の情報化」/北海道立教育研究所附属情報処理教育センター
 http://www.ict.hokkaido-c.ed.jp/pdf/all.pdf 
 
(11)特別支援教育 各種チェックシート/大分県教育センター
 不適応の状態を把握するチェックリスト (小・中・高版)
http://center.oita-ed.jp/tokusien3/check/pdf/stk_adhd_lst.pdf 
不適応の状態を把握するチェックシート (小・中・高版)
http://center.oita-ed.jp/tokusien3/check/pdf/stk_adhd_sht.pdf 
対人面とこだわりの状況のチェックシート (小・中・高版)
http://center.oita-ed.jp/tokusien3/check/pdf/stk_jihei.pdf 
学習面の状況のチェックシート
http://center.oita-ed.jp/tokusien3/check/pdf/stk_ld.pdf 
ソーシャルスキル・チェックシート 学校版
http://center.oita-ed.jp/tokusien3/check/pdf/stk_social.pdf 
気づきチェックリスト
http://center.oita-ed.jp/tokusien3/check/pdf/stk_kizuki.pdf 
連携シート(小〜中)
http://center.oita-ed.jp/tokusien3/check/pdf/s_renkei.pdf 
チェックシートの記入について
http://center.oita-ed.jp/tokusien3/check/pdf/stk_kinyu.pdf 
 
(12)小学校・中学校・高等学校 キャリア教育推進の手引/文部科学省
  http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/__icsFiles/afieldfile/2010/03/18/1251171_001.pdf 
 
(13)学びをつくり出すキャリア教育の進め方/福岡県教育センター
 http://www.educ.pref.fukuoka.jp/one_html3/pub/default.aspx?c_id=90 
 
(14)「生きる力」を育むキャリア教育/栃木県総合教育センター
 http://www.tochigi-edu.ed.jp/center/cyosa/cyosakenkyu/career-h18/career_all.pdf 
 
(15)キャリア教育の視点を生かした進路指導の工夫・改善に関する参考資料/栃木県総合教育センター
 http://www.tochigi-edu.ed.jp/center/cyosa/cyosakenkyu/career/career_cyukou_all.pdf 
 
(16)震災後の子どもたちを支えるための教師向けハンドブック/国立特別支援教育総合研究所
 http://www.nise.go.jp/cms/resources/content/3758/20110512-174141.pdf 
 
(17)特別支援教育 校内・園内支援体制の手引/岩手県立総合教育センター
 http://www1.iwate-ed.jp/tantou/tokusi/tokusi_link/tebiki_keiei.pdf 
 
(18)学びが広がるキャリア教育/神奈川県立総合教育センター
  http://www.edu-ctr.pref.kanagawa.jp/kankoubutu/h20/pdf/kyodo_sho.pdf 
 
(19)徳島県学校食育指導プラン/徳島県教育委員会
   http://www.tokushima-ec.ed.jp/dietary_edu/plan.pdf 
 

 
写楽の正体は!?−NHKスペシャル− ブログより
社楽のブログとしては、写楽にコメントしないわけにはいけません。
昨晩の、浮世絵ミステリー 写楽〜天才絵師の正体を追う〜 はとても興味深いものでした。
番組HPには、番組予告動画と共に、次の説明があります。
 
ギリシャ・コルフ島で、写楽の肉筆画が発見された。
ギリシャ人外交官が20世紀初頭のパリで収集したコレクションの中に埋もれていたのだ。
新発見の肉筆画は、写楽の実像に迫る重要な手がかりを与えてくれることになった。
写楽ほど謎に包まれた絵師はいない。
江戸中期の画壇に突如現れ、大胆な構図の役者絵で鮮烈なデビューを飾るが、わずか10ヶ月活動しただけで忽然と消えた。
歴史資料には、その素顔を伺わせる記録がほとんど残されていない。
「写楽は誰だったのか?」。
その正体を巡って、歌麿説、北斎説など40近い数の仮説が提起され、日本美術史上最大の争点のひとつとなってきた。
だが、ギリシャの肉筆画が、その論争に終止符を打とうとしている。
謎の絵師・写楽の正体とは?
http://www.nhk.or.jp/special/onair/110508.html 
 
もう少し詳しく説明しましょう。
東洲斎 写楽は、江戸時代の浮世絵師です。
寛政6年(1794年)から翌年にかけての、たった10ヶ月の間に、約145点余の錦絵作品を出版した後、浮世絵の分野から姿を消してしまいました。
北斎が70年以上も絵を描き続けてきたのに対して、写楽はわずか10ヶ月。
誰かが、一時、写楽と名乗って描き、その後は描くのをやめたのだと思われるのですが、その誰かの本名、生没年、出生地などは長きにわたり不明だったのです。
ところが、ギリシアで次の肉筆画が発見されたのです。
 
『四代目松本幸四郎の加古川本蔵と松本米三郎の小浪』(ギリシア国立コルフ・アジア美術館収蔵)
 
これにより、肉筆の線の検証によって、写楽の線は、他の有名画家のだれのものとも一致しないことが分かりました。
 
もう1人の候補、版元の蔦屋重三郎説も、蔦屋重三郎死後の写楽の肉筆画が他に見つかっていることから、否定されました。
 
残る説は、阿波の能役者斎藤十郎兵衛(1763年? - 1820年?)です。
『江戸名所図会』の斎藤月岑が1844年に『増補浮世絵類考』で、写楽は八丁堀に住む「阿州侯(阿波徳島藩の蜂須賀家)の能役者」である斎藤十郎兵衛だと記しています。
八丁堀には、当時蜂須賀藩の江戸屋敷がありました。
古地図にも、その名があり、能のワキを代々世襲で担当する家柄でした。と言っても能ではほとんど役目はありません。
しかし、能役者は武士階級であり、武芸以外のことをすることは厳しく禁じられていました。絵を描くことなどもってのほかだったのです。
 
東洲斎写楽という名前から見てみると、江戸の東の洲ということで、八丁堀は当てはまります。
さらには、斎藤十(郎兵衛)を並び替えると、藤・十・斎 = とう・じゅう・さい
→ 東・洲・斎 になるではありませんか!
姓を入れ変えて、「写すのを楽しむ」写楽と名づけるとは、よく考えた名前です。
 
ドイツの美術研究家ユリウス・クルトは、「東洲斎写楽は、レンブラント、ベラスケスと並ぶ世界三大肖像画家である」と激賞しました。
 
確かに、その作品は大胆、個性的で、「天才」と呼ぶにふさわしいでしょう。
ただ、10ヶ月の間に約145点余の錦絵を出版した後、忽然と姿を消してしまいました。
その正体は、阿波の能役者 斎藤十郎兵衛 というのが番組の説です。
 
能の世界では自分の力を発揮できないと感じた斎藤十郎兵衛は、偽名を用いて、蔦屋 重三郎の版元から役者絵を出版しました。
初期の作品は構図が大胆で、当時の常識からかけ離れたものでした。
 
ただし、肝心の役者から不評だったのです。
「女形」なのに男に見える。
実際より若く描いて欲しいのにそうでない。
写楽は、鋭い観察眼で、見たままを描いたのです。
それが、蔦屋重三郎には面白くありません。
 
写楽の作品は、4期に分かれます。
 
第1期が寛政6年5月(28枚、すべて大版の黒雲母摺大首絵)
第2期が寛政6年7月・8月(二人立ちの役者全身像7枚、楽屋頭取口上の図1枚、細絵30枚)
第3期が寛政6年11月・閏11月(顔見世狂言を描いたもの44枚、間版大首絵10枚、追善絵2枚)
第4期(春狂言を描いたもの、相撲絵を交える)が寛政7年1・2月とされる。
 
後になればなるほど、絵が小さくなり、紙質が落ち、筆も雑になります。いわゆる、粗製乱造になったのです。
 
これは、番組では、売り上げを追求する蔦屋重三郎の要望に沿ったものであり、最後は利用価値のなくなった斎藤十郎兵衛を首にしたのか?、または、思うような絵を描かせてもらえない斎藤十郎兵衛自身が、自ら筆を置いたのか?と考えていました。
 
いずれにしろ、天才過ぎて、当時受け入れられなかった者の悲哀を感じます。
 

 拙稿紹介「子どもに語る“憲法の話”」
  今回与えられたテーマは、小特集子どもに語る“憲法の話”。
  実際に小学生に語るように、憲法をかみ砕いてみました。
  名付けて「ルールの基本 それが憲法」 別紙で紹介しました。


 役立ちWeb特集 名古屋特集−
(1) 清須越しと街並み   http://www.a-namo.com/ku_info/higasiku/pages/kiyosu_kosi.htm 
(3)木曽山と尾張藩の林政 http://www.zaiso-house.co.jp/7.history/18c_kiso.html 
 木曽山は、古くは美濃にふくまれ美濃山と呼ぱれた時期もあるが、現在の長野県木曽郡一帯と裏木曽、七宗山など岐阜県の一部を合わせた広大な森林地帯の総称であった。
(4)名古屋城下の都市計画   http://network2010.org/nc400/history/edo1.html 
(5)名古屋市地下街について
   名古屋市内の地下街は、東京、大阪に次ぐ規模で約17万m2
(6)なごやの街路樹    街路樹を最初に整備したのは? 織田信長
(7)名古屋戦災復興都市計画  http://www.jice.or.jp/jishu/kokudo/200806160/product/014.html 
(8)名古屋市 水道・下水道の歴史  http://www.water.city.nagoya.jp/intro/history/suido_his.html
(9)ナゴヤが最初  キッズ名古屋より http://www.city.nagoya.jp/kids/page/0000007540.html 
(10)名古屋市域の変遷  http://www.nup.or.jp/01/siiki.html 
(11)名古屋都市センター http://www.nui.or.jp/siryouten/20/index.html 
(14)名古屋開府400年    http://network2010.org/nc400/index.html 
(16)「なごや街なか」ナビ   http://www.nagoya-tmo.jp/machinavi2.html 
(18)愛知限定歴史レポ http://blogs.yahoo.co.jp/area19192003 

 教育関連情報
第53回 指導と評価大学講座
 毎年、豪華講師陣で行われる指導と評価大学講座を紹介します。土井も参加します。
 期日 2011年7月28日(木)・29日(金)・30日(土)
 会場 東京都千代田区・日本教育会館
 主催 (社)日本図書文化協会/(財)応用教育研究所/日本教育評価研究会
 後援 文部科学省/東京都教育委員会/全国都道府県教育委員会連合会/全国連合小学校長 会/全日本中学校長会/全国教育研究所連盟/NPO日本教育カウンセラー協会
7月28日
9:45〜11:00
賢い学習者の育成  学力向上のため、子ども自身が学習過程を効果的能率的に制御できる賢い学習者に育つ方策について述べる (財)応用教育研究所所長 辰野 千壽
11:15〜12:30
教育評価の原理  教育評価で緊急な課題は、専門用語を明確に定義し、正しく理解して評価すること、つまり基礎・基本の徹底である。 文教大学学園長 石田 恒好
13:30〜14:45
習得・活用・探究と授業づくり
「授業とは何か」ということを明らかにし、具体的な授業面で習得・活用・探究のあり方を追究する。 東北福祉大学特任教授 有田 和正
15:00〜16:15
教室でできる特別支援教育 通常学級における特別支援教育を行う際の教師の構え、気になる子・周囲の子を育む「伝わる言葉」のかけ方を提示する。 名城大学准教授 曽山 和彦
7月29日
9:45〜11:00
新教育課程における指導と評価 習得・活用・探究の学習指導とその評価から確かな学力を育てるために、特に思考力・判断力・表現力の指導と評価の工夫の要点を示したい。
白梅学園大学教授 無藤 隆
11:15〜12:30
思考・判断・表現の評価と授業づくり
測定、非測定の両者による評価方法を概説するとともに、思考力等を高めるフィードバックの在り方について議論したい。 国立教育政策研究所主任研究官 山森 光陽
13:30〜16:45
鼎談 生きる力の育成
−道徳教育、特別活動、総合的な学習− 「生きる力」をはぐくむために、学校教育では何が可能か、道徳、特別活動、総合的な学習の時間などの分野を視点に置きながら、今回の学習指導要領の改訂、その趣旨や要点なども含めて、領域の枠を超えて語り合う。
明治大学教授 諸富 祥彦 文部科学省教科調査官 杉田 洋 上智大学教授 奈須 正裕
7月30日
9:45〜11:00
生徒指導とカウンセリング 臨床心理学志向のカウンセリングよりも生徒指導志向のカウンセリングの方が教育現場の役に立つと提唱したい。東京成徳大学名誉教授・学術顧問 國分康孝
11:15〜12:30
これからの日本の学級経営 学級集団の状態が教育実践の成果に大きな影響を与える。学級集団をどうアセスメントし対応すべきかを解説する。
 早稲田大学教育・総合科学学術院教授 河村 茂雄
13:30〜14:45
こんな教師になろう
−私の教師論− 生徒どうしのつながりの希薄化、若い先生たちの増加、もう一度教育の原点に立つ教師論について考えよう。  大阪教育大学監事 野口 克海
 MM紹介
(1)知らなきゃ損する!面白法律講座   第577号
 「親からの「借金」に税金はかかる?」
□Q□親のすねをかじっているA君。父親から毎月10万円を「借りた」ことにし、遊興費に使っています。しばらくは返せる見込みがなく、父親も返ってくるとは思っていません。この場合、税金はかかるのでしょうか。
 
□A□
 親と子、祖父母と孫など特殊関係のある人の相互間における金銭の貸借は、その貸借が、借入金の返済能力や返済状況などからみて真に金銭の貸借であると認められる場合には、借入金そのものは贈与にはなりません。
 しかし、その借入金が無利子などの場合には利子に相当する金額の利益を受けたものとして、その利益相当額は、贈与として取り扱われる場合があります(相続税法9条、相続税基本通達9-10)。
 なお、実質的に贈与であるにもかかわらず形式上貸借としている場合や「出世払い」というような貸借の場合には、借入金そのものが贈与として取り扱われます。
 また、夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者の間で生活費や教育費に充てるため取得した財産は贈与税の対象となりません(相続税法21条の3)。
 A君の場合には、お金を「借りた」ことにしていますが、実質的には贈与といえるでしょう。そして、使途も遊興費ですから、贈与税の対象となります。贈与税の非課税枠は年間110万円ですので、他の人からの贈与も含めて年間110万円を超えた場合には、その超えた金額について贈与税がかかります。
 仮に、A君が父親以外からは贈与を受けていなかった場合、課税価格は120万円−110万円=10万円となります。課税価格が10万円の場合の税率は10%ですので、A君は1万円を納税しなければならないことになります。
 
(2) JMM [Japan Mail Media]                No.635 Monday Edition-4
                        http://ryumurakami.jmm.co.jp/ 
 ■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』 Q:1211 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■今回の質問【Q:1211】
 政府は浜岡原発の停止を要請したようです。条件などいろいろあるかとは思いますが、東京電力については国有化の論議も起こっています。我が国のエネルギー政策の基本的問題として、また経済合理性とリスク管理の問題として、原子力発電を今後どのように考えればいいのでしょうか。                  村上龍
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 津田栄   :経済評論家
 5月6日夜の7時に、菅首相が突然政府の浜岡原発の停止要請を発表し、その理由が東海地震の発生率が87%だから危険だということで、その唐突さに国民が驚いたはずです。しかし、その要請が原子力発電を含めたエネルギー政策を練り上げた結果として出てきたわけではありません。また、その停止の結果、自動車や機械、電機など製造業の中核工場を抱える中部地域への電力供給に不足懸念が起きることになり、経済や社会にどういった影響が出るかも検討した節が見られません。4月から浜岡原発の停止については検討していたという話もありますが、その影響やその後の対策を何も考えていなければ、まさに思いつき、あるいは場当たり的と言われても仕方がありません。
 疑問は、なぜ浜岡原発が問題なのか、また東日本大震災のように、地震が起きれば、また津波が来ればそれほど浜岡原発は危険なのかということです。一部の市民団体は地震が起きた時には浜岡原発は危険だと訴えていましたが、これまで政府、中部電力は問題がないとして運転を継続してきましたから、このように唐突に地震が起きる確率が高いという理由だけで、政府が手をひるがえすように中止を要請するのは、これまでの姿勢は何だったのか、そして、安全だと言っておきながら地震や津波により本当は危険なのかなど、きちんと説明しないと、政府の言うことは信じられないことになります。また、10日に要請を受け入れて浜岡原発を停止した中部電力も、要請を受け入れた理由に「安全を最優先した」と言っても、十分説明したことにはならないように思います。
 また、菅首相は、その他の原発の停止要請をしないと言いました。しかし、福島原発沖での地震発生率はこれまで0%であったのに起きてしまったことを考えると、浜岡原発のある東海地域がただ高いからでは説明にはならず、原発のあるどの地域でも地震が起きるのではないかという不安は消えません。浜岡原発だけがなぜという疑問に地震発生率で答えても、国民を納得させる理由として弱いといえましょう。今回の地震・津波による福島原発事故を受けて私の故郷にある原発も人事ではないと地域の人は感じていますから、浜岡原発運転中止要請は、より身近な問題として捉えています。
 そして、海江田経済産業相が、その他の原発について「安全上支障がない」と言っても、その根拠を明確にしない限り、地元の理解が得られず、定期点検で停止中の原発の再稼働は期待できないといえましょう。その結果、以前にも書きましたが、事故を起こした福島原発や停止した浜岡原発を加えて、定期点検で停止中の原発、そして今後の点検で停止する原発も地元の理解で稼働しないことになれば、全国的な電力不足に陥る可能性があり、それは、製造業などの生産に大きな支障をきたし、雇用、消費に波及することになって、経済に少なからぬ悪影響が出ることにもなりえます。
 そういうなかで、10日菅首相が、昨年民主党政権でまとめた、原発の新増設と稼働率の向上により2030年までに現在の全発電量の3割を占める原発の割合を5割に引き上げるとするエネルギー基本計画を白紙にするとして、原子力に軸を置いたエネルギー政策を見直すことを表明しました。一方、原発を継続する考えも強調してます。そして、「原子力」と石油・石炭などの「化石燃料」を二本柱とする従来のエネルギー政策に、今後、太陽、風力、バイオマスを基幹エネルギーとする「再生可能な自然エネルギー」や「省エネ」も新たな柱として加えることにしています。
 しかし、現実には、新規の原発建設はもちろん、停止中の原発の再稼働も困難であり、今後原発の老朽化による新規入れ替えもできず、原子力発電は継続できるかどうかは不透明です。再生可能な自然エネルギーは、現在全発電量の1%に過ぎず、今後伸ばしていこうとしても、未だ開発段階で、コストも他に比べてはるかに大きく、また安定した電力供給ができるとは言えず、簡単に達成できるものではありません。一方、石油や石炭などの化石燃料による発電も、最近の原油や石炭、LNGなどの価格上昇によって、コストは上昇し続けています。
 こうした事情の中で、見直そうとするエネルギー政策は、原発に対する国民の不信、不安を取り除くことが必要ですが、今の政権では説明不足がたたって、実現困難にみえます。そして、再生可能な自然エネルギーが技術革新でコスト低下とともに普及が進んで、ある一定のシェアを確保するまでに相当の時間、例えば20〜30年かかるかもしれず、安定した電力供給を目指そうとすると、コスト高になろうとも油や石炭、LNGなどの火力発電を中心に発電量を増やす方向に走らざるを得なくなります。
もし安定したエネルギーが得られなければ、日本で生産することもできず、工場立地として不適格ということになります。
 もちろん、生産において、安定的な電力供給だけでなく、できるだけ安価であることが必要です。また、社会においても、余裕のある安定した生活を維持していくためには、十分な電力があるほうがいいです。そうした面で、火力発電は、エネルギー源である石油や石炭、LNGの仕入先が特定の国や地域に限定されている上に、常時輸入しなければならず、政治的なリスクに晒されています。しかも需要によっては価格が変動してコストが一定ではありません。しかし、原子力発電は、一旦稼働すれば長期にわたって安定した供給が期待できます。そして政府の言う通りならば低コストだといえます。そういった意味で、経済、社会にとって安定的な電力供給を求めて、今回のような大震災による事故がないということであれば、経済合理性から言えば、またコストから言えば原子力発電は、重要なエネルギーといえましょう。
 ただし、原子力発電のコストが一番低いということも、本当のところ分からないところがあります。それは、原発を立地した地域への補助金は計算に入っていないと聞きますし、市場済み核燃料の処置についても、長期保存するのにいくらかかるか分からないところがあります。また、今回のように事故が起きてその解決に膨大な費用がかかるとなると、本当に原子力の費用が一番安いのかという疑問が湧きます。そういった意味で、各エネルギーの正確なコスト情報の開示が必要です。また、これまで安全だと言われてきた原子力発電が、こうした地震・津波に脆く、甚大な被害をもたらすということが明らかになって、その政府への不信や原子力発電への不安が解消できるような、問題の本質の説明をしなければ、国民の理解は得られません。
 結局、エネルギー政策における原子力発電について、これまでの説明では、経済的にもコスト的にも、十分果たせなくなっています。確かに、従来の説明であれば、経済合理性に合っていますし、コスト的にも安いといえたでしょうが、この震災による福島原発事故、その後の浜岡原発の停止要請は、その説明が破綻してしまっていることを表しています。その理由を十分説明しない限り、国民の不信や不安を解消できず、その面で経済合理性が疑われ、コストも不明朗で、果たして原子力発電が必要なのかという疑問が残ったままになります。当然、経済的に生産を継続し、雇用が維持されて生活が安定した社会という観点から、電力をどうとらえるか、その場合に原子力発電をどう扱うかという問題もあります。そういう点で、国民は、正確で十分な情報のもとで、経済合理性とコストの両面から、原子力発電をどうしていくのか判断し、合意する必要があるでしょう。
 最後に、もし原子力発電が必要ないとして国民が判断するのであれば、長期的には自然エネルギーにシフトして、私たちの生活は変わっていくでしょう。例えば、電力不足を回避するために、東京などの都市部に住む人たちは相応の負担を負ったり、電力の地産地消として人口の地域分散化が求められるかもしれません。また、政策的にも、少数の電力会社で各地域に電力供給を独占してきた体制を改め、自由化する政策も必要になってくるでしょう。そういった意味で、原子力発電のない社会として、国の在り方も含めた変革が求められるのではないでしょうか。                             経済評論家:津田栄

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