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報告者  土 井

 2015年9月17日(木)布袋北学習等供用施設にて社楽の会を開催しました 。

 参加者(勤務校)は、土井(布袋小)、小澤先生、伊澤先生(愛教大学院)、坪内先生(犬山中)岩田先生、川地先生(大口中)、奥村先生(岩東小)、吉田先生(柏森小)、竹野先生(岩倉中)、田中先生(犬南中)、柴田先生(古知野中)、伊藤先生(岩南中)の12名、資料のみの参加で高橋先生(岩南中)でした。

1 教師力アップセミナー 横山浩之先生
2 郷土の用水で参画の授業をつくる!−2−
 平成27年度 第57回 指導と評価大学講座 受講記録
 
竹田 恒泰 氏講演「日本はなぜ世界で一番人気があるのか」
  
 
平成28年度社会科教育研究大会は、11月1日(火)開催に決まりました。

 教師力アップセミナー 横山浩之先生
9月12日大口中学校で行われた、山形大学医学部看護学科精神看護教授 横山浩之 先生の講演の様子を口頭で紹介します。
  今回のテーマは、不適切な子育てと行動異常 〜これからの教育における大きな課題〜
  子育てが不適切だと、どんな行動異常に表れるかを、多くの具体例を用いて教えていただきました。

2 
郷土の用水で参画の授業をつくる!−2−
 研究仮説(昨年の全小社京都大会の仮説 改作) 丹葉地区でのタイプA

 社会に生きる(た)人(人々)が自分を活かしながら社会に貢献していることを理解することで、よりよい社会づくりに参画しようという資質や能力の基礎が育つであろう。
 
 小学校学習指導要領 社会科解説 では

(5) 地域の人々の生活について,次のことを見学,調査したり年表にまとめたりして調べ,人々の生活の変化や人々の願い,地域の人々の生活の向上に尽くした先人の働きや苦心を考えるようにする。
 ウ 地域の発展に尽くした先人の具体的事例

 

(6) 内容の(5)のウの「具体的事例」については,開発,教育,文化,産業などの地域の発展に尽くした先人の中から選択して取り上げるものとする。
 
ここでの事例については,例えば,用水路の開削や農地の開拓などを行って地域を興した人・・・・
 そこで、入鹿池・入鹿用水を教材化してみます。
 
1 単元名 入鹿用水を引く
2 単元の目標 
・入鹿用水の開削に尽くした先人の働きに関心をもち、進んで調べ、地域社会の発展を願う。
                         (社会的な事象への関心・意欲・態度)
・先人の働きや苦心について、当時の人々の生活の様子や技術・道具などの面から考えることができる。                           (社会的な思考・判断)
・入鹿用水や入鹿池などを見学したり、年表や地図などの資料を効果的に活用したりして調べ、調べたことを表現することができる            (観察・資料活用の技能・表現)
・地域の開発に対する先人の願いや工夫・努力、苦心、地域の人々の生活が向上したことが分かる。                     (社会的な事象についての知識・理解)
3 指導計画(7時間完了) 見学・学習発表は行事・総合で計上 


主な学習活動・内容

指導上の留意点・ねらい

備 考
























 

布袋周辺と犬山・可児地区の地図を比べて気付いたことを発表する。
・ 犬山・可児地区は池が多い
・ 小牧の方まで池が続いている
・ 丹羽郡や江南市はほとんど池 がない

Google Mapは池が青で着色されており、はっきりと違いがわかる。
ここでは、江南や丹羽郡に比べて、違いに気付けば、自然と次の疑問が出てくる。

 

Google Map









断面図



入鹿池写真








 


 

江南・丹羽に比べて、犬山から小牧にかけて池が多いのはなぜか?
 


 
濃尾平野を東西に切た断面を見て、高さの違いに気付く
・ 犬山や小牧は土地が高い

入鹿池の写真を見て、この入鹿池も人(入鹿六人衆)が造ったため池であることを知る。
 単元の学習課題
土地が高いのに川がないので、農業用の水としてため池をつくったことを理解させる。

大口・江南・岩倉を流れる五条川は
入鹿池から流れていることを紹介する。
 



 

入鹿六人衆はどうして、どうやってこんな池をつくったのか、調べて、その物語を演じよう
 



 

 
11月の学習発表会で「入鹿池物語」として演じることを予告する。


















 

入鹿池ができる前を資料から読み取る。
・ 小牧原の水争い

村の人々の願いを考える。
・ もっと簡単に、確実に水を手に入れたい

入鹿池のできる前の地形図を見て、一箇所を閉め切れば水がたまることに気付く。

竿の前後に10sの重りを縛り、水運びの苦労を体感する。
(実際には、重さ40sを担ぎ、数q歩いて水を運んだ)
その土地より高いところに水をためてそこから用水を引けば、水を確保できることを説明する。

等高線地図を、3Dソフトで立体化しておく。
 

天秤竿
重り






地形図








 


 

水がたまる方法に気付いた小牧村の庄屋のあなたならどうする?
 


 
・ 何とか水をためたい
・ 入鹿村が水没してしまう
・ 入鹿村の人は反対するだろう
・ どうやって説得しよう



 
















 

入鹿六人衆の苦労を知る。

 












宮田用水資料


 


 

入鹿六人衆はどうやって入鹿村の人を説得したのか説明しよう
 


 
・ 入鹿村の人はどうしたら納得してもらえるだろう。
・ 殿様の力を借りよう。
・ 入鹿村の人には新しい土地に移住してもらおう


宮田用水の概要を知る。
・ お囲い堤を作ったために、木曽川の水が流れなくなってしまったので、宮田の杁から水路を引いた。
当時の尾張藩主・義直は、宮田用水を作った実績があること、藩が費用を負担してくれたことを紹介する。
布袋小から3qほど東へ進むと「入鹿出新田」という地名がある理由を考える。

宮田用水のおかげで、尾張西部地区の田畑に水が行き渡り、ため池を作る必要がないことを確認する。

 












 

当時の人々の工事の様子を資料から読み取る。


 

「愛知にかがやく人々」



写真
地図


「尾張名所図会」



 

パワーショベルやブルドーザーがない時代に、どうやって堤や水路を作ったのか説明しよう
 



 
・ 当時の道具や工法を知る
・ 河内の甚五郎による「たなきづき」

「杁」の役割について知る。
 
「河内屋堤」とよばれていること、「河内屋新田」という土地を与えたことを紹介する。

水量を調節する方法について知る。
 














 

入鹿池の水が使われている地域について地図から読み取る


 






地図





愛知県史

 


 

入鹿池の水はどこへ流れていくのか、地図をたどってみよう。
 


 
・ グループごとの地図に、入鹿用水とその先を青で着色する。
・ 入鹿用水の後に、木津用水、
新木津用水が作られたことを知る。

入鹿用水のできる前と後での、「耕地面積」「米の収穫高」を比較する。
五条川、新郷瀬川、薬師川、木津用水、新木津用水など、合流や分岐を
繰り返しながら、広い地域に行き渡っていることを体感する。


入鹿用水が、多くの人の役に立ったことを確認する。
 
























 

仮想パネルディスカッションをする。(設定:1653年)


 
























 


 

入鹿池完成20周年祝賀行事「20年前の私、そして今」
 


 
出席者 
江崎善左衛門(60歳)小牧庄屋
丹羽又助(1665年死)外坪農民
徳川義直(実際には1650年死去)
旧入鹿村庄屋 
(河内)甚五郎
新田農民代表
  他の児童は質問役
司会 教師

推薦文を書く
江崎「なぜ入鹿池をつくろうと思ったか」「その後どうしたのか」
丹羽「農民なのになぜ計画に参加したのか」
義直「なぜ計画を許可し、費用まで出したのか」
入鹿村庄屋「なぜ村の水没を許可したのか」
甚五郎「大役を引き受けた理由」
新田農民「どうくらしが変わったのか」


 

江崎善左衛門(または丹羽又助)はここが偉い!
 


 
2,3名の推薦文を聞く。

今後、シナリオ作り、劇化するスケジュールを確認する。
 




 
4 仮想パネルディスカッションのもち方
 ねらい 入鹿用水の開削に尽くした先人の働きに思いを寄せ、地域社会の発展を願う生き方に     浸りきる。                 (社会的な事象への関心・意欲・態度)
 進め方
 始めに各パネラーから、当時の思いを語ってもらう。教師は、それぞれについて、簡単に価値付けていく。 
 その後、聞き役から質問を受け付ける。それに関連して、教師からも聞き役の子に「あなたならどうした?」などと問いかけ、挙手指名・意図的指名を織り交ぜながら、論を構成していく。最後に、20分程度推薦文を書く時間を与え、発表して終える。
 

 
 
3 平成27年度 第57回 指導と評価大学講座 受講記録
 いつもの島原先生のすばらしいまとめです。
◇講義3 教室でできるコンピテンシーの育成と評価
                      上智大学総合人間科学部教授 奈須正裕
 ──────────────────────────────────────
1 コンピテンシー(資質・能力)とコンテンツ(内容=指導事項)
 ○コンピテンシー・ベイスの教育≠コンピテンシーの教育
 ○授業づくり・カリキュラム開発の基本の問いを変える。
 ○「何を知っているか」→「どのような問題解決を成し遂げるか」
 ○各教科等の領域編成はコンテンツに依存するので,従来通りでも可
 ○コンピテンシーとコンテンツは縦・横の関係
 ○コンテンツの指導を通してコンピテンシーを育む。
 
2 コンピテンシー育成を目指した授業改革の2つの水準
 ○アクティブラーニングとして様々な手法・型が既に存在し,新たに提唱もされているが,  手法・型に修練した議論は危険をはらむ。
 ○現場の自律性と創造性,蓄積されてきた資産
 ○「流儀の対決」の政治権力化への危惧
 ○2つの水準での原理的理解にとどめるべきでは?
  1)教育方法上の原理
    ‥‥オーセンティックな学習Authentic Learning,明示的な指導Informed Instruction
      *オーセンティック→本物の,確実な,真正なという意味
  2)子ども(人間)の学習と知識に関する原理
 
3 オーセンティックな学習
 ○現実の社会に存在する「ほんものの実践(真正な人間の営み)」に可能な限り近づけて学  びをデザインする。
 ○オーセンティック=真正な,ほんものの,まごう事なき
 ○学校に満ちあふれるオーセンティックではない授業と評価
 ○鶴亀算‥‥鶴と亀の区別がつかないの?
 ○「60人乗りのバスがあります。140人運ぶには何台のバスが必要ですか?」に「2と1/3  台」と答える子ども
 ○音楽や体育のペーパテスト,暗記で解ける社会科
 ○パフォーマンス評価への移行
 
4 手続きから意味へ
 ○現実的な複雑な文脈や不必要な数値が埋め込まれたB問題
 ○「公式」さえ問題中に示される!
 ○暗算せずに数理的な「判断」が可能な問題・解答例
 ○手続きではなく,意味の理解こそが学力
 ○現実の世界と数理的処理の間の「変換」過程の重視
 ○「トマト」の授業 
  ・1個,2個,3個,4個売りのトマト,どれがお得か?
  ・オーセンティックな状況‥‥トマトのサイズが違う
  ・「大きさが違うから比べられないよ」「グラムあたりなら比べられる」「うちは3人家族   だから4個パックだと余っちゃうから,うちとしては3個パックがむしろお買い得」
 ○数理の手続き → 数理の意味 → 数理のよさ・限界
 ○「説明する算数」:なぜそれでいいのかを考え,算数の概念(言葉)で筋道立てて説明で  きる。‥‥「答えが出たところから算数の授業が始まる」
 
5 明示的な指導
 ○オーセンティックな学習は(身近で切実な問題解決を目指したかつての経験主義も)深い  意味処理をもたらし,コンピテンシーの育成につながる豊かな学びをもたらす反面,文脈  に貼り付きがちで,他の文脈に転移しにくい弱みを持つ。
 ○豊かな(複雑で多様で距離の長い)学習経験からの意味抽出を教師が明示的に指導するこ  とで,学びの成果を自覚化・言語化・道具化できる。
 ○教科の本質も明示的にくり返し教える。
 ○経験→明示化→道具化→様々な場面での活用
 ○理科:科学的認識の手順と論理を経験しているのに,身につかない科学的なものの見方・ 考え方 →最後は「内容(コンテンツ)」でまとめてしまうからでは?
 ○「直列つなぎ」と共にそれを見いだした「比べっこ」の仕方も「まとめ」,くり返し明示 的に教える。
 ○社会科:「石垣島でなぜサトウキビつくりがさかんなのか」
  ・2種類の立地条件
    自然条件:気温,降水量,土壌,地形,資源・・・・
    社会条件:市場,労働力,技術,歴史,交通・・・・
  ・市や県の特産物→様々な地域のくらし→農業→工業→商業→歴史→国際と広がってい   く。
 
6 教科の本質を「道具化」する:教科の言葉の重要性
 ○限られた数の「教科の言葉」を「明示的」に教え,様々に異なる文脈や場面でくり返し「活 用」させることで,有効性を実感させると共に,多様な「変換」を経験させ,変換のパター ンを見いだして,さらにそれも高次な「教科の言葉」にしていく。
 ○「教科の言葉」により道具化した「教科の本質」を時折整理させ,「道具箱」の整理と自 覚化を図る。
 ○「この教科は結局何をしているの?」に端的かつ個性的に答えられる子どもにしたい。
 
7 これからの授業づくりの2つのポイント‥‥子ども主体でしっかり教える。
 1)オーセンティックな学習(Authentic Learning)
  「本物」の文脈・状況での学びに主体的・探究的=問題解決的に取り組むことにより,既 習を系統的に生かすと共に,一人ひとりのインフォーマルな知識・経験を存分に発揮するこ とで,より深い意味理解に到達し,学びの価値や醍醐味を実感する授業
 2)明示的な指導(Informed Instruction)
  学習の過程で経験したことを明示化(自覚化)し,道具化(概念化・言語化)し,様々な 場面で組織的に「活用」することで,教科の本質や汎用的認知スキルを自家薬籠中のものと できる授業
 
8 学習と知識に関する科学的理論を授業づくりの共通基盤とする
 ○カリキュラムや教育方法に関する議論を導くのは,「子どもはどのように学ぶか」「知識と はどのような特質を持っているか」といった事実とその科学的説明理論
 ○欧米では既に確立 → 日本では大きく出遅れている。
 ○コンピテンシーは「教える」のか「顕在化や洗練を促す」のか?
 ○「子どもは学びたがっている」はスローガンなのか,事実なのか?
 ○学校は社会システムとして,子どもという自然に何を働きかけるべきなのか?
 ○子どもを中心に据える,子どもの潜在的能力を信頼する → 教育の高度化を図るにつなが る道すじ
 ○教育をめぐる伝統的な二項対立図式(生活か科学か,経験か系統か,思考力か知識か,教  師主導か子ども中心か・・・)を無化する。
 ○「教科の本質」を仲立ちとして,コンピテンシーとコンテンツを有機的に結びつけ,オー  センティックでインフォームドな教育方法により,主体的で実感を伴う豊かな学力の確か  な定着を図る。
   → その共通基盤(迷ったときに戻る場所)としての「学習と知識の理論」
 
9 人間の一生涯の学びを1つのメカニズムで通す
 ○子どもが生得的に持つ学びに関わる2つの傾向性
  1)自己の有能さを高め,拡げようと,能動的に環境に関わろうとする。
    → コンピテンシーの出発点
  2)他者の利益や喜びが満足の最大の源泉である。
 ○探究的1),協働的2)な学びを妥当化する確かな科学的・事実的根拠
 ○乳幼児期,社会人としての学びは探究的で協働的?
 ○6〜22歳だけが人間の自然のメカニズムに不適合?
 ○学校教育における授業と評価の原理をコンピテンシー・ベイスにすることで,一生涯を自  然に適合したたった1つのメカニズムで通すことが可能となる。



 竹田 恒泰 氏講演「日本はなぜ世界で一番人気があるのか」
  平成27年9月12日江南市民文化会館で行われた、江南商工会議所 創立40周年記念 講演会の様子を別紙でお知らせしました。
  ブログ「あなたも社楽人」で内容を紹介しました。