生涯学習 ミニ用語事典

あ行 アウトリーチアンドラゴジーインテリジェント・スクール遠隔教育オープン・ユニバーシティ/放送大学
か行 学校開放学社融合学習社会家庭教育カルチャーセンター環境教育健康教育公開講座公民館国際遠隔教育国際理解教育
さ行 在学青少年教育自己教育力/生きる力社会教育社会教育施設社会教育主事・学芸員社会人入学制社会通信教育生涯学習/生涯教育生涯学習推進会議生涯学習局生涯学習研究・推進センター、生涯学習と社会教育成人教育
た・な行 大学院入学資格の弾力化通信制大学院25:4ルール
は・ま行 博物館発達課題福祉教育文教施設のインテリジェント化ボランティア活動フォール報告/ドロー報告まなびねっと、メセナ
や行〜 有給教育訓練休暇U3Aリカレント教育リフレッシュ教育
【 出 典 】 説明の最後に記号で記す。  A:『imidas2000』(集英社) B:『知恵蔵1999』(朝日新聞)  C:『最新教育基本用語2000年版』(小学館)
【参考文献】 『生涯教育入門』『生涯教育入門・第二部』ポール・ラングラン著 波多野完治訳 全日本社会教育連合会   『生涯学習事典』日本生涯教育学会編 東京書籍 平2 

生涯学習/生涯教育〔lifelong learning:lifelong education〕
人が生涯を通じて行う主体的な学習活動を生涯学習、生涯学習を支援し援助する教育的活動を生涯教育という。生涯教育はラングラン(P.Lengrand)が1965年のユネスコ成人教育推進国際委員会で提唱して以来、世界的に注目されるようになった。日本では、71年の中教審答申(46答申)が生涯教育の観点に立つ教育体系の整備を説いたが、生涯教育推進の動きが本格化したのは81年の中教審答申「生涯教育について」以降である。同答申は、生涯教育と生涯学習を区別し、生涯教育を生涯学習の実現を目指す教育理念とした。88年には、「生涯学習体系への移行」を提言した臨教審答申を受けて文部省社会教育局が生涯学習局に改組され、90年には「生涯学習振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」(生涯学習振興法)が制定され、生涯教育センター・生涯学習推進センターの充実や教育文化事業の推進など生涯学習環境の整備が進められている。(A)

社会教育
社会教育法で、「学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年および成人に対して行われる組織的な教育活動(体育およぴレクリエーションの活動を含む)」(第二条)と定義されている。教育委員会の所管になる図書館、博物館公民館などの社会教育施設における活動を意味する場合が多い。しかし、社会において組織的に行われている教育一般を指すべきものであり、右の意味で使う場合は公的社会教育などともいう。社会教育は組織的な教育活動を公的に実施したり奨励することであるのに対して、生涯学習は非租繊的な活動も視野に入れているという意味で、社会教育は生涯学習に包摂されるといえる。(B)

生涯学習と社会教育
生涯学習について、日本には、いくつかの誤解がある。その代表的なものが、生涯学習=社会教育という誤解である。しかし、生涯学習は、本来、学校教育の再編に関する問題提起であった。つまり、日本の学校教育関係者の間にある「生涯学習と学校教育は無縁」という誤解は、この国の生涯学習の進展を大きく阻む要素となっている。とはいえ、生涯学習における社会教育の重要性が否定されるわけではない。社会教育は、学校教育とともに、生涯学習を支える両輪として、今後ますますその意義が見直されるべきだろう。たとえば、学校教育と社会教育との連携が今日、学社融合という標語で叫ばれている。学校教育ではある種の画一性は避けられない。その場合、社会教育の持つ弾力性が、その欠点を補うだろう。こういうわけで、社会教育には、従来にも増して、その独自性が求められる。それと同時に、学校教育との連携・協力がいっそう重要性を増すことになろう。(C)

リカレント教育〔recurrent education〕
一度社会に出た者が学校に戻ることができるように組織された教育システムで、再生教育、循環教育ともいう。1969年の欧州文部大臣会議でスウェーデンのパルメ(O.Palme)文相が用い、70年代にOECDの教育政策論の中心概念として普及した。生涯教育が生涯にわたる学習機会の保障を目的とするのに対し、リカレント教育は学校教育と職業生活を往還できるようにすることを目的とする。スウェーデンやフランスの有給教育休暇制度、アメリカの専門職従事者の再教育を行うコミュニティー・スクール、日本の社会人入学制や夜間大学院・昼夜開講制大学院(夜間コース)は、リカレント教育の理念に沿うものである。文部省は、社会人を対象に大学・大学院などで職業上の知識・技術を再生・更新することを目的とした教育をリフレッシュ教育とよび、93年、産業界と大学等の代表からなる「リフレッシュ教育推進協議会」を設置し、その推進を図っている。(A)

アンドラゴジー〔andragogy〕
成人教育学。ギリシャ語のandros(成人)とagogos(指導)の合成語。教育学=ペタゴジー(pedagogy)はギリシャ語のpaid(少年)とagogosの合成語で、元来は「少年の教育学」を意味した。しかし社会の変化に伴って成人の学習・教育の重要性が高まるなか、1920年代以降、成人学習・成人教育を研究対象とする学問としてアンドラゴジーが出現した。また近年は、教育老年学(educationalgerontology)も現れている。

公民館
地域の中心的な社会教育施設。1946年の都道府県知事にあてた文部事務次官通牒「公民館の設置運営について」によって提唱されて発達をみるようになった。それによると公民館は「全国の各町村に設置せられ、此処に常時に町村民が打ち集って談論し、生活上産業上の指導を受けお互いの交友を深める場所」として構想された。49年に制定された社会教育法により社会教育施設として制度化された。96年10月1日現在、全国に17,819館設けられている。最近は、市長部局・知事部局のもとに、生涯学習の場を提供するコミュニティー・センターがつくられたり、民間の生涯教育関連事業の発達によって新たな在り方が求められている。(B)

博物館
歴史、芸術、産業、民俗、自然科学などに関する資料の収集、整理・保管、調査研究、展示・教育を目的とする施設のこと。動物園、植物園、水族館なども博物館のカテゴリーに入る。日本博物館協会によれば、1997年3月31日現在、合計3,449館ある。内訳は国立40、公立2194、私立1141、大学74。分野別では総合137、郷土478、美術712、歴史1540、自然史160、理工159、動物園76、水族館73、植物園83、動・水・植27。96年に比べて70館増えている。(B)

生涯学習研究・推進センター
高等教育機関では公開講座などの実施、生涯学習に関する研究、情報の提供などを行う施設を設置するところが増えつつある。名称は同じではないが、1996年度までに、国立では14大学〔北海道、東北、福島、茨城、や宇都宮、金沢、滋賀、島根、徳島、香川、長崎、宮崎、弘前、富山)、一短大(高岡)に設けられている。同種の機関は公私立大学でも設けられている(97年度現在、公立6、私立64)。また、各都道府県においては、各地域の生涯学習振興の拠点として、学習情報の提供や学習相談、学習需要の把握、学習プログラムの開発などを行う生涯学習推進センターの整備が進められている。その数は96年9月現在、32に及んでいる。市町村においても、大型公民館に併設するなど、生涯学習の中核となるセンターなどの整備が急速に進展している。また、「生涯学習のまち」などの宣言を行って生涯学習の振興に努めている市町村も多く、96年11月現在、その数は108となっている。(B)

カルチャーセンター
民間が設置している生涯学習施設の一般的な呼称。すでに昭和30年代に設けられていたが、都市を中心に全国に普及し始めたのは40年代以降のことである。1996年現在、その数は723事業所(文部省調べ)に及んでいる。実施主体は新聞・放送関係機関、百貨店など様々であるが、89年に全国民間カルチャー事業協議会が組織されている。(B)

メセナ 
国家・地方公共団体や企業が民間で行われる各種の芸術文化活動を援助していく行為。財団法人として企業メセナ協議会という組織がつくられており、『メセナ自書』(ダイヤモンド社)が出版されている。同協議会の調査によると、メセナを実施する企業が年々増えており、1996年現在、約7割の企業が実施している。活動の内容で一番多いのは音楽の分野で、全体の約3分の1を占めている。企業によるメセナ活動の理由は、社会貢献、イメージの向上、企業文化の確立、など。(B)

社会教育主事/学芸員
社会教育主事は都道府県および市町村教育委員会に、学芸員は博物館に置かれている専門職員。市町村における社会教育主事の設置促進のため、都道府県の社会教育主事を市町村の求めに応じて派遣する派遣社会教育主事の制度が1974年度から設けられている。75年度からはスポーツ担当の社会教育主事に対する補助が創設され、東京都以外の全県で制度化されている。そのほか、社会教育に携わっている職員には公民館主事、図書館司書などがある。(B)

学習社会
国民の生涯学習が普及した社会。1968年に出されたハッチンス(R.Hutchins)の著The Learning Society、を契機に広く使われるようになったが、その意味は、使う主体によって必ずしも同じではない。ハッチンスは、未来を自由時間が労働時間を上回る社会として展望し、自由時間における自己実現として学習を重視し、そのような社会の実現には制度の充実よりも価値の転換が必要だといっている。フォール報告では、ハッチンスの思想を敷衍して、「分割された人間」(man video)から「完全なる人間」(complete man)への転換として学習社会を構想している。中教審の81年答申では、学歴偏重社会から「人々の生涯を通ずる自己向上の努力を尊び、それを正当に評価する社会」をもって学習社会としている。最近は生涯学習社会という言葉のほうが一般的である。(B)

フォール報告/ドロール報告
フォール報告はユネスコが委嘱したエドガー・フォール(フランスの元首相)を委員長とする教育国際開発委員会が1997年に発表した生涯教育、学習社会を提唱した報告(原表題Learning To be.邦訳は『未来の学習』)。国家間の連帯を強調している。ドロール報告はユネスコが委嘱したジャック・ドロールを委員長とする二一世紀教育国際委員会が96年に発表した生涯学習を提唱した報告(原表題は Learning:The Treasure Within.邦訳は『学習・秘められた宝』)。「知る」「為す」「共生」「在る(To Be)」という、学習の四本柱を提起している。(B)

リフレッシュ教育
大学・大学院などの高等教育機関が職業人に、職業上の知識・技術を新たに修得させることを目的として文部省が推進している事業。対象が職業人中心、内容も職業に関する知識・技術が主であり、実施機関が大学などである点でOECDのリカレント教育に相当する。社会人特別選抜、夜間大学院、昼夜開講制大学院などの方式がある。(B)

オープン・ユニバーシティ/放送大学
一般社会人の生涯学習機関として1969年に設立、71年に開校されたイギリスの大学。公開大学と訳される。63年に労働党首ウィルソンが行った提案が端緒となったもので、Uinversity of she Airの名で構想された。放送を教育の手段とすることが特徴であり、21歳以上の者は誰でも無試験で入学できる。テレビ・ラジオの講座の視聴のほか、通信教材による家庭学習、地区センターでのカウンセラーやチューターによる面接指導・演習、夏期に一週間のスクーリングが行われる。卒業は最終試験によって判定される。80年以後、オーストラリア、オランダ、カナダ、ドイツ、韓国、タイ、中国などでも同種の大学が誕生している。日本の放送大学学園は、83年4月に特殊法人として開学、85年に学生受け入れを開始した。添削指導や学習センターでの面接授業が行われている点はイギリスの公開大学と同じだが、放送学習の比重が高いのが特色。また、高校卒業が入学資格の基本となっており、大学院は設けられていない。放送範囲は関東地域の一部などに限定されてきたが、98年1月から通信衛星を利用した全国放送が開始された。100チャンネルもの多様な番組を提供している「パーフェクTV!」を利用して、テレビ205、ラジオ500のチャンネルで無料放送され、専用のアンテナおよび受信機をセットすれば、全国どこでも視聴できる(B)

U3A〔University of the third age〕
人生第三期(依存の第一期、社会的活動の第二期に続き、依存と死の第四期につながる時期)の人々を対象に、新理念のもとに高等教育機会を提供しようとする機関。学問的体系にしたがって、選抜された層を対象にして教授する大学ではなく、知識と真理を純粋に探求しようとする者の集合体である。中世においては、知識を求めて各地から集まった学生がギルドをつくり、自分たちで教師を雇って学んだ。これが今日の大学の起源であるが、U3Aはこの中世のギルドを理念としている。フランスのツールーズ大学の政治経済学教授P・ベラーが、1972年に定年退職者を対象に夏期大学を開き、講義、コンサート、研修旅行、文化活動などからなるプログラムを提供したのが始まりだとされているが、3年後にはベルギー、スイス、ポーランド、イタリア、スペイン、米国、カナダでも導入され、80年代初め頃までに、アルゼンチン、イギリス、スウェーデンなどにも普及した。(B)

社会人入学制
一般社会人のために特別枠を設け、書類選考や論文・面接試験などの特別の選抜方法で社会人を大学に入学させる制度。現行のままでも、中等教育を終了していれば、誰でも入学資格はあるが、高校卒業後直ちに入学する者を対象として出題される現在のような入試では社会人の合格は困難であるところから導入されるようになった。国公立大学の場合には、大学入試センター試験の受験を社会人には免除することも可能とする措置が講じられている。1978年に立教大学法学部が実施したのが最初で、その後次第に増え、95年度では236大挙が実施している。入学者数は約4,200人。大学院(修士課程)でも、現職教員を主な対象とする兵庫教育大学、上越教育大学、鳴門教育大学のほか筑波、埼玉、慶応義塾など95年度現在178大学が社会人に門戸を開いている。入学者は約4,900人。(B)

25:4ルール
スウェーデンで1965年から始まった社会人の大学入学条件に関する制度。年齢25歳以上かつ労働経験4年以上で、高校2年修了程度の国語と英語、それと専門分野の知識があれば入学を許可することから、このように呼ばれている。77年に行われた大学改革により、定員制をとるところでは、右の条件を満たす者に定員の50%を割り当てることになった。ヨーロッパでは成人教育推進のモデルとして注目されている。(B)

有給教育訓練休暇
教育訓練を受ける目的で、有給で一定期間職場を離れることを可能にする休暇制度。国際労働機関(ILO)は1974年の第59回総会で、この制度を労働者の権利として認めるべきだとする勧告を採択している。フランス、ベルギー、イタリア、旧ユーゴスラビア、スウェーデンなどではすでにこの制度が立法化されている。日本では、95年時点でこの制度を有している事業者は、労働省の「民間教育訓練実態調査」(96年2月)によると、全体の21.8%であるが、その87.3%が実際に休暇を付与している。労働者個人の側から見ると、94年において、自己啓発のために19.4%の労働者が休暇を取得しているが、約8割は3日未満である。自己啓発の支援措置としては有給教育訓練休暇の付与や受講用の援助を行う企業に、その援助費や賃金の一定割合を助成する自己啓発助成給付金制度がある。また、40歳以上の労働者個人に直接受講費用の一部を援助する中高年齢労働者等受講奨励金制度もある。(B)

アウトリーチ
学習要求を持っていない人たちを学習機会に参加させ、学習要求や学習行動を誘発しようとする活動。一般的に、学習機会の提供はすでに学習要求を持っている者を対象としているが、アウトリーチはいわば「学習から忘れ去られた人たち」を対象にした活動である。この活動に従事する者はアウトリーチ・ワーカーなどと呼ばれている。地方レベルで、個人的な接触や既存の地域集頭とかパーソナルなネットワークを介して行う方法と、全国レベルで、遠隔教育(distance education)の手法を中心にしながら、それを地域の指導者集団が各種のメディアを使って補う方法がある。方法は様々であるが、1960年代から70年代にかけて欧米諸国において政策として取り組まれるようになった。日本でも生涯学習を真に国民的なものにするため、この面での積極的努力が求められている。(B)

発達課題〔developmental tasks〕
誕生から死にいたるまでの各時期に達成されるべき発達上の課題。ハビガースト(Rovert J.Havighust)が、身体的成熟や心理学的側面だけでなく社会的・文化的な期待も考慮して体系化した概念。人間の発達は従来青年期までの問題であり、しかも社会的・文化的・教育的作用と無関係に進行するものと考えられてきたが、いまは発達は生涯のものであり、学習や教育によって達成されるべき課題であるととらえられている(たとえば、中年期=30〜55歳では、余暇活動の充実といった課題があげられている)。生涯教育・生涯学習の目標に大きな示唆を与えるものとして注目されている。(B)

自己教育力/生きる力
主体的に学ぶ意思、態度、能力などを指す概念として、中央教育審議会の教育内容等小委員会が、1983年11月15日に審議経過報告で用いた言葉。生涯教育の観点から、学校教育において子どもに身につけさせるべき能力として提起されたもので、学校の指導目標や校内研究の中心的な柱とされている。個人が自己の努力によって自らを教育するという意味での自己教育という概念は古くからあり、日本の社会教育の歴史の中には自己教育運動と呼ばれる活動もみられた。中教審は96年7月19日第一次答申「二一世紀を展望した我が国の教育の在り方について」において、「生きる力」の育成を強調した。(B)

インテリジェント・スクール
臨時教育者議会における審議の中で提案された生涯学習都市の中核となる施設を意味する和製英語。「高度に情報化された学校」で、社会環境の情報化の流れに対して、学校だけが取り残されている、という現状に照らして提案されたもの。単に、子どもの教育のためだけでなく、公共財として、地域の人々の学習、情報拠点として、公開、使用し、さらにはネットワーク化して、情報ターミナル化することによって、学校教育以外の企業活動などにも利用するというのがその構想である。1991年5月に、東京都台東区立上野小学校がその第1号として誕生した。インテリジェント・スクールは小・中学校の生涯学習機関化である。(B)

学社融合
学校教育と社会教育との連携・協力をいっそう強く推進するために、文部省が用いている語。学校教育と社会教育とが、一体化して生涯学習を進めようという意味である。ただし、用語としてはその問題が指摘されてもいる。すなわち「融合」は、一つのものが完全に融け合って、別のものになることを意味する用語である。核融合などというのはその代表的な用例だろう。つまり、学校教育と社会教育とが融け合って全く別物になる必要があるのかという議論である。その点、生涯教育の提唱者ラングランは、生涯教育のキーワードの一つとして「統合」という語を用いる。「統合」の代表的な用例は「日本国憲法」にある。すなわち、第一条「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、…」である。ここで、日本国民「統合」というのは、日本人がみな融け合って、別物になるという意味ではない。一人ひとりの日本人が、それぞれ個性的な人間でありながらも、日本という国に生きる人間として、共同体としてのまとまりを持つという意味だろう。つまり、生涯教育(生涯学習)の基本理念に立てば、むしろ、「学社統合」の用語がよいではないかということだ。 学校教育と社会教育とがそれぞれの独自性を保ちつつ、まとまりのある機能を果たそうという意味で、むしろ現実性も高い。ただ、「融合」を使用した意図は、おそらく、学校教育、社会教育関係者の連携・協力をいっそう強力に進めようという点にあったろうことは想像に難くない。(C)

遠隔教育
広義には、遠隔地に居住する学習者に対して通信教育などによって学習機会を提供するしくみのこと。しかし、今日では、通信衛星やテレビ電話などの通信機器を使用する、リアルタイム、双方向性を確保する教育活動を指すことが多い。今日、さまぎまな分野における遠隔教育が、通信機器の発達に支えられて試みられるようになっている。大学教育では、実用化に向けた取り組みが進められており、一部は実用化されてもいる。たとえば、東京工業大学と一橋大学との間で行われているものもそれである。学校教育以外でも、いろいろな遠隔教育が始まろうとしている。たとえば、複数の社会教育施設、あるいは生涯学習施設を結んでの遠隔教育がある。ある県で行われる大きな講演会を、他県の施設で視聴するなどの実験も始められている。また、大きなイベントを、複数の会場の参加者が双方向でやりとりしながら進める例なども増えつつある。今後、インターネットの活用など新たなメディアの活用によって、遠隔教育がいっそうの進展を見せるであろう。(C)

学校開放
学校の物的資源 (施設・設備、教材・教具)、人的資源を住民の学習支援のために開放すること。具体的な方法としては、学校に住民・を迎え入れる場合と、学校が住民のところに出ていく場合とがある。この場合、前者を狭義の学校開放、後者を学校拡張と呼ぶこともある。学校開放は、住民に対する校庭開放や公開講座の形式で実施されている例が多い。しかし、近年、児童・生徒数の減少に伴い、空き教室を住民に開放する例も見られるようになっている。特に、東京都杉並区立第十小学校のように、校舎新設時から住民への開放を考慮して作られる例も見られるようになっている。大学では、社会人入学の制度や夜間大学院の開設など、リカレント教育への配慮が進みつつあるほか、地域の高齢者を聴講生として受け入れる制度を教育委員会との協力の下に作る例も見られるようになっている(東京都武蔵野市のシルバー聴講生制度)。生涯教育が、学校教育と社会教育との統合を目指すものである以上、学校開放の進展は、生涯教育の鍵を握るものであるといっていい。(C)

公開講座
広義には、特定の対象者に留まらず、一般の人に受講が公開されている講座のこと。しかし、今日、公開講座といえば、学校が社会人を対象にして行う講座を指すことが多い。すなわち、学校の物的資源の開放に留まらず、人的資源、すなわち、主として教員の持つ専門性を社会的に公開する事業が公開講座である。大学、高等学校では、かなり以前から実施されており、特に大学の公開講座は近年ますます広範に見られるようになっている。一方、小・中学校の公開講座は一部の自治体で積極的に行われているものの、全般的にはまだこれからの課題であるといってよい。学校と地域社会との結びつきが重視されるようになっているので、今後は、そのための手だての一つとしても進展することが予測される。(C)

ボランティア活動
ボランティア活動とは、自発性、無償性を原則とする奉仕活動のことである。学校教育の中にボランティア活動を取り入れることは、子どもたちの社会性涵養に大きな意義を持つ。新しい学習指導要領でも、体験学習の重要性が説かれている。学校には、「総合的な学習の時間」などを利用したボランティア活動への取り組みが求められている。(C)

生涯学習局
生涯学習時代への要請を踏まえて、昭和63年7月に文部省の改組が行われ、社会教育局が生涯学習局に生まれ変わった。生涯学習局は「学校教育、社会教育及び文化の振興に関し、生涯学習に資するための施策を企画し、及び調整すること」(「文部省組織令」第七条の二)という所掌を与えられた。従来の初等・中等教育局に代わって、筆頭局としての生涯学習局が生まれた意義はまことに大きい。学校教育中心であった体制が、学校教育、社会教育を統合的に把握する体制に変わったからである。まさに生涯学習のための所轄庁になったわけである。(C)

生涯学習推進会議
生涯学習推進のために文部省の後押しで都道府県、市町村に置かれる連絡・調整機関。生涯学習体制を作るためには、教育委員会のみでなく、知事部局など行政内部の諸機関の協働が不可欠である。さらに、民間の教育機関などとのネットワーク化の必要性も叫ばれており、生涯学習に関わる生涯学習機関の連絡・調整のための機構の設置が急務であった。現在、生涯学習推進会議は、全都道府県に設置されており、多様な施策を打ち出し、政策の実現に取り組んでいる。(C)

まなびねっと
文部省が進める国レベルの生涯学習情報提供システムの愛称。現在は、インターネットによって、誰でもがアクセスできるようになっている。まなびねっとのホームページからは、リンクされている各都道府県のホームページにアクセスすることもできる。(C)

文教施設のインテリジェント化
臨教審によって用いられた用語。学習施設など学習のための環境を整備する際に、高度な情報技術を駆使して効率化が図られているとともに、快適な生活空間でもあるように工夫された学習環境を整えるべきである、との理念を意味している。(C)

家庭教育
広義には、家庭における子どもの学習経験の総体を意味する。狭義には、保護者による子どもに対する意図的教育を指す。家庭教育は人間の成長・発達にとってまことに重要な意味を持つことが認識される必要がある。基本的生活習慣のしつけなど、家庭での指導が望まれることは少なくない。家庭の教育的機能の喪失は学校教育にも影響を及ぼす。近年、マスコミで騒がれる「学級崩壊」も、家庭におけるしつけの問題との関わりを否定しきることは不可能だ。子どもはまず親を見て育つ。その意味からしても、学校と家庭との連携がますます求められる時代になったといってよい。(C)

成人教育
成人教育は主として社会教育の分野と考えられている。しかし、リカレント教育や、学校の公開講座の例に見られるように、成人教育の分野における学校の役割は、今後ますます増えていくだろう。この面からも、学校教育と社会教育との連携・協力は、ますます重要性を持つことになろう。(C)

在学青少年教育
「学校教育法」第一条に定める学校に在学する青少年に対する社会教育を指す。日本の社会教育では、重要な一領域を成すものと考えられているが、欧米の成人教育の概念には含まれないものである。(C)

社会通信教育
通信教育とは、通信の方法による教材提供や添削指導を行う教育のことで、そのうち、「学校教育法」により学校によって行われるものを除く通信教育を社会通信教育という。なお、通信手段の多様化によって、従来の郵便を中核とするのではない通信教育も生まれている。そこで、今日、通信教育を含めて、人を集めるのでなく、人のいる所へ教育を届ける(届ける教育)形態の活動を、遠隔教育と呼んだりもする。(C)

社会教育施設
  広く社会教育のための施設を指す用語として用いられている例もよく見かけるが、本来は、文部省が所管する社会教育関係の施設のみを指す。公民館、図書舘、博物館、社会体育施設、青年の家、少年自然の家、婦人会館、社会教育会館(センター)、視聴覚センター・ライブラリーなどがこれに該当する。
  厳密な意味での社会教育施設ではないが、社会教育の活動のために用いられることの多い施設を、社会教育関連施設と呼ぶ。労働省所管の勤労青少年ホームや働く婦人の粛等、厚生省所管の児童館や老人憩の家等、農林水産省所管の山村開発センター等、自治省所管のコミュニティセンター等、多様なものがある。これ以外に、民山間のいわゆるカルチャーセンターなどもこれに含めることがあるから、その種類はかなり多い。(C)

通信制大学院
1997年の大学審議会答申によって認められることとなった新たな制度。学部教育の通信制はすでによく知られるところ。大学院志望者の増加に対応するため、1999年度から実施されることとなった。マルチメディアなど新たな教育メディアの一発展によって、遠隔教育が従来よりいっそう進展することが予測されている。そのため、必ずしも通学制にこだわる必要はないとの理解が示されたものとも思われる。たとえば、遠隔教育のシステムでは、離れた地点の教師と学生とのコミュニケーションがスムーズに行われるだろう。演習形式の授業は、必ずしも一カ所に集合しなくても行えるということになる。通信制大学院に期待されるのは、当然ながら、大学院教育の量的拡大である。しかし、量的拡大と質的充実との問のバランスについてはさまざまな議論がある。大学審議会内部にも諸論があるものと思われ、答申文は玉虫色である。(C)

大学院入学資格の弾力化
大学院入学資格については、従来、大学の学部卒業を一つの要件としていた。しかし、1999年の法改正によって、この要件は取り払ってもよいことになり、その判断は大学にゆだねられることになった。すなわち、学部卒業年齢の者は、大学が認めれば修士課程の受験が可能になったのである。さらに、修士終了の年齢の者は、同様に博士課程を受験することができることとなった。この改正は、社会人の大学院入学に弾みをつけることになりそうだ。(C)


国際遠隔教育
国際間で行われる遠隔教育のこと。国際遠隔教育の実験も、あちこちで始められている。たとえば、文教大学がユネスコ国際共同研究として行った通信衛星を利用した遠隔教育の実験がそれである。母体となったのはアジア・マルチメディア大学連合で、参加校は、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、韓国、ベトナム、中国、オーストラリア、それに日本の9カ国の17大学である。この実験は、1998年12月から6カ月間、東南アジア諸国の主要大学との間で行われ、その成果に期待が集まっている。国際遠隔教育の分野でも、大学以外の教育機関による遠隔教育が実現する可能性もあり、そうなれば、国際間の問題解決にも有力な手段となることが期待されている。(C)


国際理解教育
世界の諸国民が国を越えて理解し合い、互いに人間として尊敬と信頼をもって協力することによって、世界の平和を実現することを理念とした教育。その理念は中世にまでさかのぽることができるが、第二次世界大戦後は、ユネスコによって推進されてきた。当初は、「世界市民の教育」(education in world citizenship)、「世界共同社会に生活するための教育」(education for living in a world community)などの言葉が使われていたが、1953年に「education for international understanding and cooperation」という言葉が登場し、これが一般的には、国際理解教育として普及していった。これはさらに1974年の第18回ユネスコ総会で、「国際理解、国際協力および平和のための教育ならびに人権およぴ基本的自由に関する教育についての勧告」が採択され、内容が拡大した。これが今日の国際理解教育を考える中心的な土台となっている。
 勧告には「指導原則」として次のような7項目が示されている。
 @全段階・形態の教育に、国際的側面及び世界的視点をもたせる。Aすべての民族ならびにその文化・文明・価値および生活様式に対する理解と尊重。B諸民族および諸国民の間に世界的な依存関係が増大していることの認識。C他の人々
と交信する能力。D権利を知るだけでなく、個人、社会的集団および国家には、それぞれ相互の間に、権利のみならず負うべき義務もあることの認識。E国際的な連帯および協力の必要についての理解。F個人がその属する社会、国家および世界全体の諸問題の解決への参加を用意する。(C)

環境教育
人間環境について、現時点という観点だけでなく、あとに続く世代のためという観点に立って、その望ましい姿を明らかにし、持続・改善することを目的とした教育。それは各人の自主努力に待つべきものであるということから環境学習ということもある。この言葉は、第二次大戦後間もなく活動を始めた国際自然保護連合(IUCN)やユネスコ(UNESCO)、ユネップ
(UNEP=国際環境計画)などによって強力に推進された。わが国では、日本自然保護協会が1957年に環境教育の要望書を政府に送っている。そこでは環境教育を社会科、理科などばかりでなく、国語科、道徳教育などにも浸透させるべきことが指摘されている。その後、カーソン(Carson,R.)が『沈黙の春(Silent Spring)』(1962年)の中で、農薬濫用の害について説き、DDT、BHCなどの製造が禁止され、さらに国連人間環境会議が開かれる(ストックホルム、1972年)などの動きのなかで、環境教育の重要性が世界で広く認識されるようになった。わが国では、1970年の公害国会を境として、公害教育の形で環境教育がスタートしたという経緯があるが、欧米では、自然教育、自然誌教育、自然保護教育、環境保全教育までを含んで発展してきている。(C)

福祉教育
福祉教育とは人びとが社会福祉の理念、内容、方法、それに実態などについて、主として体験を通して学び、人びとに社会福祉への参加と協働、すなわち福祉社会を構築し、それを支えていくことをすすめる教育活動のことである。その場合、社会福祉を社会的な支援を求めている人たち(経済的貧困者、高齢者、ハンディキャップを負っている人など)のためのものだというように限定的にとらえるのではなく、社会福祉は広く人がこの社会で「よく生きる」とはどういうことかを問う課題であり、すべての人にかかわるものだと、認識することが大切である。それゆえにこの福祉教育は学校教育においては中核的位置を占めるものだといえる。ちなみに「よく生きる」を表す英語well-beingは「福祉」と訳されている。しかし、わが国においては明治以来、福祉は学校教育になじまないといった誤った考えから、長い間、等閑視されてきた。また、わが国においては社会福祉へのニーズが徐々に高まり、曲がりなりにも制度が整い、経済の面でもまだまだ不十分ながらも保障されるようになってきたにもかかわらず、社会福祉は限られた専門家にかかわるもので、一般市民ないしは地域住民が福祉を自分たちの課題として受けとめることがなかった。例えば自分たちの住んでいる地区に知力にハンディキャップを負っている人たちの福祉施設をつくる計画が発表されると、多くの住民が反対の声をあげるのはその証拠ともいえる。結局、そういう施設は人里離れた辺地につくられることが多かった。一般市民ないしは地域住民の無理解や非協力がつづく限り、福祉社会を支える人たちの輪が広がらず、社会的に弱い立場にある人びとは陽の当たらないところに押し込められることになる。それどころか、福祉社会が実現していないところでは人びと(子どもを含む)が「よく生きる」ことがむずかしかった。事実、今の社会では人心の荒廃がすすみ、弱い立場にある人への偏見や差別が助長され、とくに子どもの世界では「弱い者いじめ」が多くなった。また、家庭内暴力、児童虐待、子どもの孤立化、青少年の無気力化、非行・犯罪の増加、倫理観や道徳価値の低下なども深刻さを増した。こうした事態に対応するために、文部省は「生きる力」の育成や「心の教育」の充実などを提唱しているが、それとほぼ並行して福祉教育の必要性が叫ばれるようになった。(C)

健康教育
すなわち、健康は、「身体的・精神的・社会的にも良好な状態」(1946年、WHO=世界保健機関憲章)との見方に代わって、個人や集団の生命や生存を維持し、存続させ、生活や人生を高めていくという、より積極的な見方が提唱されている。また、1986年のWHOのオタワ憲章では、ヘルス・プロモーションの考え方が示され、健康は、身体的な能力であると同時に、社会的・個人的資源であるとされている。この憲章において「ヘルス・プロモーションとは、人びとが自らの健康をコントロールし、改善することができるようにするプロセスである。身体的、精神的、社会的に完全に・良好な状態に到達するためには、個人や集団が望みを確認・実現しニーズを満たし、環境を改善し、環境に対処(cope)することができなければならない。それゆえ健康は、生きる目的ではなく、毎日の生活の資源である。健康は身体的な能力であると同時に、社会的・個人的資源であることを強調する積極的な概念なのである。それゆえヘルス・プロモーションは、保健部門だけの責任にとどまらず、健康的なライフスタイルをこえて、well-beingにもかかわるのである」としており、健康のための前提条件としての、平和、住居、教育、食物などとともに、唱道(advocate)、能力の付与(enable)、調停(mediate)を挙げており、健康政策や健康教育もこの理念に基づいて行われる必要がある。健康教育については、昭和63年7月1日付け文部省体育局長通知「健康教育の推進と学校健康教育課の設置について」において、次のように示されている。
 心身の健康の保持増進を図るために必要な知識及び態度の習得に関する教育である